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社員教育・営業

第27号 内部昇格社長のための全員営業の活用法【問題提起編】

社長のための“全員営業”

 内部昇格社長には、経営能力と同等以上に問われるものがある

 
 第27回コラムからは、内部昇格社長が全員営業を活用するポイントについてお話します。
 
 内部昇格社長には大きく2種類あります。
 
 1つは、上場企業に多いケースで、プロパー社員から経営者に上りつめるケースです。
 
 しかし、中小企業では、もう1つのケースを数多く見る事ができます。オーナー社長の婿養子という立場から、やがて経営者になるというケースです。27回・28回コラムでは、後者の内部昇格社長を採り上げます。
 
 5種類の社長の属性(第21号ご参照)のうち、組織への影響力を最も発揮しづらいのが、この後者の内部昇格社長です。
 
 大概の場合、前社長はオーナー経営者として会長という立場にいるため、以前として大きな影響力と決裁権があります。そのため社長であっても、実質№2として会社経営に携わることになります。
 
 何か新しいことをするには一つ一つ会長にお伺いを立てつつということになり、時には複雑な感情が芽生えることもあるでしょう。かといって、そのことを社内の誰かに打ち明けたり、家庭でも一切見せるわけにもいかず、独特のストレスをかかえることになります。
 
 また、社内の幹部や現場も、営業会議等で、会長も社長も同席する場合などは、両者に気を使いつつということになります。内部昇格社長としては、我を張る訳にもいかず、かといって唯々諾々とするだけでは、自分の存在価値が一向に高まらずという微妙な立場におかれてしまいます。
 
 以前、指導先となった社長もそういう立場でした。
 
 しかし、その社長は、そういう立場を諦めではなく、自らが選んだ道として覚悟をもって、日々地道に歩んでいきました。やがて、大口の取引先も幾つか確保し、経営も順調に推移し出した頃、個別にお会いした時、こんな話が出ました。
 
 『管理職として何年かを経て社長になったと言っても、自分の経験や実務能力は、現場で長年やっている社員には到底かなわない。また、社長といっても初めてのことで、わからないことばかりだった。』
 
 『こんな自分が、社長という立場で偉そうにいったところで誰が納得して従うだろうか。もし、逆の立場なら自分も、そう思うだろう。だからこそ、社長になって最初の1年は、管理職の誰よりも朝早く会社に来たし、業界や商品、現場のことを知ろうと日々心がけてきた。』
 
 『やがて、まだまだ未熟なところはあるが、社長は誰よりも一所懸命やっていると思ってくれたのか、古参の幹部の態度が変わってきた。また、会長もそういう話をどこかで聴いたのか、少しづつ任せてくれるようになっていった。このやり方がいいかどうかはわからないが、自分に出来ることは、これしかなかったんだよ。』
 
 内部昇格社長の場合、残念ながら、性急に社内に影響力を発揮しようとしたり、自分の色を出した施策をやろうとしても、かなり難易度が高いと言わざるを得ません。
 
 なぜなら、立場的にも、力量的にも、オーナーからも現場からも不安視される傾向が、どうしても出てくるからです。
 
 それよりも、この社長のように、まずは自分という人間を理解してもらうよう日々心がけるというのは、地道ですが確実な方策といえます。
 
 真摯に会社経営にとりくんでいる動きとともに、傲慢な言動がなく、人の話をきちんと聴く態度をとることが理解できれば、すべての幹部や社員とはいえませんが、好意的な幹部や社員が確実に増えてきます。
 
 内部昇格社長は、社長になって「何を言うか」よりも、まずは、社長になった時に「どんな人か」の方が注視されているのです。
 
 しかし、当面はともかく2年も3年も、それだけでは社内に今一つ物足りないという社長のイメージが出来上がってしまいます。そのため、次の段階に進む必要が出てきます。
 
 次回は、内部昇格社長の人柄が浸透した後に、どうやって自らの影響力を発揮させていくかのヒントをお伝えします。
 
 
 ・今回のポイント(〆の一言):
  内部昇格社長の一歩目は、能力以上に人柄が決める。

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