来年1月のNISA(少額投資非課税制度)開始により、若年層の新しい投資家が株式市場に参入することが期待されている。資金を潤沢に持つのはシニア層だが、この制度が日本人の資産形成の重要手段に発展するためには、若年層の参加者が多数を占める必要がある。
「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、金融資産ゼロの世帯は20歳代で34%と全世帯の26%を上回る。年齢と共に蓄積が増えるのは当然の結果だが、日本の厳しい将来を考慮すれば、若年層が早い時期からマネープランに真剣に取組むべき時代といえる。今後、親世代も子世代を援助する余裕を失う時代になるとすれば、NISAは親子共々、人生設計を考えて実際に投資行動を取る良い機会になるはずだ。
資産形成ニーズが高まる一方で、近年の金融市場はさまざまな理由から変動率が大きくなり、変動周期も短くなり難しい環境にある。米国のQE3(量的緩和)や日銀の異次元金融緩和など、「過去に経験したことがない金融政策の出口を無事に抜けられるのか?」、米国の明るい景気指標が発表されるほど、熟練の市場参加者でも判断に迷いが出るようだ。
アベノミクスの三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」は、規制改革と構造改革により民間活力を引出すことが核心。抵抗勢力を排除し大胆な改革を実現できるか注目される。しかし、ご承知のようにこの政策が成功しても、日本の将来は増税と社会保障給付の引下げにより、日本人が自分の人生に自己責任と自助努力を求められる点で変わりはない。
個人投資家の資産運用に関しては、資金の運用期間が長ければ長いほど、その分だけリスクの時間分散も出来て運用成績も長期安定してくるものである。富裕層から見れば、少額投資非課税制度は年間100万円までの投資元本を5年間、最大500万円が非課税枠なので、「文字通り『少額』でお話にならない」と考えがちだ。しかし、子や孫にとっては決して少額ではなく、彼らの持つ武器である『運用期間という時間』を活用する好機になる。
アベノミクスや東京オリンピック招致への期待感から、久々に日本全体に高揚感や明るい展望が見え始めている。このタイミングを逃すことなく、相続対策で生前贈与する資金の一部でも、NISAで運用するように子や孫に示唆してやることも、前回の東京オリンピックや幾多の景気変動の波を知る人生の先輩として、また経営者として重要なことではないだろうか。
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