今回は前回と同じフェーズ8の「 モノづくり 」です。その第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第10項目である『 間仕切壁に手摺設置や家具転倒防止金物設置用の下地が必要。 』に関してのお話を致します。
前回はフェーズ8の「 モノづくり 」に於いて、住まいの『 ハード面の重視 』の大切さを認識して戴く目的でこのコラムに於いて25項目用意致しました中の、第9項目の『 部屋と部屋等の間仕切り壁の下地のボード厚さは12.5ミリが良い。 』の御説明を致しました。
今回は分譲マンションのハード面やソフト面の良し悪しに依って特に売主の会社の「 モノづくり 」に対する姿勢が問われる地震時への住戸の安全対策及び入居者の高齢化対策等の『 間仕切壁に手摺設置や家具転倒防止金物設置用の下地が必要。 』を皆様に詳しく御説明致します。
さて、今回も建築家として、私が最も得意とする「 モノづくり 」における重要な「 こだわり 」の御説明であります。
今回も、分譲マンションの「 モノづくり 」に対する「 こだわり 」に於いて売主が入居者( 購入者 )サイドに立った商品を製造・販売しているか否かが購入者にとってとても大きな判断基準になりますので、私の今迄の経験を通して御説明を致します。
いつも、このコラムで、申し上げていますが、この処の準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーの傾向を見ますと、良い商品を作って分譲している良心的なディベロッパーと、販売力の強さや数字のみに頼って分譲マンション等を企画し販売していますディベロッパーとの「 2極分化 」がかなり進んできております。
販売力の強さと数字のみに頼って販売しているディベロッパーに於いて現在は相当な苦戦を強いられ、その結果売れずに竣工後1年以上、在庫になっている住戸がかなり多いのが現状です。
更に、不動産業界は益々資本主義の原点である「 弱肉強食 」的傾向が強くなり「 超大手、大手ディベの寡占化 」がどんどん進んで、その結果、準大手ディベや中堅ディベが超大手ディベロッパーに吸収合併されています。
準大手ディベや中堅ディベが、これらの会社と独立独歩で対峙し勝負するには是非、分譲予定物件の「 モノづくり 」にはトコトン「 こだわり 」や「 誠意 」を持って商品を作る事や地震時の安全性や入居者の高齢化対策及びアフターの対応の良さがとても大切だと思います。
また、その様にしなければ生き残れないでしょう。その様な社風にしなければ顧客が売主の「 こだわり 」や「 誠意 」を敏感に感じとり購入意欲が湧きます。そして入居後もクレームの起きない良い商品を作る事で知名度も上がります。
例えクレームが起きましても迅速に誠実に対応すれば「 雨降って地固まる 」で誠意や信用度が回復できます。
誠意が感じられ入居後もクレームの起きない良い商品を作り続ける事に依って潜在顧客の信頼を勝ち取り、その結果、不動産業界や一般社会に於いて良い評判を立てる事が生き残る道です。
その事を継続されていれば、自ずと会社の信用度が高まり「 ブランディング形成 」( ブランドを高める事 )に結びつき「 超大手、大手ディベの寡占化 」に楔( くさび )が打てます。
準大手ディベや中堅ディベも 超大手、大手ディベに対峙し対等に勝負できる良い会社になると私は確信しています。
そして、それを継続し、魅力的なクレームの起きない良い商品作りを続けていけば、準大手ディベや中堅ディベは不動産業界だけでなく、一般の社会に於いて会社名や「 ブランド 」名の知名度も上がり販売におおいに寄与致しております。
ですので、今回の私のコラム76号『 間仕切壁に手摺設置や家具転倒防止金物設置用の下地が必要。 』を参考に「 モノづくり 」を継続する事に依って不動産業界の中で超大手や大手ディベロッパーと同様か又はそれ以上に世間は評価致します。それでこそ、準大手や中堅ディベロッパーが生き残れる唯一の道だと私は確信しております。
「 継続は力なり 」です。そして常に事業主の会社は、先程も申し上げましたが「 誠実に勝る近道無し 」を心がけて戴きたいものです。
その様になる為にも、今回のタイトルの「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第10項目であります『 間仕切壁に手摺設置や家具転倒防止金物設置用の下地が必要。 』の内容は分譲マンションや分譲戸建に於いての商品企画・基本計画段階で住戸の安全性や入居者の高齢化対策の良し悪しに関しての判断基準です。
ですので、とても重要な事なのです。特に前回同様に今回の内容も売主の評価に多いにつながる事ですのでとても大切な事柄なのです。
手前味噌になりますが、今回も私が今迄約30年以上手がけました新規分譲戸建や新規分譲マンション等の設計業務、工事監理業務や設計監修の経験に基づいた大変貴重なお話なのです。
準大手ディベや中堅ディベの方々はこれから進める、建売戸建や分譲マンション等の商品企画・基本計画時点に於いて、今回のコラム76号の内容を良く理解して分譲マンションに取り入れて下さい。特このコラム内容は近年騒がれています地震時の安全対策や入居者の高齢化対策が購入者( 入居者 )はかなり重要視している部分です。
そして、これも常に申し上げていますが、建売戸建や分譲マンションの計画時点で実行して戴きたい事が有ります。私が今までの設計業務の経験を踏まえて申し上げたい事は、準大手ディベや中堅ディベは、絶対に『 製販一体 』体制で計画を行う事です。
建売戸建や分譲マンション等の商品企画会議では製造部門と販売部門が一体になって戴きたい事です。その理由は販売部門が顧客の生の声を商品企画会議で発言し製造部門に伝え、その内容が良ければどんどん商品企画や商品内容等に反映できるからなのです。
更に、今回の『 間仕切壁に手摺設置や家具転倒防止金物設置用の下地が必要。 』の必要性の内容が具体的に販売部隊の方々も良く理解できますので、顧客に対して自信を持って説明できるからなのです。
前置きがいつも長くて申し訳ございません。さて、今回は住戸の入居者の高齢化対策や安全性対策に関する『 間仕切壁に手摺設置や家具転倒防止金物設置用の下地が必要。 』をこれから具体的に御説明致します。
新規分譲戸建や、新規分譲マンションでは「専用部分」である住戸内に於いて今後の高齢化社会に対応するべきであります。
具体的には玄関、廊下、便所や浴室に手摺を標準設置仕様にするか、或は設置可能仕様にすべきなのです。
但し、この中で浴室( ユニットバス )のみは購入者が入居後に手摺を設置する事は不可能ですので最初から標準仕様で設置すべきです。
玄関、廊下、便所に入居後に手摺を設置する為には下記の条件が必要です。
その条件とは住戸内の玄関、廊下、便所の壁の下地材がキーポイントなのです。
住戸内の間仕切り壁の構成は仕上げ材のビニールクロスを厚さが9.5ミリ又は12.5ミリのプラスターボードに貼っています。良いディベロッパーは前回このコラム75回で申し上げました様に厚さ12.5ミリのプラスターボードを採用し「 設計基準書 」に記入されています。
しかし、プラスターボードは厚さにかかわらずに手摺設置用金物を固定する「 木ビス 」( 木材に使うビス )はしっかりとは固定できません。
手摺につかまって引っ張りますと、すっぽ抜けてとても危ないのです。ホームセンター等でプラスターボード用のビス金物を売っていますが、この金物はビスに大きな力がかけられません。せいぜい絵画の額縁程度の重さを支えるものです。
そこでここ10数年前より一流( 大手とは限らない )の売主のマンションでは玄関、廊下、便所の壁のプラスターボードの裏に「 木ビス 」が効く厚さ9.5ミリか12.5ミリのベニアを更に下地材として設置しているのです。
このベニアが設置されていれば手摺設置金物用の長い「 木ビス 」がプラスターボードを貫通してベニアにしっかりと手摺を固定できるのです。
再度申し上げますが、これからはどんどん高齢化社会になりますので上記の内容は新規分譲戸建や新規分譲マンションの必須条件になります。
次に重要なのが「 置き家具 」の転倒防止対策です。
最近、毎日日本全国各地の何処かで地震が発生しています。その為にも「 置き家具 」の転倒防止対策も必須条件になってきました。
特に「置き家具」の高さが1.8メートル以上ですと大きな地震が起きますと転倒して人間が下敷きになって大怪我をする恐れが多分に有ります。
最近の分譲戸建や分譲マンションには各洋室や和室にクロゼット、ワードローブや押入れが有りますので「 置き家具 」が無い方は良いのですが、奥様方が「 嫁入り道具 」として持ってこられた「 洋服ダンス 」「 和ダンス 」や「 食器棚 」等はほとんどの方が捨てずにずっと使われているケースが多いのです。
この既製品の「 洋服ダンス 」「 和ダンス 」や「 食器棚 」は住戸内の壁際に置いても壁にぴったりと設置できません。通常は壁と「 置き家具 」に隙間ができてしまうのです。
その理由は部屋の壁の下端に「 幅木 」(はばき)というものが付いているからです。この幅木は厚さが約6~10ミリ位有り壁より出っ張っていますので、幅木にぴったりと「 置き家具 」を据えたとしても「 置き家具 」の背板と住戸の間仕切り壁との間に約6~10ミリの隙間ができてしまうのです。
「 置き家具 」は背板と壁との間に隙間が有りますと地震時によく揺れるのです。また大きな地震が発生致しましますと倒れる危険性が大なのです。
そこで、最近注目されていますのが「 ホームセンター 」等で売っている「 家具転倒防止用金物 」なのです。この金物は形状が「 L字型 」になっておりまして「 置き家具 」の天板や上端枠に「 木ビス 」で固定した後、間仕切り壁に長い「 木ビス 」で固定して「 置き家具 」が転倒しない様にした金物なのです。
上記でも手摺設置の為の下地材が必要と申し上げた様に、この「 家具転倒防止金物 」も間仕切壁の中に「 木ビス 」が締め付けできる「 下地材 」設置が必須条件になります。
上記でも申し上げました様に、通常の分譲戸建や分譲マンションの住戸内の間仕切り壁はプラスターボードの表面にビニールクロスを貼っているだけです。
再度申し上げますが、間仕切り壁のプラスターボードに「 木ビス 」を締めても効果は有りません。
そこで、ディベロッパーは配慮が必要になります。配慮の有るディベロッパーは約10年位前より住戸内の間仕切り壁の中に「 家具転倒防止下地材 」設置をしています。
リビングダイニング、洋室や和室の間仕切り壁のプラスターボードの裏に床から高さ1.8メートルの位置を中心に上下幅約30センチで横に水平に「 家具転倒防止下地材 」を通して設置しています。
この「 家具転倒防止下地材 」は長い「 木ビス 」が効く厚さ9.5ミリか12.5ミリのベニアを下地材として使用しているのです。
このベニアが設置されていれば「 家具転倒防止金物 」を留める長い「木ビス」がプラスターボードを貫通してベニアにしっかりと固定できます。
この様な仕様にしておけば大きな地震が起きても「置き家具」の転倒の心配はないと思います。
この事には購入者の方々があまり気にされない所ですが、今後大きな地震がくるとも言われていますので配慮致しますのが必須条件なのです。
この様なところにも配慮が行き届いている売主は信用される事と存じます。
この様な事のチェックは購入者の方々があまり気にされない所ですが、今後の我が国では非常に大事な事ですので絶対に商品企画時点で採用して下さい。
今後は、これらの設置有無に依って売主の誠意が判断されます。
今回のコラムでは『 間仕切壁に手摺設置や家具転倒防止金物設置用の下地が必要。 』の御説明を致しましたが、この事も前回に増して分譲マンションを作る上でとても重要で大切な事ですので、是非共実行して戴きたいと存じます。
超大手や大手ディベロッパーだけが一流とは限らないと常に私は言っております。
超大手や大手ディベロッパーに於いても、間仕切壁に手摺設置や家具転倒防止金物設置用の下地材を設置していない会社が多く有ります。
私の建築的価値観では一流と評価できますのは数社しか有りません。ほとんどが三流なのです。
一流のディベロッパーは購入者( 入居者 )への配慮が行き届いたマンションを供給しています。
何度も申し上げています様に、不動産の分譲事業で一番大切なのは売主の信用と顧客に対する配慮です。準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーにとって「 超大手、大手ディベの寡占化 」に対抗し勝つ為には顧客への気遣い及び将来クレームが生じないマンションを作り続ける事なのです。
ですので、毎回何度も注意を促していますが、商品内容の質やクレーム等で信用を落とすのは一瞬です。再度信用を築くには最低10年はかかります。この事もよく肝に銘じて下さい。
次回はフェーズ8の「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第11項目である『 竪排水管は鋳鉄管が良い。 』に関してのお話を致します。
PS:1月8日(金)頃に「 一流マンションはここがスゴい 2016」版が上梓しました。
このコラムを御覧戴いていらっしゃる方々が購入し御笑読して戴ければ幸いです。
次回も期待して戴ければ幸いと存じます。
以上