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第35回 エストニア

社長のメシの種 4.0

 エストニアは、九州と同じぐらいの面積に132万人が住む、1991年にソ連から独立したバルト三国(エストニア、リトアニア、ラトビア)の一つだが、ユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)が4社あり、行政手続きの99%がオンラインで可能とされるIT先進国で、近年「電子立国」の一つとして世界中から注目されている。
 旧ソ連時代は各地域が特定の産業を担なう政策がとられていたが、エストニアには幸運にもIT系産業が位置づけられていたため、セキュリティや暗号分野の優秀な人材が育成され、現在の電子国家につながった。
 
■e-Residency
 エストニア政府が2014年に始めたe-Residencyは、外国人が電子住民になれる制度で、e-Residencyカードを取得するとエストニアが自国民に提供している電子政府システムの一部を利用することができるため、最低資本金2,500ユーロ(33万円)で会社を設立したり、契約書へのデジタル署名などができる。
 
 2019年9月現在で世界167カ国から50,000人以上の応募があり、日本人も2,845人が登録(フィンランド、ロシア、ウクライナ、ドイツ、イギリス、アメリカに次いで7位)、日本の法人も321社(12位、全体で6,000社以上)と多い。
 
 このサービスを開始した要因には外貨獲得もあったが、1億7,800万ユーロ(23億円)の経済効果をエストニアにもたらしている。
 2018年12月にカリユライド大統領が発表した安全性、有益性、利便性を更に充実させる49の指針による「e-Residency2.0」には、エストニア政府観光局と連携した主要イベント情報の提供、エストニアの名産品を輸出できるマーケットプレイスの整備、e-Residencyコミュニティへの女性起業家の誘致、エストニア在住の人に質問できるQ&Aプラットフォームの整備なども含まれている。
 
■北欧マネーロンダリング
 バルト海に面するラトビアとエストニアは、ロシアとヨーロッパを金融面で橋渡しするというモデルも構築していたが、マネーロンダリング(資金洗浄)疑惑も浮上した。
 デンマークのダンスケ銀行は、エストニア支店経由で2007〜15年に2,300億ドル(25兆7,000億円)の資金洗浄への関与を認め、米司法省と証券取引委員会(SEC)の調査を受け、この件への関与が明らかになったスウェーデンのスウェドバンクも1,350億ユーロ(17兆円)の資金が流れたとされ、スウェーデンとエストニアの金融当局が調査を進めているし、フィンランドのノルデア銀行も2005〜17年にかけてロシア絡みなどの疑わしい資金7億ユーロ(886億円)を取り扱った疑いが報じられている。
 そのためかエストニアでは銀行口座の規制が行われており、エストニア法人は設立できても銀行口座の開設がネックになっている。
 
■IT立国
 しかし、エストニアのベンチャー企業は注目度も高く世界中から投資が集まっており、私も近々視察に行きたいと思っている。
 首都タリン在住のエンジニアの話を先日聞いたところでは、一般のエストニア人は電子政府のサービスをそれほど使っているわけではなく、決済も現金やクレジットカードが主流で「サイバー国家」的な雰囲気はあまりないのが現状のようだが、隣国のフィンランドを目指してIT立国化を国策として進めるエストニアは国家自体が実験的な動きをしており、今後も注目してゆく必要がありそうだ。
 
 
 
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●e-Residents

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