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人間学・古典

第四話 「呼びつけできない部下を持て」

中国哲学に学ぶ 不況は会社守成の好機

この言葉は孟子にあるものだが、要するに自分より秀れた部下を持ちなさい。ということである。
とかく部下に一目おいているようでは沽券にかかわる、威厳を損ねると考えがちにはなるが、
これは逆で、こうある上司のほうが尊敬され威厳を感じさせるものである。

 私も銀行、メーカーに五十七年の現役を過ごしたが呼びつけされなかったのは銀行、メーカーで
各一人のトップだけであった。この二人の上役から“君”づけで呼ばれたこともなければ、
呼びつけられたこともなかったのだが自然に頭が下がり、この上司のためならという気にもなってくる。
つまり心服してしまうのである。

 アメリカの鋼鉄王といわれたカーネーギーの墓石には
“己より秀れた人の協力を得ることのできる天才がこの下に眠る”
との文字が刻まれているとか。
 
 また中国の昔、楚の項羽に勝って天下を得た劉邦は
“百万の衆を連らね戦えば必ず勝ち戦するのはわが韓信に如かず”

といって張良、簫何と共に、己より秀れている兵を称えている。

 こうした兵は現代でも例外はない。世界に誇るわが国の大企業のすべてと言えるほど創業は
一人でしかなかった。その一人の能力にも自ら限界がある。より秀れた人材の協力を求めた
信条の成果といえるだろう。

 こうした成功者の共通点の一つは論語にある“下問を恥じず”つまり驕らないことについて
目下の者に教えを請うのを恥としないということであった。そういえば前記の呼びつけしなかった
ふたりの上司からはよく相談を受けたが、やはり論語にある
“能を以て不能に問い、多きを以て寡きに問う”
(才能があるのに、へりくだって才能のない者にまで聞く)

上から聞かれて、いい気になっていたのは自分であった自分を戒めねばなるまい。

 


※一部旧字を現代漢字に変更させていただいております。

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