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- 第57話 「社員が燃える組織について」
よく指導先で「社員が燃える組織、やる気になる組織を考えてください」などと言われることがある。
しかし、社員を燃えさせるのもやる気にさせるのも目的達成の手段にすぎないし、組織作りの目的ではないのだ。
ところで社員がやる気になる組織には次の2通りしかない。すなわち、
(1)社員それぞれが好きな仕事が出来る会社
(2)やればやるだけ報われる、好処遇の会社の二通りだ。
さて、「好きな事が出来る会社」について考えてみる。
例えば、短期間に大手レコード会社となって株式を上場したエイベックスという会社がある。経営陣から社員に至るまで、ダンス音楽を中心とした音楽好きが集まっているので24時間、365日、自分の好きな仕事に熱中することができる。事実、エイベックスの若い社員たちは製作の現場で徹夜もいとわないで働いている。
組織として利益が出るかと言えば、それとこれはとは関係がない。皆が、がむしゃらに働いているのに、それが利益造出に直結していなければ、ただわいわい言っているだけで大赤字という結果にもなりかねない。この手の会社は映像や出版や音楽、ファッション事業に多くある。
エイベックスには社員のやる気を組織的に利益と結び付ける依田会長という経営者がかつていらっしゃったからです。
もう一つは「明確な成果配分」だ。やった者がやっただけもらえる会社にする。
ただし、これには、儲かっている場合、という前提条件がつく。
会社全体として利益が出ない場合、つまり赤字会社の成果配分はどうするのだろうか。業績の足を引っ張った社員からは罰金でも取るとでも言うのだろうか。そうであれば、頑張った社員に余分に出す事が出来よう。しかし、ペナルテイを取られる側からすれば、業績不振は経営者のせいであって、俺たちは頑張ったんだと主張するだろう。到底、やる気の出る組織にはつながらない。勿論、利益造出とは程遠い。
「だからうちは売れば売るだけ収入の増える歩合制で刺激している」という会社がある。大体が利益のあまり出ない旧態依然の会社だ。歩合給の社員は、自分の稼ぎ高だけが問題だから、会社全体の経営戦略や販売戦術とは無関係に行動する。当然のことだが会社の都合より自分の都合が第一優先となる。会社もそれに文句を言えない。
歩合給で社員をコントロールするということは、言いかえれば、会社の大事な将来を、歩合給社員の個人的欲望にゆだねている事と同じだ。
そもそも「社員がやる気になったら利益が上がるという」考え方自体がおかしいのだ。
会社の最高責任者である社長が戦略を練って、黒字になる経営をするほうが、断然、先でなければならない、私は声を大にして言いたいのである。
ところが、経営者としての責任を棚にあげて、「社員は元気がないし・・・・モラール(士気)もあがらない。人材のレベルも低い・・・」などとこぼす社長が少なくない。考え方がまったくの逆である。社長の手腕で利益を出して、経営を安定させ、給料が上がるからこそ、社員は喜び、誇りを持ちやる気になるのだ。
社員をやる気にして利益を出そうと言う観点から組織論を考える必要など、そもそもないのである。
組織の目的は、利益を稼ぐ出すことにある。社員のやる気は、その目的達成のひとつの手段でしかない。したがって、皆さんの会社の組織自体が「稼ぐことのできる仕掛け・仕組み」になっているかどうかこそ、真っ先に論じなければならないのである。
そこで、私は、実務コンサルタントして収益実現を請け負っている立場から、ウエットな人情論をあえて無視して、どうすれば稼げる組織が出来るかを常にドライに考えているのです。