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- 眼と耳で楽しむ読書術
- 第90回『思わず考えちゃう』(著:ヨシタケシンスケ)
経営者の方々とご一緒させていただくと、
読書に関する話題が必ず出てきます。
多くの方が、気にされていることの1つが、
「読む本の偏り」です。
当然のごとく、ビジネス書や自己啓発書が中心で、
もっと幅広く読んだ方がいいのでは? と思いながらも、
何を読んでいいのかわからない、というのが実情のようです。
そんなとき、ぼくがオススメしたいのは、
一見すると、全くビジネスと関係なさそうな本でありながらも、
実は大いにヒントや刺激になるもの。
たとえば、経営者やリーダーに不可欠な
「柔軟なモノの見方、発想」につながる本は、
非常に望ましいと思います。
今回紹介するのは、まさにそんな一冊!
『りんごかもしれない』『おしっこちょっぴりもれたろう』などの
ベストセラーで知られる、人気のイラストレーターで絵本作家、
ヨシタケシンスケ氏の最新作、
『思わず考えちゃう』(著:ヨシタケシンスケ)
です。
ヨシタケ氏は、講演に呼ばれた際、
予定時間よりも、かなり早く話終わってしまうことが
たびたびあり、困ったとのこと。
そんな時、日頃書き溜めているスケッチを
参加者に見せながらコメントしてみたところ、
非常に好評!
そこで、そのスケッチへのコメントだけをまとめて
一冊にしたものが本書、ということです。
いわば苦肉の策から生まれたアイデアですが、
たしかに面白い。
講演の場で好評を博したのも納得です。
中心となっているのは、
よくある日常の中での一場面。
「どうでもよすぎてわざわざ言わないことと、
大事すぎて言えないことっていうのが
世の中にはいっぱいあって、
その両方に丁寧に1つずつ言葉をつけていく作業っていうのが、
僕がやってて楽しいこと」
と、語るヨシタケ氏。
シンプルで、ほんわかとした雰囲気の中に、
他の人とは違う視点、やわらかいモノの見方が
スーっと出てきて、実に読み応えがあります。
そして、思わず唸らされるような、
鋭い言葉も随時!
たとえば、
・人を甘やかすっていうのは、要は自分を甘やかすことにしかならない
・できないことをできないままにするのが仕事
・自分がすること、選ぶこと、見ること、聞くこと、自分の身に起こること、
すべて「宝くじを買っている」と考えればいいのではないだろうか
・何か自分がやりたいことがあって、それができないっていうのは、
大した悩みじゃないんですよ、たぶん。そうではなくて、自分のそばにいる人に、
できてほしいことができないってときに、どう一緒にやっていくかっていうのが、
実は一番難しい
など、ゆるい感じなのに、深いんですよね、全てが。
一見、全くそんな風に見えないですが、
経営者・リーダーに、ある意味、一番必要なことが詰まった一冊、といっても
過言ではないと思います。
大いにお役立ていただければ幸いです。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『ブック・オブ・イントゥイション』(演奏:ケニー・バロン)
です。
ジャズピアノの巨匠ケニー・バロンの集大成とも言うべき傑作。
大ベテランならではの風格が漂う中にも、瑞々しさや自由さ、
生き様までもが伝わってきて、グっときます。
また、ケニーとの共演歴が20年以上に及ぶ日本人ベーシスト、
北川潔さんがトリオの一員として参加していることにも注目!
合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。