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- 第102回「ロレンスになれなかった男」(著:小倉孝保)
古の昔から、人は英雄たちに魅了されてきました。
時に彼らに自らを投影し、時に自分とは全く違う生き方に憧れを抱く。
また、苦境に陥った時、ピンチの折には、彼らの型破りな人生に勇気や元気をもらう。
まだまだコロナ禍の影響が残る今日、
人々は心のどこかで、胸のすくような、新たな英雄の出現を
待ち望んでいるのではないでしょうか。
現代の英雄たる経営者やリーダーたちに、
今のこのタイミングで、ぜひ読んでいただきたいと思う一冊が、
『ロレンスになれなかった男』(著:小倉孝保)
です。
本書の主人公である岡本秀樹氏は、世間的には無名に等しい存在。
しかし、その業績、その生き様たるや、ケタ違いに破天荒で、
こんな日本人が実在したのか、と驚かされます。
ごく簡単に岡本氏を紹介すると、映画『アラビアのロレンス』に憧れて、
二八歳でシリアに渡航。以来、空手文化のなかったアラブ世界に
空手の種を播き、空手人口が200万人を超えるほどにまで育て上げた傑物です。
これだけでも驚異的ですが、武勇伝はまだまだ終わりません。
空手を通じて、サダト、ムバラク、さらにはあのフセイン一族といった
日本の外交官でも、そうそう食い込めないアラブ諸国の高官たちと
太いパイプを築いていきます。
そして、大物たちとの人脈を生かし、さまざまなビジネスを展開。
こんなことが実際に起きるのか、と目を疑いたくなるようなことばかりで、
全てが映画のよう。いや、映画以上です。
もちろん、栄光には光と影があり、ビジネスの失敗で、
どん底も経験します。
それをいかに乗り越えていくのか?
これも本書の見どころの1つですが、
ポイントを挙げればキリがないほどです。
何より、どんなピンチにも屈することなく、
前に進み続ける岡本氏のバイタリティーは、
我々に今こそ必要なもの。
また、岡本氏、及び関係者の取材を18年に渡り続けた、
著者の小倉孝保氏の情熱も凄まじい。
アラブの現代史をリアルに知る上でも最適で、
経営者やリーダー、必読!
この近年稀にみる、エネルギーあふれる一冊、
読めば、ヤル気や元気がみなぎってきます!
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」』
(指揮:テオドール・クルレンツィス)
です。
チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」/amazonへ
『クラシック音楽はつまらない』と語り、
"クラシック音楽界の革命家"と称される指揮者テオドール・クルレンツィス。
まさに、クラシック界における"アラビアのロレンス"的な存在だと、
ぼくには思えます。
合わせてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。