ITソフトウェア業の営業は、バグが一つ出ただけで崩れることがある
第17回コラムからは、2回シリーズで、ITソフトウェア業が、全員営業を活用するポイントについてお話します。
ここでいうところのITソフトウェア業は、ホームページ作成といったアウトソーシング主体でなく、多少なりとも自社で開発・設計を行っている企業をイメージしてください。
ITソフトウェア業の特性として、営業活動で、かなりの初期段階からトップ営業を併用しつつ、売上を積み上げているというのがあります。(私が過去、関わってきた顧問先のほとんどが、そうでした)
ITソフトウェア業で純粋な営業部隊を持っているとすれば、少なくとも社員30人前後以上であり、人数割合では1割以下です。また、仮に独立した営業部隊があったにしても、よほどの大手でなければ、営業部単体で、大きな商談がまとまるとことは少ないのが実情です。
しかし、これは、止むを得ないこととも言えます。
ITソフトウェア業においては、既に出来上がっている自社のパッケージ商品を販売するだけならともかく、開発・設計を行おうとすれば、営業相手先の面談相手は、どうしたって自社より会社規模が大きく、年齢も上であることが多くなります。
また、営業の初期段階から一定レベル以上のITの専門知識と決裁権が必要です。もし、いずれかがなければ、お客様とのヒアリングはおろか、見積り金額~納期の落としどころの判断ができません。
ゆえに、いくらコミュニケーション能力が高くとも、異業種から転職してきた人や、20代では強力な営業力にはならないのです。
では、ITの専門知識があり、人間関係能力も高い人を雇えばいいではないかと言っても、そんな人のほとんどは、自ら会社を興すか、既に大手ソフトウェア会社に勤務しているかで、非常に採用難易度が高いのです。
また仮に、そのような人材を採用でき、純粋な営業マンを社内に持って、新規営業を行ったとしても、そう簡単に中小企業のITソフトウェア会社に開発・設計を依頼する会社は見つかりません。〝下手な鉄砲を数打っても当らない“どころか、〝出会いがしらの受注”すら難しいことが多いのです。
そのため、一見すると業績好調であっても、中小企業のITソフトウェア業の営業基盤は、大半が脆弱(ぜいじゃく)です。
さらに、営業組織と営業マンだけでなく、会社の経営構造そのものにも3つの大きな特徴があります。
1.創業時の売上は、社長が前職から派生する会社の仕事が多く、その既存顧客の売上が
いまだに一定比率以上である。
2.経営者が、営業プロセスに密接に関わりがちであり、社内で1~2人の人物に何かある
だけで、会社全体の営業活動が停滞する構造になっている。
3.既存顧客の「リピート」と「紹介」に売上の大半を依存する傾向があり、仮に1社との取引
が欠けるだけで、会社の業績が傾くリスクがある
小資本で会社を運営でき、市場が創業時から常に成長過程にあり、技術レベルも「ムーアの法則(新・ムーアの法則)」に従う中で、一気に業績を伸ばす会社が多い反面、一気に業績が下降する会社が多いのは、営業力の強弱以前に、業界特性と経営構造からくる要因が大きいというのが私の考えです。
ゆえに、ITソフトウェア業で、数人でやっているならともかく、10人以上になると、小手先の営業強化では通用しません。営業基盤そのものに手をつける必要が出てきます。
まさに、創業時から会社に眠り続けている営業力を掘り起こす必要があるのです。
そのカギは、仕事においてお客様との接点が既にあり、社内で最も多く存在するであろう「エンジニア」にあります。
次回は、そういったITソフトウェア業が、どうすれば、「エンジニア」を営業強化に活用できるかについてお伝えします。