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人事・労務

第133話 コロナ禍による業績低下時の賞与支給の考え方

「賃金の誤解」

 

文筆: 賃金管理研究所 取締役副所長 大槻 幸雄 氏

  6月から7月にかけては夏季賞与(ボーナス)の支給時期にあたります。大企業を始めとして6月中に賞与を支給されたところも多いでしょうが、中小企業では7月の第1週から第2週にかけて支給日を設定された会社も多いのではないでしょうか。   今年はコロナ禍の影響が大きかったこともあって、当初の予定通りには賞与を支給できないという声も聞こえています。実際に、旅行業や飲食業などの一部で、夏季賞与の支給を見送った事例も報道されています。もし会社の業績が急速に悪化しているとすれば、賞与支給にどう対処すべきでしょうか?   結論を先に言えば、たとえ本業(営業収支)で赤字を計上したとしても、基本給の1か月分程度を何とか用意できないか、まずは検討されるべきでしょう。これからの利益を生み出す源泉が社員一人ひとりにある以上、「来期こそ」と社員に奮起させる起爆剤として賞与支給は絶好の機会であり、この基本給1カ月分は「厳しい中であっても、社員の努力に報いたい」という経営者の想いを表すのに必要な額だと考えられるからです。   勿論、コロナ関連倒産が報じられているように、いよいよ厳しくなれば賞与どころではないという状況に陥るかもしれません。しかし、優秀な社員が自社に残って、明日のわが社を牽引していくことが望める状況にあるのなら、賞与は経営者のメッセージを込めて、たとえ少額ではあったとしても支給されるべきでしょう。   合理的な賃金管理の考え方に立てば、月例賃金は従業員にとっては生活の糧であり、安定的な支給を維持することが優先されますが、賞与は利益の配分ですから、企業業績と社員の勤務成績によっては大きく上下に変動しても良いことになります。ただし、極端な増減は処遇が不安定だとの印象を与え、モチベーションの向上や社員の定着にとってかえってマイナスに働くことも知っておかなければなりません。   ところで賞与支給水準は、所定内賃金の支給月数でも表されます。大企業ほど支給月数の割合が大きいものの、従業員数100人未満の中小企業でも年間月数は2.4カ月と年収の6分の1を占めています。これほど大きな金額の賞与だからこそ、年2回のボーナス支給を組み込んだ住宅ローンの返済も行われているのです。確かに賞与は利益の配分ではありますが、社員生活の安定を考えれば、会社としては支給額の波が極端に大きくなるような支給方法はなるべく避けるようにしてください。   平時であれば、社員の貢献に正しく報いるというスタンスを基本に臨めば良いわけですが、非常時には次の回復期に向けて、いかに社員が力を合わせて頑張れる風土づくりをしておくか、という視点もとても大切です。   賞与支給は、賞与原資の決め方、個別配分の考え方、経営者から社員への労いや感謝のメッセージ、支給時の上司からの声掛けなど、モチベーションを大きく向上させ得る重要なイベントです。それは、業績不振で少額しか原資を用意できない時であっても同じです。   ぜひ、会社にとっても意義ある賞与支給を行っていただきたいと思います。    

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