まず名前を聞き、すぐハガキを出す
植垣米菓では、初めて来店したお客さまに、
ポイントカードの案内をします。
カードお申込みの際、お名前と住所を教えていただきます。
商品のお買い上げに応じてポイントを差し上げますが、
雨の日ならさらにポイントをひとつプレゼントします。
ハガキは、来店後すぐに出します。お礼のハガキです。
そして3週間後には『お元気ですか』というハガキを出します。
さらに2ヵ月後あたりに商品案内を出します。
すると、その後も継続的にお買い求めくださるお客さまが増えています。
じつは以前、初回来店後、すぐダイレクトメールを送っていました。
お名前と住所がわかったので、すぐ売り込んでいたことになります。
ハガキを出すようになってわかりました。
お客さまと関係づくりができていない段階で商品を案内しても、
気持ちよく受け止めていただけません。
まずは心からお礼。
お菓子がおいしいだけではない。
このお店はほかとは違うと認めてもらえると、
その後のお付合いが円満で長く続くのだとわかったのです。
商品を好きになってくれたお客、対応を気に入ってくれたお客は
再度、来店してくれます。
贈答品として別の人に持参したり、
季節の贈り物として送ったりするお客も数多くいますが、
中心は自宅用として買っていくお客です。
お気に入りのお菓子がなくなれば、店が近いから買いに行きます。
お客がみなそうであればうれしいのですが、
人間というのは“移り気”であり“つい忘れる”生き物。
買い物で違う町に出向けば、そこで他メーカーのお菓子を買います。
人から聞いたり、チラシを目にしたりすれば、そのお菓子を買います。
お菓子は恐ろしいまでに競争相手が多い業界です。
気に入っていたお菓子をつい忘れて、
ほかの商品に目を奪われることのほうが多いと考えてもいいでしょう。
その状況で選ばれる商品、選ばれる会社になるには何をすべきか。
次々と競合商品が現れるなかで選ばれるスタッフ、
選ばれる店になるにはどんな対応をすべきか。
その対策のひとつであるハガキは、
経営において近年ますます重要な存在になっています。
人口が減り、市場が縮小しているにもかかわらず競争先は減りません。
商品そのものの差別化が難しく、新商品を世に送り出しても
すぐまねされるなかで、ハガキは大きな成果を上げています。
上位客ほど“会う頻度”を高くする
ハガキを活用する方法はいくつもありますが、
植垣米菓では“親しいお客”ほど、ハガキのお付合いも深くしています。
上得意客ほどハガキも上得意客扱いをし、
会う頻度が高いお客ほど“ハガキで会う”頻度を高くしているのです。
「基本的にお名前と住所を知っているお客さまにはハガキを出します。
ただ、顧客上位80人にはこんなハガキを出すとか、
売上ベスト100人には手づくりハガキを出すといったように、
ハガキそのものの内容を変えたり、出し方を変えたりしています。
大切なことは、お客さま一人ひとりに合った
メッセージを書くことだと思っています。
たとえば、当店の売上でベスト100人に入る、あるおばあちゃんがいます。
独り住まいで、足が悪い方なんですよね。
その方には『もしよろしければ、おかきをご自宅までお持ちしますよ』
といった一文を書きます。
からだが不自由にならなくても、人は年を重ねると
出かけるのがおっくうになることありますよね。
店頭でも伝えていることですが、
『おうちまでお届けしますよ』ということを書いて出すと、
『ありがたい』と言って利用してくださいます」
中心顧客が高齢者の場合、次の世代のお客を育てるに越したことはありません。
問題は年齢層。
おかき、せんべいといった緑茶に合う和菓子は高齢化によって、
さほど需要はおとろえませんが、若い世代に浸透していないことが課題です。
ところが、植垣さんはあまり心配をしていません。
「おかき、おせんべいをお求めになるお客さまは、
お年寄りが大半です。
お年を召すとともに来店の間隔が長くなったりします。
しばらくお目にかからないなぁ…と思っていると、
入院されたり亡くなられていたりします。
ご家族がお見えになるからわかるんです。
『父が生前、お世話になりました』とごあいさつに来てくれたり、
『母がいつも買っていたものを買いに来ました』と、
息子さんや娘さんがおかきを買いに来てくれることが本当に多いんです。
私どもはたいへん恵まれていまして、
『どこそこへ行ったから、これみなさんにおみやげね』
『これ、食べてください』と、逆にいただくことが多いんです。
お漬け物をくださったり、栄養ドリンクを持ってきてくれたりと、
社員と一緒にいつもいろんなものを食べたり飲んだりしています(笑)
そんなおつきあいをしているお客さまが多いので、
息子さん、娘さんご家族とも自然に親しくなります」