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人事・労務

第40話 営業手当の支給根拠を正しく理解する

「賃金の誤解」

 ある会社の総務部長が相談にこられました。
 
「わが社の営業は、訪問営業が中心のため、所定労働時間内では仕事が終わらず、残業が避けられません。営業職の残業時間管理は繁雑なので、みなし残業手当としての営業手当を支払っています。
 労働者が労働時間の全部又は一部について、事業場外で業務に従事した場合、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間働いたものとみなす。また当該業務を遂行するために、所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。とする労働基準法第38条の2の条文解釈で営業手当は定額で済むと理解していたのですが、最近それだけではダメだとも聞くようになりました。
 そんな矢先、最近入社した営業担当が、営業手当は所定内の業務に対するものだからと、営業手当も算定ベースに含めて時間外の割増賃金を支払ってほしいと強く主張してきました。彼の要求通りに残業手当を支払う必要があるのでしょうか。」
 
 労働基準法は、原則として1日8時間、週40時間を超える時間外労働に対しては25%の割増賃金を支払うことを求めています(労基法37条1項)。同時に、決められた手順で割増計算されたみなし残業手当の金額が時間外計算した場合の手当金額を下回らない限り、残業手当を定額で支払うことを禁じてはいませんし、違法でもありません。事実、多くの会社で営業手当等の名目で定額の割増賃金が支払われています。
 ただし、労基法38条の2で言う事業場外勤務でポイントとなるのは、対象となる労働が事業場外で行われ、かつ使用者の具体的な指揮監督が及ばないため、労働時間を算定することが困難である場合に限るという点です。そして、「算定することが困難」という要件は、近年厳格に解釈される傾向にあるので注意が必要です。
 
 定額の営業手当を支給する場合、その手当金額は時間外勤務の実態を根拠としている旨を給与規程に明記し、実残業時間が営業手当で考慮される時間を超えた時には、その超過分の割増賃金を支払うことも記しておきましょう。
 本来、営業職のような職種こそ、成果を測る基準として時間軸は不可欠であり、時間管理を安易に本人任せにせず、勤務成績(成果とプロセス)と時間管理の責任者たる管理職による管理監督をきちんと行なうべきなのです。そして労働時間の適正管理は過重労働による健康障害防止を目的とする労働安全衛生法の主旨からも職位、職種を越えて強く求められていことも理解しておかねばなりません。

 

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