まだ顕在化していないブームの兆し、新たに生まれる新常識。新しい価値観をどんどん取り入れていくことができるのが若者たち。若者たちの中でも、トレンドを握り消費を動かすパワーを秘めた女性たちの“インサイト”に注目すると、新しいヒットを創るヒントが見えてくる!
※本記事内の画像は、すべて生成AIを使用して作成したイメージです
AIによって、これまで外部の業者やサービスにお金を払って頼んでいたことが、自分でもできるようになっています。では、その分だけ消費は減っていくのでしょうか。
実際には、売れなくなっている商品やサービスがある一方で、新たに売れるようになったものもあります。仕事の依頼にも、減っているものと増えているものが見られます。
特に、AIを日常的に使い始めている若い世代では、これまで自分で探していたことをAIに相談する、人に頼んでいたことをAIで済ませる、難しくて諦めていたことに挑戦する、といった変化が起き始めています。
今回は、こうした具体的な事例から、何にお金が使われなくなり、何に使われるようになったのか、その背景にある生活者の変化を読み解いていきたいと思います。
★オンライン英会話が苦戦する一方、AIを使った学習サービスは伸びる
同じ「英語を学ぶ」という需要の中で、選ばれるサービスが変わっています。
オンライン語学学習市場では、大手オンライン英会話サービスが苦戦する一方、AI英会話アプリが好調です。AIを会話相手にして英会話の練習ができるサービスが伸びているのです。
出典:矢野経済研究所「語学ビジネス市場に関する調査を実施(2025年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3910
実際、AI英語学習サービス「abceed(エービーシード)」などを展開するGlobeeでは、有料会員数が個人・法人を合わせて15万人を超え、前年同期末から29%増加しています。
出典:Globee「2026年5月期 通期決算説明資料」https://www2.jpx.co.jp/disc/55750/140120260713592590.pdf
ここだけを見ると、「これまで人に教えてもらっていた英語学習が、AIに置き換わっている」と考えたくなります。
ところが、同じ矢野経済研究所の調査で、もう一つ伸びているサービスがあります。「英語コーチング」です。英語コーチングとは、専任の担当者(人間)が一人ひとりに合わせた学習計画をつくり、自習の進み具合まで見ながら英語学習を支援するサービスです。こちらのサービスも成人向け外国語教室市場を牽引しています。
会話や発音など、繰り返し練習したいことにはAIを使う。一方で、「何を、どの順番で勉強すればよいか」といった学習計画を立ててもらったり、進み具合に応じて軌道修正してもらったり、つまずいたときに個別の助言をもらったりする部分では、人の力を借りる。
AIか人かの二者択一ではなく、それぞれの得意な役割を組み合わせる学び方が広がり始めているように見えます。
AIによって「人にお金を払う価値がなくなった」というより、「人にお金を払う価値を感じる部分が変わり始めている」と見る方が近いのではないでしょうか。
★AI時代に、ライティングの仕事はどう変わった?
AIによる変化は、ライティングの仕事にも表れています。
仕事の依頼と受注を仲介する「クラウドワークス」のデータを見ると、ChatGPT登場前後で、ライティング系の案件数は46%減少しています。
出典:クラウドワークス「AIが普及したら、ライターの仕事はどうなるか 需要ある仕事の共通点は”最後に人間が関わるか”だった【CW AI Letter|ニュースレター 2026年6月号】」(2026.6.26)https://crowdworks.co.jp/news/bxswsvd7wz0/
ところが、興味深いのは、取材・インタビューに関する仕事は2.1倍に増え、ライティング系の平均単価も11%上昇していることです。
ここから見えてくるのは、単に「AIに文章を書く仕事を奪われている」という変化ではなさそうだということです。
AIによって、すでにある情報を集めて文章にまとめることは、以前より簡単になりました。ただ、まだ世の中にない情報を人から聞き出すことや、何を伝えるべきかを判断すること、最後の品質に責任を持つことまでは、簡単には置き換えられません。
文章を“書く作業”そのものよりも、「何を書くのかを見つける」「何を残すのかを決める」「最後まで品質を担保する」といった部分に、人に頼む価値が移り始めているのでしょう。
実際、この「最後の仕上げ」に人を求める動きは海外ではすでに数字にも表れています。
米国に本社を置く仕事仲介サービスUpworkの自社分析によると、AIが生成したものを人間が修正・改善する仕事が、前年比70%増加。ソフトウェア開発では2023年から8倍以上、デザイン・クリエイティブ分野でも約8倍に増えました。
出典:https://www.upwork.com/research/ai-generated-work-is-creating-more-work-for-humans
AIが最初の案をつくる。けれど、それが本当に正しいのかを確かめ、実際の仕事で使える品質まで整えるところには、人が入る。
ここでも、「作業そのもの」に払っていたお金が、「判断」や「最後の仕上げ」に移っている様子が見えてきます。
★一方で、「書く人」はむしろ増えている? 文学賞への応募が倍増
文章をめぐっては、もう一つ面白い現象が起きています。
早川書房が主催する「ハヤカワSFコンテスト」では、2025年の応募総数が484作だったのに対し、2026年は1,012作。わずか1年で2倍以上になりました。
生成AIの普及で、小説を書くハードルが下がったことも、応募増の背景の一つとみられます。これまで作品を完成させることが難しかった人も、創作に参加しやすくなっている可能性があります。
出典:早川書房「第13回ハヤカワSFコンテスト一次選考結果発表」「第14回ハヤカワSFコンテスト一次選考結果発表」
参考:日本経済新聞「AI小説が文学賞に殺到 増える選考コスト、公募新人賞は存続できるか」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD245P80U6A720C2000000/
つくる人が増えれば、今度は別の問題が生まれます。作品が大量に生まれるほど、その中から「本当に面白いもの」を読んで、選び、評価するための手間は増えていきます。
AIによって「つくること」のコストが下がる一方で、「選ぶこと」「見極めること」のコストは、むしろ上がっているのです。
先ほどのライティングの仕事と合わせて見ると、AIによって文章をつくることが簡単になるほど、その前後にある「何をつくるか」「何を選ぶか」の重要性が増していることがわかります。
★AIは、化粧品を「買う前」だけでなく「買った後」にも使われ始めている
電通マクロミルインサイトとアイスタイルが2026年に発表したレポートでは、買う前の「化粧品選び」だけでなく、買った後の「使い方」までAIに相談する人が出てきています。
たとえば、うまく使いこなせず処分しようとしていたアイシャドウについてAIに相談したところ、使い方がわかり、コスメ情報サイト「@cosme」(アットコスメ)での商品評価を星3から星5へ変更したという口コミがありました。
出典:電通マクロミルインサイト×アイスタイル「AI・レビュー時代、ブランド・コスメ商品はどう選ばれるのか ―Z・ミレニアル・大人世代別 生活者のデータから読み解く最新購買行動―」調査レポート https://www.istyle.co.jp/news/info/2026/08/20260807.html
ここで注目したいのは、AIが「次に何を買うか」を教えているだけではないことです。
いま持っている商品をどう組み合わせるか。新しく買わなくても代用できるものはないか。逆に、何を足せばもっと使いやすくなるか。こうした日々の小さな迷いも、AIに相談できるようになっています。
これまでなら、「うまく使えない」「自分には合わなかった」とそのまま使わなくなったり、別の商品を買ったりしていたものが、AIに相談することで、もう一度使われるようになることもある。そうして持っている商品への満足度が上がると、結果として、そのブランドをまた選ぶことにもつながるかもしれません。
ただ、店頭の美容部員だからこそ得られる最新の商品知識や、一人ひとりの肌を見ながらの提案まで、すべてAIに置き換わるわけではありません。
日常のちょっとした疑問はAIに相談し、より専門的な相談や新しい商品選びは人に頼る。AIが、専門家に毎日のように相談するのが難しい場面で、その役割の一部を担ってくれる存在になると考えると、美容におけるAIの役割が少し違って見えてきます。
こうしたAIへの相談は、特に若い世代で広がりはじめています。同じレポートでは、美容の購買でAIを使う割合はZ世代が最も高く、10代ではAIを最初の相談相手のように使い、20代では肌質や顔タイプなどを細かく伝えて「自分に合う答え」を探す使い方も見られました。
メーカーにとって見逃せないのは、商品を買った後の評価にもAIが入り始めていることです。メーカーが直接接客していないところで、AIとの会話をきっかけに、もう一度使ってみよう、この商品を使い続けてみようと考え直したり、商品への評価が変わったりすることもある。
そうなると、商品の特徴や成分だけでなく、「うまく使えないときはどうすればいいか」「どんな商品と組み合わせられるか」といった、買った後に役立つ情報をわかりやすく出しておくことも、これまで以上に重要になりそうです。
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