この処、横浜で傾いたマンション「 パークシティLaLa横浜 」に関連する報道が連日されていますので、ちょっと横道に反れますが、この事に触れたいと思います。
- ホーム
- 売れる住宅を創る 100の視点
- 第74回 隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造厚さ20センチ以上必要で仕上げはクロス直貼りが良い
この事件の始まりは2014年( 昨年 )11月に「 パークシティLaLa横浜 」の棟と棟をつないでいる外廊下のエキスパンジョイント部分で片方の棟の手摺が2センチ下がっていた事に気付いた入居者が管理組合に報告しました。
そして管理組合から売主( 事業主:三井不動産レジデンシャルと1社 )へ調査要請が有りまして、2015年( 今年 )2月頃に売主がまともな調査を行わずに「 東日本大震災の揺れが原因です。 」との安易な回答を致した事が住民並びに管理組合を怒らせました。
住民並びに管理組合は管轄の「 横浜市役所 」に話し調査を依頼致しました。
その結果杭工事のズサンさが分かり、メディアが取り上げて全国の建物へ影響を及ぼしました。
ここで私の独断と偏見で言わせて戴けるのであれば、昨年11月に「 パークシティLaLa横浜 」の管理組合より調査依頼の時点で売主の三井不動産レジデンシャルが設計及び工事を行った三井住友建設の技術部門を呼び誠実に細かく調査を行って回答する誠意をみせていましたら、これほど大事には至らなかったと推測致します。
このコラムでいつも私が申し上げています「 誠実に勝る近道無し 」なのです。
この件に関しての内容を構造専門家が詳しく書かれているサイトが有りましたので時間の有る方は御覧下さい。URLは以下です。
ちなみに、この傾いたマンション棟の長さは54メートルで、片端の沈下した部分の沈下寸法は2センチですので施工誤差は約0.4/1000です。ですので、建築工事の施工誤差範囲に入っていますので、誠実に対応していればここまで大事には至っていないと思われます。
さて本題に入ります。今回は前回と同じフェーズ8の「 モノづくり 」です。その第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第8項目である『 隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造厚さ20センチ以上必要で仕上げはクロス直貼りが良い 』に関してのお話を致します。
前回はフェーズ8の「 モノづくり 」に於いて、住まいの『 ハード面の重視 』の大切さを認識して戴く目的でこのコラムに於いて25項目用意致しました中の、第7項目の『 「 二重床 」「 二重天井 」は必要最低条件-③ 』の御説明を致しました。
今回は分譲マンションのハード面やソフト面の良し悪しに依って特に売主の会社の「 モノづくり 」に対する姿勢が問われる遮音性、耐久性等の『隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造厚さ20センチ以上必要で仕上げはクロス直貼りが良い。 』を皆様に詳しく御説明致します。
さて、今回も建築家として、私が最も得意とする「 モノづくり 」における重要な「 こだわり 」の御説明であります。
今回も、分譲マンションの「 モノづくり 」に対する「 こだわり 」に於いて売主が入居者( 購入者 )サイドに立った商品を製造・販売しているか否かが購入者にとって大きな価値判断基準になりますので、私の今迄の経験を通して御説明を致します。
いつも、このコラムで、申し上げていますが、この処の準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーの傾向を見ますと、良い商品を作って分譲している良心的なディベロッパーと、販売力の強さや数字のみに頼って分譲マンション等を企画し販売していますディベロッパーとの「 2極分化 」がかなり進んできております。
販売力の強さと数字のみに頼って販売しているディベロッパーに於いて現在は相当な苦戦を強いられ、その結果売れずに竣工後半年以上、在庫になっている住戸がかなり多いのが現状です。
更に、不動産業界は益々資本主義の原点である「 弱肉強食 」的傾向が強くなり「 超大手、大手ディベの寡占化 」がどんどん進んでいます。その結果、準大手ディベや中堅ディベが超大手ディベロッパーに吸収合併されています。
準大手ディベや中堅ディベが、これらの会社と対峙し勝負するには是非、分譲予定物件の「 モノづくり 」にはトコトン「 こだわり 」や「 誠意 」を持って商品を作る事やアフターの対応の良さがとても大切だと思います。
また、その様にしなければ生き残れないでしょう。その様な社風になれば顧客は売主の「 こだわり 」や「 誠意 」を敏感に感じとり購入意欲が湧きます。そして入居後もクレームの起きない良い商品を作る事で知名度も上がります。
例えクレームが起きましても迅速に誠実に対応すれば「 雨降って地固まる 」で誠意や信用度が回復できます。
誠意が感じられ入居後もクレームの起きない良い商品を作り続ける事に依って潜在顧客の信頼を勝ち取り、その結果、不動産業界や一般社会に於いて良い評判を立てる事が生き残る道です。
その様にされていれば、自ずと会社の信用度が高まり「 ブランディング形成 」( ブランドを高める事 )に結びつき「 超大手、大手ディベの寡占化 」に楔( くさび )が打てます。
準大手ディベや中堅ディベも 超大手、大手ディベに対峙し対等に勝負できる良い会社になると私は確信しています。
そして、それを永遠に継続し、魅力的なクレームの起きない良い商品作り続けていけば、準大手ディベや中堅ディベは不動産業界だけでなく、一般の社会に於いて会社名や「 ブランド 」名の知名度も上がり販売におおいに寄与致しております。
ですので、今回の私のコラム74号『 隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造厚さ20センチ以上必要で仕上げはクロス直貼りが良い。 』を参考に「 モノづくり 」を継続する事に依って不動産業界の中で超大手や大手ディベロッパーと同様か又はそれ以上に世間は評価致します。それでこそ、準大手や中堅ディベロッパーが生き残れる唯一の道だと私は確信しております。
「 継続は力なり 」です。そして常に事業主の会社は、先程も申し上げましたが「 誠実に勝る近道無し 」を心がけて戴きたいものです。
その様になる為にも、今回のタイトルの「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第8項目であります『 隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造厚さ20センチ以上必要で仕上げはクロス直貼りが良い。 』の内容は分譲マンションの商品企画・基本計画段階で建築物の遮音性、耐久性の良し悪しに関しての判断基準ですのでとても重要な事なのです。特に前回同様に今回の内容も売主の評価に多いにつながる事ですのでとても大切な事柄なのです。
手前味噌になりますが、今回も私が今迄約30年以上手がけました新規分譲戸建や新規分譲マンション等の設計業務、工事監理業務や設計監修の経験に基づいた大変貴重なお話なのです。
準大手ディベや中堅ディベの方々はこれから進める、分譲マンション等の商品企画・基本計画時点に於いて、今回のコラム74号の内容を良く理解して分譲マンションに取り入れて下さい。このコラム内容も、近年販売されている新規分譲マンションの仕様の中でも購入者( 入居者 )がかなりこだわりを持っている部分です。
そして、これも常に申し上げていますが、分譲マンションの計画時点で実行して戴きたい事が有ります。私が今までの設計業務の経験を踏まえて申し上げたい事は、準大手ディベや中堅ディベは、絶対に『 製販一体 』体制で計画を行う事です。
分譲戸建や分譲マンション等の商品企画会議では製造部門と販売部門が一体になって戴きたいと思います。その理由は販売部門が顧客の生の声を商品企画会議で発言し製造部門に伝え、その内容が良ければどんどん商品企画や商品内容等に反映できるからなのです。
更に、今回の『 隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造厚さ20センチ以上必要で仕上げはクロス直貼りが良い。 』の具体的な必要性の内容が販売部隊の方々も良く理解できますので、顧客に対して自信を持って説明できるからなのです。
前置きがいつも長くて申し訳ございません。さて、今回は遮音性や耐久性に関する『 隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造厚さ20センチ以上必要で仕上げはクロス直貼りが良い。 』をこれから具体的に御説明致します。
マンションのクレームで一番多いのが左右の住戸の音の問題です。特にこちらの寝室の脇に隣戸の浴室、台所やトイレが有ったら要注意です。まずその様な住戸プランを作る事は避けるべきです。
しかし、どうしてもその様な住戸プランになってしまった場合は隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造にして壁の厚さ、仕様と仕上げを遮音性の高い設計にして下さい。
住戸寝室の脇に隣戸の水周りが有るプランの場合は最低でも戸境壁の仕様は鉄筋コンクリート造で壁の厚さは20センチ以上ないとクレームの元になります。
例えば、夜中に隣戸の方がシャワー等を浴びれば、その音でこちらの住戸の方は安眠できません。
また、エレベーターシャフトが寝室の脇に有りましたら最低でもコンクリート壁厚さは25センチ以上ないとエレベーターの上下動の音やドアーの開閉音等が聞えますので、これもクレームの原因になります。
更に、ここで問題なのがコンクリート壁の厚さだけでは遮音性は維持できない事なのです。大切なのはこのコンクリート壁に直(じか)にビニールクロスを貼っているかどうかなのです。
鉄筋コンクリート造の戸境壁に直(じか)にビニールクロスを貼っているのが一番遮音性は高いのです。
最近、この鉄筋コンクリート造の戸境壁に直にビニールクロスを貼っていないマンションを結構見かけます。
そのケースはコンクリート壁の表面の仕上がり精度が悪いのでコンクリート壁面から6~7センチ離れた所にプラスターボードを貼って平らに仕上げそのボードにビニールクロスを貼っているマンションです。
これはコンクリート壁とボードの間の空気層が両隣(両側)で共振現象を起こし、遮音性が落ちるのです。この事はほとんどの大手ゼネコンの技術研究所で実験された事実です。
この様なマンションは同じ帖数表示でも実際の内法(うちのり)寸法は6~7センチ少ないので部屋も狭くなってしまいます。ですのでこの様な仕様のマンションを作ってはいけません。
尚、こちらの住戸の寝室の脇が隣戸の寝室でありましても、隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造で厚さは20センチ以上にし、その表面に直にビニールクロスを貼ってある物件にした方が良いと思います。
遮音性能は重量に比例して高くなります。
戸境壁の鉄筋コンクリート造の壁の厚さが厚い程重量が重くなりますので遮音性能が高くなるのです。
しかし、日本では高さ60メートル以上( 18階建て以上 )の超高層マンションは基本的に建物を軽くしなければなりません。
ですので、戸境壁の工法(構造)材質には鉄筋コンクリート造は重いので確認申請が受理・認可されないのです。
その為に戸境壁を鉄筋コンクリート造では無く軽い乾式工法に致しております。
超高層マンションは軽く柳の如くしなやかな構造にしませんと、地震の多いわが国では耐えられません。
一例ですが、私が過去に日本で超高層の超一流のホテルに宿泊しました時に遮音性能の悪さを実感致しました。当時1泊4万円も払ったのに隣の部屋の夜の「 あらぬ声 」がまる聞こえでした。
超高層の隣室(隣戸)の音の遮音性能の悪さは、わが国では宿命と諦めておりました。
しかし建築技術も進歩しまして、乾式工法でも鉄筋コンクリート造の戸境壁までは遮音性能が出ませんが、下記の仕様にすればかなり遮音性能が高まります。
その仕様のカタログデータでは遮音性能が高くDr値60で通常の鉄筋コンクリート造厚さ18センチの戸境壁の遮音性能Dr値50より遮音性が高いのです。
しかし、実験室のデーターなので実際の工事現場で施工した場合を考慮致し、15~20%引きと想定しても遮音性能Dr値50前後は鉄筋コンクリート造厚さ18センチの戸境壁に匹敵いたします。
この遮音性能の高い乾式戸境壁の構造は「繊維入り押し出し石膏成型板」を不燃の断熱材厚さ50ミリを挟んで両側に立てて設置し、その両外側に更に鉛板入り石膏ボードを貼る工法です。そしてその鉛板入り石膏ボードに直にビニールクロスを貼って仕上げをしている仕様です。
超高層マンションで隣戸が出す音の遮音性能は、この工法を用いれば通常の簡易な乾式工法より高まり、 建物も軽く出来ます。中高層マンションの鉄筋コンクリート造厚さ20センチ弱の戸境壁程度になると思います。
超高層マンションの分譲を計画しているディベロッパーの方は、乾式の戸境壁の工法(構造)にしなければなりませんので、上記の仕様にすれば会社の信用は高まると思います。
入居後の隣戸間の音のクレームを処理するのは大変な作業になるのです。ほとんど不可能に近いのです。
再度申し上げますが高さ60メートル以内(18階建て )の中高層マンションの戸境壁は鉄筋コンクリート造で仕上げはコンクリート面に直にクロス貼にする事が、購入者( 入居者 )の信用も高まりよいのです。
今回のコラム『 隣戸間の戸境壁は鉄筋コンクリート造厚さ20センチ以上必要で仕上げはクロス直貼りが良い 』の御説明を致しましたが、この事も前回に増して分譲マンションを作る上でとても重要で大切な事ですので、是非共実行して戴きたいと存じます。
超大手や大手ディベロッパーは一流とは限らないと常に私は言っております。超大手や大手ディベロッパーに於いても私の建築的価値観では一流と評価できますのは数社しか有りません。ほとんどが三流なのです。
一流のディベロッパーは購入者( 入居者 )への配慮が行き届いたマンションを供給しています。
何度も申し上げています様に、不動産の分譲事業で一番大切なのは売主の信用と顧客に対する配慮です。準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーにとって「 超大手、大手ディベの寡占化 」に対抗し勝つ為には顧客への気遣い及び将来クレームが生じないマンションを作り続ける事なのです。
ですので、毎回注意を促していますが、商品内容の質やクレーム等で信用を落とすのは一瞬です。再度信用を築くには最低10年はかかります。この事もよく肝に銘じて下さい。
次回はフェーズ8の「 モノづくり 」第4項目の『 ハード面の重視 』25項目中の第9項目である『 部屋と部屋等の間仕切り壁下地のボード厚さは12.5ミリが標準で、住戸スラブ上面から上階スラブ下面まで設置の事 』に関してのお話を致します。
次回も期待して戴ければ幸いと存じます。
皆様、良い御年をお迎えください。