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経済・株式・資産

第59回「アベノミクス効果と相続対策で動き出した住宅建築」

会社と社長のための資産管理講座

アベノミクスによる日本再生への期待は、日銀の『異次元金融緩和』による一段の株高を経て、一時は約半年で80%の上昇になった。その後、スピード違反というべき株価上昇に警戒感が高まった所に幾つかの要因が重なって株価は乱高下したが、米国の金融緩和政策が当面続くとの予想から、7月20日時点で先進国の資産価格は持ち直している。

このような政策効果が実体経済にも徐々に及び始めていることは、株価だけでなく不動産取引の増加や住宅建築、遊休不動産の活用にも及び始めている。新築や中古住宅の売買が活発化しているのは、主として資材価格や労務費の上昇により建築価格が値上りしていること、来年4月の消費税の増税前の駆け込み需要、インフレターゲットとして2年以内に年率2%の物価上昇目標が設定されたことによる消費者のインフレ期待の高まりなどが理由として挙げられる。

一方で、自宅敷地への2世帯住宅建築や遊休土地への自宅兼用アパート建築に関しては、平成27年からの相続税増税への対抗策という背景が色濃い。既にご承知のように、この増税により相続税の基礎控除は、現在の「5000万円+法定相続人数×1000万円」から、改正後は「3000万円+法定相続人数×600万円」へと40%削減される。配偶者と子供2人の場合では、8000万円から4800万円になる。地価の高い大都市圏に戸建て住宅を持ち、公的年金だけでは不足する老後資金として3000~4000万円の金融資産を保有する『普通のシニア世帯』まで、相続税の課税対象になる可能性を指摘できる。

今回の相続税改正では、基礎控除の削減による増税方針の他、前述のような『普通のシニア世帯』に過重な相続税負担が生じないような対策が講じられている。それが自宅の敷地の相続財産評価に適用される「小規模宅地等の評価の特例」という制度である。この制度を適用すれば、限度面積までの自宅敷地の評価額が80%減額できる。今回の改正では、この限度面積が現在の240㎡から330㎡に拡大される。さらに、自宅敷地を配偶者以外の相続人が相続する場合にこの特例を適用するには、生前から被相続人と同居している必要がある。(詳細は、「オーナー社長の資産戦略と実務」をご参照頂きたい)

実際問題、嫁姑問題もあるので親子の世帯が一つ屋根の下に同居するケースは稀で、二世帯住宅を建築して同居するケースがほとんどである。これまでの取扱では、「建物内部で行き来できない二世帯住宅」は同居と見なされず、特例の適用が認められなかった。しかし、平成26年の相続発生分から、このような二世帯住宅でも「同居」と認められるようになった。設計の自由度が増したのである。また、直系尊属からの住宅取得資金の贈与の特例の利用や、厳しくなるばかりの子供世帯の家計を家族の絆で助け合うような風潮も、二世帯住宅ブームの追い風になっていると推察できる。

 「日本を再生させる」というアベノミクスが本当に実現するか?現段階では不確実であるが、成功したとしても個人の資産と暮らしを取巻く環境は厳しさを増すばかりである。オーナー社長であっても資産戦略を明確にして、経済や税制などに関して予測される変化に備えた実務対策を採って頂くことが重要である。

                                    

以上

 

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