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- 会社と社長のための資産管理講座
- 第85回「成長戦略はどうしたのか」
過去3年間、アベノミクスによる日本経済の再生が期待されたが、輸出型大企業の業績改善と都市圏の有効求人倍率の上昇など、限られた範囲の指標改善に留まっている。冷え込んでいる地方経済と中小企業の景況も改善して経済成長を底上げするために、成長戦略(構造改革・規制改革)を推進する必要がある。停滞する成長戦略と資産運用について考えた。
わが国の経済成長率目標は、年率2%程度のインフレを前提として名目成長率3~4%、実質成長率で1~2%と期待された。しかし、現実の潜在的成長率はゼロ%台前半(0%~0.5%程度)と専門家が推計している。少子高齢化による人口減少など経済社会の構造変化が最大の要因であるが、政治が金融政策頼みで改革を怠ってきた結果でもある。「株式市場全体の成長率は、長期的にはその国のGDPの成長率に合致して行く」との関係の下で、将来も経済成長の長期低迷を余儀なくされるなら、今後の資産運用方針はどうすべきだろうか?
中国経済の減速などが資源価格の暴落を招き、鉱物資源や工業製品の対中輸出を支えに経済成長してきた資源国や新興国が苦境にある。それまで新興国は経済発展を加速した結果、さらなる成長に必要な国内消費市場を形成する中間所得層が厚みを増し生活水準も飛躍的に向上している。過去も将来も新興国市場への進出が、先進国とその企業ばかりでなく、世界中の国々の経済成長に不可欠な戦略であるといっても過言ではない。そこで、資産運用に新興国の成長を取込む試みは、BRICSやASEANなど成長地域と見なされた国と企業に投資する投資信託やテーマ型ファンドに見られた。しかし、ある期間好調だった運用成績も、リーマンショックや資源価格の下落などから全体的に低迷している。
元々、新興国の経済情勢や企業情報は個人投資家には入手が困難なので、専門家が情報分析し投資対象を選択した投資信託が合理的といえる。しかし、不確実性も価格変動率も大きな時期には、専門家の運用成績といえどもよろしくないのが現実である。誰が運用しても困難な時期があるのは当然だとして、ちょっとした工夫次第で自分自身で情報収集できて、しかも納得できる手づくりの『新興国・成長国投資』が考えられる。
国内にいても情報量が多く確度が高いという点では、日本企業の情報に勝るものはない。身近な対象で考えれば、新興国市場に強い日本企業への投資が新興国成長を取込むことと同義と考えられる。例えば、全体として売込まれた日本株の中から、「新興国市場に強い」というテーマを『縦軸』に、「資源開発・環境対策・インフラ整備」などの戦略テーマを『横軸』に投資先を研究できるだろう。資産運用に関しては、上記のような戦略テーマに基づく資産運用に徹すれば、アベノミクスの成長戦略の停滞=日本経済の停滞に、ご自分の運用成績の足を引っ張られる懸念も少ないのではないだろうか。 以上