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- 第91回『なぜ本を踏んではいけないのか』(著:齋藤 孝)
猛暑の夏もピークを超え、暑さの中にも秋の訪れが感じられるようになりました。
ということで、「読書の秋」を先取りすべく、
今回は、読書についての本を紹介したいと思います。
『なぜ本を踏んではいけないのか』(著:齋藤 孝)
です。
まさに、タイトルどおりの"人格読書"とも言うべき、
崇高で骨太な読書論!
「私は本を読むからこそ思考力も、人間性や人間力も深まると考える」
「本を読んだという体験があるだけでは意味がない。それが自分の血や肉となって、
折にふれて、その書物の内容が引用できるまでになることが大事である」
「本を読み尽くす、味わい尽くすには、著者に私淑するつもりで読むといいと
私は考えている」
「人間の総合的な成長は、優れた人間との対話を通じてはぐくまれる。
しかし、身近に先導者と呼べるような人がいるとはかぎらない。
しかし本であれば、いつでもどこでも優れた人と対話できる。
この出会いが向上心を刺激し、思考力や人間力を高めることにつながる」
など、読書の本質に深く入り込んだ記述が続々と!
文中で引用、紹介されている本も多数あり、
どれも興味を惹かれるとともに、非常に参考になります。
引用の例を挙げると、
「ぼくは今まで、活きた眼で読書していなかった人間である。
本の選び方、本の読み方を知らなかった。
つまり真の人生の生き方を知らなかった」
『わがいのち月明に燃ゆ―戦没学徒の手記』(著:林尹夫)より
「すべて良書を読むことは、著者である過去の世紀の一流の人びとと
親しく語り合うようなもので、しかもその会話は、かれらの思想の最上のものだけを
見せてくれる、入念な準備のなされたものだ」
『方法序説』(著:デカルト)より
「若い人々から、何を読んだらいいかと訊ねられると、
僕はいつもトルストイを読み給えと答える。
あんまり本が多すぎる、たからこそトルストイを、トルストイだけを読み給え。
文学に於て、これだけは心得て置くべし、というようなことはない。
文学入門書というようなものを信じてはいけない。
途方もなく偉い一人の人間の体験の全体性、恒常性というものに先ず触れて
充分に驚くことだけが大事である」
『小林秀雄全作品(第19所収)』(著:小林秀雄)より
など、深いものばかり。
経営者・リーダーが、さらに読書力を高めるために
大きな力となる一冊!
ぜひお役立ていただければ幸いです。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『ソニー・スティット・プレイズ』(演奏:ソニー・スティット・カルテット)
ソニー・スティットが、1955年12月に録音した名盤。
60年以上もの月日がたっても色褪せない、いや、時がたつほどに魅力が増す音楽は、
本書で紹介されている良書にも通じるものを感じます。
合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。