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税務・会計

第12号 借入れは『悪』なのか

会社を守り抜くための緊急対策

 利益計上しているにもかかわらず、運転資金が不足し、そのために短期的な借入れを行うことは、やはり『悪』といわなければなりません。

◆今、借入れをしなかったらどうなるか
 「経理は借入ができてなんぼ」と考えている社長は大勢います。会社は何があるかわからないため、常に借入の準備をすることまで否定はしません。むしろ常に準備をしておくべきです。
 しかし、「余分な資金はドブに捨てる」と言われているように、どうしても、余裕資金を有効に活用しなければもったいないという心理が働くのでしょう。預金では金利が低いため、外貨預金や投資に向かっていきます。
 元本保証されていれば問題はありませんが、そうでなければ、中小企業の社長は絶対に手を出してはいけません。
 長年、社長業をしていると緊張感が欲しいのか、投資に手を出す社長もいます。また、銀行との付き合いを大切にしたいのか、銀行も投資商品を営業してくる時代なので、付き合わなければこれまでの信頼関係が崩れてしまうことを恐れ、付き合うこともあります。商品の内容を熟知しないで。
 しかし、少し待ってください。本当に銀行との信頼関係があると思っているのですか。信頼関係が本当にあれば、担保も保証人もとらないでしょう。返済することに対して、信頼がないために、補てんとして担保を取るのですから、そう言った意味では、本当の信頼関係はそこにはありません。
 銀行から投資商品をすすめられて、断ったからといって、これまでの関係は変わらないものです。
 銀行から付き合ってほしい、つまり、借入をしてほしいと言われている会社もあります。言われた側からすれば、悪い気はしません。また、これを断っても、特別、銀行との関係は悪くはならないことも知っているはずです。
 ここは我慢のしどころです。もちろん、銀行はいつ何時、掌を返してくるかもしれません。今しか、借りられないのかもしれません。業績が不安定な場合で、将来の資金需要がある場合は、このような銀行の要請にこたえてもいいでしょう。
 しかし、今後、特段、資金需要もないのに、付き合いだからと言って借入をしますと、金利分が損益を悪化させるだけでなく、本業とは違うところに支出をしてしまうことも大いに考えられます。
 もちろん、資金的に余裕のない会社で、借入をしなければやっていけないところもあることでしょう。
 しかし、すべての会社にはっきりと言っておきます。
 今、借入をしなかったらどうなるかを真剣に考えてほしい、と。
 社長は最悪の場合も考えているはずです。ですから、借金しなかったらどうなるかも一度、立ち止まって、考えるべきです。
 何が、起きるのか。誰に迷惑がかかるのか。どのような対処をすればいいのか。最後に、社長自身がどうなるのか、ということを。

◆バランスシートにある心地よさ
 バランスシートには、流動比率等、様々な経営分析手法がありますが、そもそも、実務の感覚として、バランスシートを比率で分析をすること自体、しっくりしません。
 なぜかと言いますと、バランスシートはお金の話だからです。日頃からお金について、比率を使うことはありません。たとえば、朝より夕方、財布の中身が10%減少したと話さないはずです。お金は金額で話をすることがしっくりきます。ですから、流動比率よりも、流動資産が流動負債を○○円上回っているから、大丈夫だ!となります。
 ここでは、バランスシートにある「心地よさ」についてお話しします。
 会社のバランスシートは、会社の心地よさを、連結バランスシートは、本当の心地よさを表してくれます。
 この心地よさは、社長によってみな違うはずです。現預金が多くあることが何よりも心地いい社長は、不動産などの資産を所有することはありません。
 また、適度の借金の存在が、緊張感があって心地いい社長にとっては、借入金の存在は必要になってきます。もちろん、無借金経営が心地いい社長であれば、借入金が存在するだけで寝られない時もあるかもしれませんが。
 このように、社長それぞれにおいて、バランスシートの心地よさは違っているものです。社長に合った心地よさを見つけ、その場を目標に経営をしていくことこそ、今後は大事になっていきます。
 ところで、東日本大震災が起きたからではありませんが、中小企業は、今後、ものを持たない経営にシフトすべきだと痛感しています。
 バランスシートの資産で、お金に換えられるものはできる限り早く現金に換えて置くべきでしょう。ものを持っていますと、どうしてもそこに神経が行き、経営に100%集中できないこともあります。
 株式はすぐに現金化できますので、資産の定義を、収益を生むもの及び現金化できるものに限定した場合、資産に見えますが、はっきりと言わせてもらいます。
 中小企業の社長は、個人のお金でも会社のお金でも投資はしてはいけません。投資というものに元本保証はありません。その代わり、大きなリターンが舞い込むこともあります。
 現金預金であれば10,000円は、明日も10,000円ですが、たとえば株を10,000円購入しますと、明日は12,000円になることも9,000円になることもあります。
 そうなれば、神経は経営より株価に向かっていきます。中小企業は社長がすべてなのです。その社長の神経が100%、経営に向いていなければ、間違いなく、業績は悪化していくことでしょう。
 個人で株式投資をすれば、連結バランスシートの資産に投資として記載されてしまいます。一刻も早く現金化すべきです。

◆設備投資の借入れの仕方
 中小企業の場合、設備投資をしたくても、余剰資金がありません。ですから、借入の検討をすることになります。
 通常の場合、貸し手は、借り手に対して、設備投資後の収支予想の提出を求めます。そのため、社長や経理担当者は、鉛筆ナメナメ、5年間の収支予想を算定していきます。
 算定する過程で、予想収入について、本当に大丈夫なのかと不安が何度もよぎることでしょう。逆に、そのような不安を抱かない社長の方が不安に思えます。
 金融機関にもアドバイスをしたこともあります。その内容は、予想収支で融資をすることは、自分の首を絞めることになるから、変更すべきだというものです。
 設備投資をすることで明るい未来を描きたい気持ちはよくわかりますが、現状の業績不振が、設備投資により、回復するという保証は微塵もありません。設備投資をする前に、すべきことがあるはずです。
 機械が老朽化しているため、効率が悪い場合であっても、人をも考えた現有資産で何とか稼働できないものかを知恵を絞ってみるべきです。
 しかし、現場では、すでに新しい機械が来ることを前提としているため、新しい知恵など生まれてきません。このことの方が設備投資よりも重大な問題なのです。
 設備投資の準備は必要ですが、それ以上に、知恵を出せる環境が大切なのです。
 さて、設備投資をすると意思決定した場合、借入をしてまで設備投資をするのですから、もし、設備投資後、予想通りの収益増が達成できなかった場合は、借金の返済が重くのしかかってきます。そうなれば、借入返済もできなくなります。
 このようなことにならないためにも、設備投資のために借入れをしてもいいかどうかの判断基準は必要です。
 それは何か。
 大切なことは設備投資前のキャッシュフロー、つまり資金余剰です。つまり、新規の借入の元本の返済と利息の支払いの原資は、設備投資前のキャッシュフローで行うべきなのです。そのキャッシュフローがなければ、不透明な経済環境において、不透明な資金収支予想で借入をすること自体、大反対です。
 だからこそ、設備投資を行う前に、更なる知恵を絞る必要があります。しかし、もともと、社長をはじめ、全社員が知恵を絞る環境になければ、無理なことです。
 ですから、このようなことを機会に、全社で、知恵を絞る環境づくりを行うことが、設備投資以上に、何より大切なことなのです。

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