広島県に本社を構えるやまみは豆腐を全製品、全自動で製造する我が国で唯一のメーカーである。中国・四国地方から九州での高シェアを背景として、2012年に滋賀県に工場を建設して、関西地域への進出を図った。その勢いで2016年には株式市場に新規上場を成し遂げた。
大手小売業へ豆腐を納入するメーカーで上場企業は皆無であったことから、上場とほぼ同じタイミングで大手コンビニや大手外食チェーンとの取引も始まった。比較的短期間で関西市場で高シェアを獲得した実績を基に2019年には富士山麓工場を建設し、関東市場への進出を図った。
同社の新規市場への進出はまずは小売業の豆腐の棚の下段の安価製品で入って、その実績を認められることで徐々に上段の付加価値品へと売り場を獲得して行くパターンである。全自動ゆえにローコストで、しかも人手を介さないことから衛生的であり、通常の製品よりも賞味期限を長くすることが可能で、小売業にとっては極めて扱いやすい製品となっている。
関西進出時には社名もそれほど知られてはいない広島のメーカーが無理をして低価格で最下段を押さえても、価格競争の激しい関西市場では早晩撤退するだろうと既存メーカーは高をくくっていた。しかし、同社とすればコスト的に同業他社を圧倒していることから、順調にシェアを拡大して、あっという間にトップメーカーとなった。
その勢いで関東に進出し、すでに関西での活躍が知られていたことから大手小売りチェーンとの商談も順調で、小売業に入り込むのは時間の問題と見られていた。しかし、大手小売りチェーンが知っているということは、関西進出時とは異なって、ライバルも十分知っているということであり、最終の成約段階で既存メーカーの必死の抵抗にあい、実は当初、思ったほどのピッチでは市場浸透が図れなかった。
その状況に変化が現れたのが2022年からの様々な食品関連原燃料高による食品価格の値上がりを契機とするものであった。もともと薄利である豆腐メーカー各社も背に腹は代えられず値上げを打ち出し始めた。それをきっかけに、小売業からの同社への引き合いや相談が増え始めた。
その結果同社の商談がスムーズに進み始めて増収率は3期前に17.4%増、2期前10.9%増、前期10.3%増と豆腐メーカーとは思えない増収率となっている。しかも、今期に相当する2027年6月期の会社計画は14.0%増の予想とこれまでになかった強気の数字となっている。しかし、実際のところこれは最低線ではないかと感じている。
2019年に開設した富士山麓工場も先々、手いっぱいになる見通しであることから、すでに富士山麓第2工場の建設も始まっており、2027年2月には稼働予定となっている。生産能力としては富士山麓工場の80億円に加え、第2工場では100億円と関東工場だけで合計180億円の生産能力を保有することになる。

有賀の眼
多くの加工食品はナショナルブランドメーカーが高いシェアを持つが、豆腐はチルド配送であることに加え、ある面、水を運んでいるようなもので、単価当たりの重量が重い。つまり、配送コストの製品価格に対するウエイトが高い。そのため、全国で販売するためには各地域に工場が必要となる。そのため、豆腐メーカーには全国区のメーカーはない。
同社は広島県、滋賀県、静岡県に工場を保有し、九州から関東、北陸辺りまでではあり、東北、北海道まではカバーできていないものの、関東での市場浸透が進み始めたことで、いよいよ全国区の豆腐メーカーの誕生が近づいてきたと言えよう。























