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後継者の成長を左右する「教育方針」と「家庭環境」|講師インタビュー「強い後継者の育て方」高濱正伸氏

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 我が子を立派な《メシが食える後継者》に育てる!自身が教育者でありつつ、教室数250以上、会員数1万6千人を誇る花まる学習会グループの創業社長である高濱正伸氏に、後継者の育て方のコツについてお聞きしました。

■高濱正伸氏(たかはま まさのぶ)/花まる学習会代表・株式会社こうゆう代表取締役社長
 「メシが食える大人を育てる」を信念に、未来を担う子どもたちを指導する教育界のカリスマ。数多くの受験生と接する中で、「この国は自立できない大人を量産している」と危惧し、幼児から高校生までを対象に、作文・読書・思考力・野外体験を重視した学習教室「花まる学習会」を立ち上げる。現在、250以上の教室を展開。会員数は1万6千人。
 20年以上に渡り、親と子の悩みと真摯に向き合ってきた氏の実体験をもとに、子どもたちを伸ばす講話には、毎回、子育てに悩む父母が足を運び、キャンセル待ちが出るほど盛況。また、医師やカウンセラーなどが集まるボランティア組織にも積極的に関わり、いじめ・不登校・家庭内暴力などの解決にも取り組んでいる。著書に『わが子を「メシが食える大人」に育てる』他多数。算数オリンピック委員会理事。1959年熊本県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。


思考力重視の試験への転換や、小中一貫教育の導入など、変革の進む教育制度ですが、最近の子育てや教育に足りないものは何でしょうか?

 確かに公教育の現場でも、社会で活躍できる人材の育成が必要と言うことで、21世紀型学力向けの入試など様々な変革が始まっています。

 でも根本的な生命力の強さや、非認知能力(※注1)等の、問題を直感的につかむ力、状況に応じたアイデアが頭に浮かぶ力、そしてそれを自分でやり通す力…。こういう力は幼児期にある程度できあがってしまう能力なのですが、実際にこの力を育てるための経験・体験を、どうやって子ども達に与えられるのか、という点が非常に弱い。

 世相的に誰も責任を取りたくない、子どもには無難に接すべしという風潮がある。結局公教育では限界があり、型通りの指導しかできず《メシが食えない大人》を量産し続けているのが現状です。

注1:非認知能力

近年教育界で注目されている、ペーパーテストで測ることができる「認知能力」に対して、学力では測れない協調性や忍耐力、計画性、心身の健康などの“生きるためのスキル”。非認知能力が社会的成功に結びつきやすく、幼児期のしつけ、就学前教育に投資または質のよい介入をすることが、非認知能力を高めるとされています。

将来大きく成長しそうな子どもたちの共通点はなんでしょうか?

 一番はやはり集中力。粘り強さです。あらゆることを流さず、自分に引きつけて考える。面白いことしか言いたくない。やりだしたら最後までやり抜ける。ある種のしつこさが備わっている子は強い。

 様々な経営者の方と話をして、子供時代の思い出話になると、その頃から大人の世界を凝視して観察していたんだなということがよく伝わってきます。一つ一つの経験の中で、それが最終的には何の役に立つということではないとしても、凝視・集中して納得できるまで把握している。その辺りが目立つ特徴ですね。

 

子どもが何歳になってから、本格的に後継者としての子育てを始めるべきでしょうか?

 小さい頃に育つ要素が社会生活にも大きく影響するので、理想は幼児期(4~9歳)からが一番です。

 意識すべき点は二つ、「しつけ」と「愛情」です。「約束は守るもの」、「遅刻はいけないもの」等、様々な基本要素があり、そこにはもう理屈・問答は無用なんです。ダメなものはダメという、その線引きに対して、あれこれ言わず、そういうものなんだ。とスッと受け入れられる、モラルの部分をきちんとしつける。

 そして「愛情」ですが、回りの人を惹きつける力や、自分が自分自身を信じて好きになれる力という、リーダーに必要な人間的魅力。そこには親に愛された総量が大きく反映されます。子どもは密着され、愛されたい生き物。本心で愛して、べろべろなめ回す位のスキンシップを図る。一方、徹底的に厳しく、しつけをこの時期に教えこむことが大事です。

 

子どもが成人している場合、今からできる教育のポイントはありますか?

 子どもの成長段階の赤い箱と青い箱(※注2)で、赤い箱で大事なのは先程も述べた通り、しつけと愛情ですが、青い箱(11~18歳)に入った段階で重要なのは、教育の「切り替え」です。これからは部活の監督や先輩、大学生のお兄さんなど、「外の師匠」に鍛えられることで、素直に努力できる気構えが作られます。受験などでも鍛えられる。間違えなければ、やり直しが効きやすい時期でもあります。

19歳を超えると難しくなってくるのが「意識改革」です。思春期以降、大人でも同じですが、自分は図形は苦手とか、モテないとか、国語がダメだとか…色々なコンプレックスの壁を自分で勝手に築きあげます。この壁が非常に厄介です。多くの社会の研修というものは、そのコンプレックスや思い込み、できないと言う心の壁との闘いだと思いますが、その壁を突破できるきっかけは何か、という点がここでもテーマにもなります。

 一つは、その壁を揺さぶるような人生の一大事が起こること。家族の不幸や、天変地異などのような体験です。だから3.11後の若者は変わったなと思いますし、社会起業家や人のために本気で働きたい、と言う人がすごく増えました。きっかけひとつで、大人になってからでも人は変われます。

 もう一つは出会いです。感受性豊かなこの頃に、衝撃的な人や本、映画などとの出会いで心を揺さぶられ、「今の自分じゃダメだ」と気づく。出会いの鍵の一つは、音楽や映画などの様な「芸術」。人生を変える作品、というものは自分の中を貫き、その後の行動に変化を生むことがあります。二つ目は「旅」。今いる場所を出て異邦人として動き回る中で、自分の立場を客観視できるようになり、目が覚める。異文化というものはすごいストレスです。当たり前が通用せず我慢させられることもある。でも乗り越えて友達に必ずなれるし、根本は同じ人間だ、と肌感覚でつかむことでタフな人間力にもつながります。

 ただどちらも、幼少期に学ぶべきだった点を外部から強制的に学習させる、という置き換えに他なりません。本CDで説明している教育の根本をぜひ掴んでいただき、ご家庭で共有して欲しいです。

注2:子どもの成長段階の「赤い箱」と「青い箱」

子どもの特性を時間軸で分けて理解する考え方です。

 

普段から「指導・教育する」立場である社長やリーダーが、わが子の教育で陥りがちなミス、気をつけるべきポイントはありますか?

 よくあるのは、赤い箱と青い箱で子どもは生き物として変わるものだ、という前提の認識がブレて、大人として説教してしまうという例です。そして、子どもからも母親からも疎んじがられてしまう。

 会社を経営していれば当然ですが、人を教育する、関わっていくには、相手がどんな生き物なのか、ということを分かっていないといけないわけです。幼児を教育するには幼児を、中学生なら中学生を…相手の本質を知り、それに合わせて取る行動を変える、ということがポイントですね。

 本来経営者は、この点は得意な分野です。大人相手だと「30代・男性・独身」などとマーケティング対象を決め、予測される需要に合わせ商品を開発したり、行動に合わせて社員教育したり。そんな感覚を子どもの教育に当てはめて考えてもわかりやすいでしょう。子どもは大雑把にいうと2種類。赤い箱と青い箱で切り分けてください。

 ただ男親にとって、「娘」は非常に難しい。多様性の極致ですから。しかも「年頃」であれば尚更です(笑)これはお互い様で、娘にとっても理解し難い「父親」は、向こうからするとすごい特別なポジションです。わざわざ嫌われる態度を取ってきたりしますが、ここは威厳ある対応で、長い目で見た大人の接し方をおすすめします。この辺りについてもCDで解説しています。

 

家を不在にしがちな社長が、子どもと接する機会をどう増やせばよいでしょうか?

 たとえば「浦和レッズのファン」の様に、話題の共通項を家族で持てるとよいですね。スポーツは勝ち負けがあり分かりやすいですし、「今日勝ったね!」程度の会話でも良いのです。家庭内も明るく元気にもなるのでおすすめです。

 またある人は、男の子は全員囲碁をやる、お父さんも必ず、週に一局でも時間を取る、というルールを作っている家庭もあります。嫌でも会話することになりますし、思考型の対戦ゲームはお互い本気にもなれる。これも良いですね。

 娘は、娘側からおしゃべりしてくれるので、割と分かりやすいですが、息子はどんどん口数が減っていきます。そんな状況でどう関わる時間をとるか。共通の方向性や趣味を作ることで、良質な会話の機会を自然に生むことができるのです。

 

会社行事やイベント等に、家族と子どもに関わりを持たせていくことはよいでしょうか。

 親と子のどちらにとっても、とても良いことです。僕の尊敬する多くの社長さんが実際に取り組んでいます。自分のプライベート部分もさらけ出すことで、安心感につながります。「ああいう奥さんだよね」「子どもがそろそろ高校受験ですね」と社員に知られていることがほっとするというか、母の会社への親しみの部分につながることが一点。

 もう一点は子にとっての効果。講演会でも毎回言うことですが、《仕事する親を見せる》《職場を見せる》のは非常に効果的です。ひきこもりの子どもへの自立・社会へ出ていける力をつける治療法の一環で「親の仕事を見せる」があるぐらいです。家庭内での印象とは全く違いますからね。もうオーラが違うって子どもたちはみんな言いますね。そういう輝いてる部分はしっかり見せてほしいです。

 

最後に、これからの日本を盛り上げていく、次代を育てる社長達へ一言お願いします。

 命というものは、結局次世代を成立させるために全力を尽くしていくつながりだと思うんです。全部がつながっていく一つの命なんだと。そういう意味で言えば、社員も子供みたいなものだし、子供も同じくつながっている命です。

 私たちの役割は、彼らをメシが食えて魅力的な人間に育て上げることだと思うんです。ただ勉強ができる、計算が早い、締め切りが守れる、というだけでない人間的な魅力。社長をやっていればお分かりですよね。《人に愛されて可愛がられる》まさにこの一点です。可愛がられる人間に育てることの重要性が、社長だからこそわかると思うんですよね。それは、学校では全く教えてくれません。

 「清く正しく優秀に」という価値だけでなく、人に愛され、可愛がられるという人間の本質的な価値。人と会社を経営していく後継者だからこそ、その両面が必要です。実力もあって可愛がられる人を育てられるように皆で頑張りましょう。

 

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