- ホーム
- 社長のメシの種 4.0
- 第34回 デジタル通貨
平成の世の中を大きく変えたものの中に「インターネットの普及」があるが、それが、ネットをどこでも利用できる「スマートフォン」の登場でさらに加速され、コミュニケーション、情報の入手方法から普通の人の購買行動(ネット販売)、音楽や映画の視聴、レストラン、ホテルや列車などの予約などが変わった。
その結果、企業の時価総額上位にはマイクロソフト、アップル、アマゾン、グーグル(アルファベット)、フェイスブックなどのIT企業(ネット企業)が並んでいる。
これからの令和の時代も世の中は大きく変化をすると思われるが、その要因となりそうなものに「デジタル通貨」がある。
「デジタル通貨(仮想通貨)」というと、多くの人は真っ先に「ビットコイン」を思い浮かべるだろうが、令和の大変化を引き起こすと思われるのはむしろフェイスブックが6月18日に発表した「リブラ(Libra)」だ。
リブラの特徴は、「ステーブルコイン(Stable Coin)」と言われる法定通貨などの実質資産に裏付けされていることで、これにより通貨の価値が変わらないように作られている。
そのため実質的には投機商品と化している「ビットコイン」などの従来型デジタル通貨(仮想通貨)と違って、安心して従来の通貨の代わりに支払いや送金に使える。
国際通貨基金(IMF)は7月15日に「FINTECH NOTES:The Rise of Digital Money(デジタルマネーの台頭)」と題する報告書を公開しているが、その中で「リブラ」について、「個人情報の保護などの点からリスクもあり、国際的な規制が必要になる」としながらも、「低コストで円滑に国際送金できる利便性などから、デジタル通貨が一気に普及する可能性がある」としている。
■リブラ(Libra)
リブラはミッションを、「多くの人びとに力を与える、シンプルで国境のないグローバルな通貨と金融インフラになること」としている。
「世界各国に出稼ぎに行っている外国人で銀行口座を持っていない人は17億人(世界人口の31%)おり、彼らは受け取り銀行を持たないので銀行間送金はできず、高い手数料も払えない」「リブラは40ドルのスマートフォンとインターネット接続があれば誰でも資産を安全に守り、世界経済にアクセスし、低コストで取引し、あらゆる金融サービスにアクセスできる」とホワイトペーパーに記されているように、サービスが開始されれば発展途上国を中心に急速に普及すると考えている。
SNSの「Facebook」、「インスタグラム」、メッセンジャーの「WhatsApp」など、フェイスブックグループの総ユーザーは世界で27億人と中国の人口より多く、しかも中国はFacebookを遮断しているので、中国を除いた世界の人口中の27億人と多い。
リブラは「Libra Association(リブラ協会)」という中立の新組織に委ね、フェイスブックはリブラ協会の一社にすぎず、利用者の財務データを閲覧することもないとしているが、ムニューシン米財務長官が「マネーロンダリングなど悪意のある使い方をされるおそれがあり、懸念を強めている」と表明するなど規制当局は懐疑的で、フェイスブック側は2020年前半の開始を目指しているものの前途多難だ。
しかし、リブラに限らずデジタル通貨が令和の世の中を大きく変化させることは確かで、IMFが分析しているように、既存の銀行は「淘汰か進化を迫られる」可能性が高い。