「わたしが配った地域だ!」
来店客ではなく、地域住民に
植垣米菓を再認識してもらうポスティング活動は、
店のスタッフ全員で取り組みました。
チラシを配るとなると、一気に広範囲を
網羅しようとする会社が多く見受けられます。
しかし植垣さんは違うやり方を選びました。
『あきない実践道場』で学んだとおり、
まず、範囲を狭めた一部分だけにチラシを配布する方法です。
「最初はこの地域だけ、と狭い範囲にチラシをポスティングしました。
そこで反応があることがわかったので、
少しずつ範囲を広げていくやり方をしました。
たとえば、お店は西尻池町3丁目にありますが、
3丁目から5丁目までの100軒をスタッフの一人が配布し、
別のスタッフが久保町1丁目から4丁目、
もう一人が久保町5丁目から9丁目までというように
地域を細分化して進めていったのです。
来店客に『どこから来られましたか』と聞くと、
何丁目からと答えてくださいますが、するとスタッフはわかるわけです。
(あっ! わたしが配った地域だ!)と。
また『ポイントカードはお持ちですか』と尋ねると、
初めてのご来店だということもわかります」
ポスティングを機に来店してくれたことはとてもありがたいことです。
しかし、一度来店し、買ってくれただけでは安心できません。
「そこからハガキが始まります。
自転車で10分くらいのところまでポスティング範囲を広げていますが、
年々10パーセントずつくらいお客さまが増えています。
売上は大事ですが、それ以前にお客さまの数。
手書きハガキはやめられません」
スタッフあっての戦術活動
どんな商品が喜ばれるか。
どんな対応が感動してもらえるか。
その裏づけとなる、お客の要望を知ることができれば、
経営は驚くほど楽になります。
経営者にとって、もっとも欲しい情報を
植垣米菓では容易に得ることができます。
スタッフが教えてくれるからです。
「こんなひとことがあったら、もっとお客さまに
喜んでいただけるのではないでしょうか」
月1回、『みなとや』でおこなわれる会議では、
スタッフの発言が相次ぎます。
店頭で接客を担当するスタッフも通販部門のスタッフも、
日頃、お客と交わす会話から得たこと、
感じたことを発表してくれるのです。
お客と接し、ポスティングをして、
ハガキを書き、電話を受けて、商品を送る。
直接、間接を問わず出会ったお客が
再び来店したり、お客のもとに配達したり、
手書きのものを送ることで、また接点が増える。
お客の表情を見て、声を聞き、
お客の反応や感想から満足度をおしはかる。
そこから、戦術の精度が上がり、
顧客満足度を押し上げる対応策が生まれるのです。
経営者が学び、学んだことを従業員に教育することで
学習する組織をつくりあげる。
従業員の意見を採用しながら、戦術を磨き、革新していく。
植垣米菓の静かなる快進撃は、創業2世紀目も、まだまだ続きます。