同社は食品スーパーであるが他の多くの食品スーパーとはかなり特徴が異なる。同社の食品スーパーの特徴としては、生鮮、総菜のウエイトが高くおよそ55%となっており、中でも精肉のウエイトは22-25%と他の食品スーパーよりかなり高い。比較的生鮮・惣菜のウエイトが高いヤオコー(8279)のウエイトは48.2%(2016/3期)であるが、ヤオコーの場合は総菜のウエイトが13.5%と高いことが特徴である。ハローズ(2742)の生鮮・惣菜のウエイトは42.6%(2016/2期)であり、そのうち精肉は11.5%と同社のほぼ半分となっている。
同社の開示されている3期間の実績と予想1期間の営業利益をほぼ同規模のハローズと比較すると、ほぼ同傾向の推移となっている。2015/7期の営業利益の増加率は同社の方が高めだが、それ以降はほぼ似たような営業利益推移である。今期予想に関しても両社低めの伸び率予想となっているが、同社の第1四半期決算は15.4%営業増益に対して、ハローズも第3四半期までの累計で19.5%営業増益と両社増額修正のトレンドにある。
同社のもう一つの特徴に通常よりかなり安い価格で販売する、異常値販売というものがある。同社では恒常的にメーカーから処分品をかなり安い価格で引き受けて、セールで売り切ることを行っている。多くの食品スーパーは在庫水準を抑えて、資金回転を速める経営を行っているが、同社では安値であれば過剰な在庫も抱えるという経営手法をとっている。そのために、40フィートのコンテナが70本入る冷凍倉庫も保有しているほどである。
このように同社の食品スーパーとしての展開はかなりユニークである。この背景にあるのが、圧倒的な生鮮のマーチャンダイジングの強さにあると考えられる。これはもともと食肉に強い同社が、それ以外の生鮮の青果、鮮魚、総菜などに強い企業を次々買収して、事業部ごとに縦割りで店舗を運営していることによるものである。
同社の店舗展開は、これまで子会社の肉のハナマサを除けば関東圏の郊外が中心であった。関東一円に展開するホームセンターのジョイフル本田のショッピングセンター内に生鮮館を13店舗、東京23区以外の関東圏に単独で出店する卸売市場を8店舗、北関東で子会社が展開するパワーマートを5店舗、そして東京23区内を中心に展開する業務スーパーの肉のハナマサを50店舗運営している。
同社の生鮮の集客力は強力で、何もないところにジョイフル本田がショッピングセンターを開設し、同社が核テナントの一つとして入ることで、集客力が高まる。その結果、そこに街が出来上がり、その後に様々な業態が進出してくる。
千葉県印西市の例を挙げると、ジョイフル本田が2002年12月に千葉ニュータウン店を開設した。その後、数年内にその地域にカワチ薬品、USシネマ、ケーズデンキ、カスミフード、ヤオコーなどが続々とオープンしたようである。
なお、同社では今年の6月から新たな取り組みとして、錦糸町丸井店のリニューアルに合わせて、地下に生鮮棺の出店を予定している。関東近郊で成功した同社のマーチャンダイジングが都内で通用するのかどうかの極めて重要な試金石となる。
有賀の眼
同社のコア技術は食肉分野における特徴のあるマーチャンダイジングである。内容としては、徹底的に安くという手法である。しばしば、加工食品では安売りを行う企業は多い。しかし、加工食品の安売りは真似されやすいという欠点がある。また、加工食品の場合、同じ商品が他店にもあり、安いだけでは徐々に新鮮味が落ちてしまう欠点もある。
これは加工食品というNBを扱っている致命的な欠点である。かといって、日本では食品はNBに対する顧客のロイヤリティが高いため、PBの多くは失敗してしまう。イオンやダイエーのPBの失敗が典型的である。その点、100円ショップがいまだに成長しているのはPBが中心であるためだ。食品の扱いもあるにはあるが、主要商品という位置づけではない。
その点、食肉もNBがない世界であり、ある面考え方次第では独自性を打ち出しやすい。加えて、食肉だけではやや弱い面を鮮魚、青果4、惣菜の専門店を引き入れることで生鮮3品+惣菜で独自性を打ち出し、他の食品スーパーとはまた違った強みを強化している。
さらに、異常値販売という通常のスーパーでは打ち出しにくいゲリラ的な戦法を特徴としている。先にNBの価格破壊は飽きられやすいと述べたが、商品が入れ替わってゆく場合にはその限りではない。その点に関しても、目の付け所がいいのではないかと思われる。
多くの成長企業に共通することではあるが、消費者に価値を見出してもらえる事柄で独自性を発揮し、M&Aで幅を持たせ、ゲリラ戦法で目先を変えるという工夫を積み上げて成功していることは、大いに見習う点があろう。