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経済・株式・資産

第38回 店内競合で、商店街の活気:「アルビス」

深読み企業分析

我が国食品流通市場は長期間にわたって売上面で影響力を及ぼしていた総合スーパーがいよいよ縮小の一途をたどり、それに代替する勢力として、コンビニエンス、ドラッグストア、食品スーパーが台頭している。
 
これらの業態は同じような商品を扱いながら、住み分けがある程度できており、業態間の競争はそれほど大きくない。食品スーパーの場合も毎日の食事の材料を調達するという意味において、コンビニエンスやドラッグストアとの競争はそれほどでもない。
 
最も競争的と呼べるのが、総合スーパーや同じ食品スーパーとの競争であろう。総合スーパーとの競争では食品スーパーに軍配が上がり、食品スーパー内での戦いでも地域ごとに勝ち組とその他の差が徐々に開き始めているように見られる。
 
勝ち組の代表としては、上昇企業で言えば、ヤオコー、ベルク、ハローズ、アークス、アクシアルなどがあり、かつては上場企業であったが非上場化したオオゼキ、そして未上場のエブリイなどが名を知られている。
 
アルビスは富山県をスタートに石川県、福井県に展開する勝ち組スーパーの1社である。もともとボランタリーホールセラーとしてスタートした会社であり、2000年代半ばにその主要会員企業が脱退して、本格的に小売業として展開を始めた企業である。
 
しかし、その後の躍進は見事なものがあり、2007/3期を起点にすると、年率16%の経常利益成長を遂げている。
 
強い食品スーパーに共通する特徴は、その地域にあった生鮮食品の品揃え、中でも青果や鮮魚があり、加えて惣菜、弁当など中食に強い企業が多い。これらは、全国展開する様々なチェーン店には簡単には真似できないため、消費者の心をがっちりと掴み、固定的なファンを多く抱えている。
 
同社の店舗を見ると、明らかに鮮魚コーナーの充実ぶりには目を見張る。売り場面積自体が平均的な食品スーパーの1.5-2倍もある。当然ながら、品ぞろえも豊富である。特に北陸は魚の消費量も多いということで、この売り場を見るだけで、簡単にはよそ者が入っては来られないことが理解できる。
このような、地域特性に加えて、同社の店舗で最も目につくのが、あえて社内競合を設けて、消費者の選択肢を広げていることである。端的な例を挙げれば、上で述べた特徴的な鮮魚売り場の一番端にその鮮魚を使ったすしが並べてある。ここまでならば、どうということもないが、しばらく行くと総菜売り場の中の弁当のコーナーにもすしが置いてある。しかも、価格帯が明らかに違うのである。これは、鮮魚売り場のすしはまさに生のネタが中心であるのに対して、弁当コーナーでは冷凍を使った普通のスーパーで並べているすしが置いてある。
 
 
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当然、両売り場の責任者は異なり、そこでは店内で消費者の取り合いをするわけである。
 
実はもっと極端なケースがある。それはその自社運営の総菜売り場のすぐ隣に、外部の業者が運営する惣菜売り場があるのだ。両方の売り場に各種の惣菜が並び、弁当が並んでいるのである。ちょっと、こういう発想は見たことがないので、びっくりしたが、まさに同社の強さの秘密の一端を見たような気がした。
 
有賀の眼
 
同じ店内に競争相手を作る発想は、あまり見たことがない。しかし、この発想は一度見てみると実は極めてリーゾナブルなのではないかと思われる。つまり、まさに一つのスーパーの店内に、一つの商店街ができたようなものである。通常、消費者は今日はどの店で買い物をするか選ぶ権利はあっても、スーパーの店内に入ってしまえば、ないものはない、あるものを買えという状態となる。
しかし、店内の同じカテゴリーの製品に、複数の主体がいるとすれば、そこで、選択の余地が出てくるのである。同じ商品でも材料が違って、味の傾向が違って、価格が違うのである。これは簡単なようでいて、一つの売り場で実現しようとすると、なかなか難しい。なぜなら、効率化のためには、材料を共通化するのが手っ取り早いからである。
 
しかし、一つの店舗内に、競争があることで、あたかも商店街で買い物をするような感覚になれるのである。1業種1店舗というようなさびれた商店街は別にして、活気のある商店街は同じカテゴリーの商品を複数の店舗が競って販売していることが多い。まさに、スーパーがそれを提供できるとしたら、消費者にとっては楽しみが倍増するようなものであろう。
 
たぶん、この発想は意外とビジネスのヒントになるのかもしれないと思う。
 

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