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経済・株式・資産

第39回 外部環境変化を素直に受け入れて、成長軌道に回帰する:「サイゼリヤ」

深読み企業分析

2010年8月期をピークに大きく落ち込んできたサイゼリヤの業績が勢いを取り戻しつつある。2010年8月期に144億円に達した営業利益は2014年8月期には55億円まで減少した。それに対して2015年8月期に36.9%増となった営業利益は2016年8月期第3四半期までの累計値では17.5%増と好調を継続している。
 
ピーク利益に比較すると回復したと言っても、まだまだ道半ばと言える水準であるが、会社経営の方針が大きく変わったことで、今後も順調な回復軌道をたどるのではないかと思われる。
 
 
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この10年ほどの同社の営業利益の推移を見ると、2004年8月期には48億円に過ぎなかったが、2009年8月期には92億円と順調に拡大した。そして、2010年9月期には144億円と大幅に増加するが、これはブーム的な動きでありやや異常値と言えるものであった。当時はリーマンショック後の不況下にあり、低価格外食店が脚光を浴びた時期である。同社のみならず王将フードサービスなどでも客数が大きく伸びて高水準の利益を上げた。
 
その後はすでに述べたようにその反動もあって低迷が長引いたわけであるが、当時はあまりのブームに会社側もやや考え違いをした可能性がある。つまり、低価格でメニューを提供する形の完成度が高まって、競争優位性が絶対的なものになったという考え違いであろう。競争優位性に関してはある面は間違っていなかったかもしれないが、外食は必ずしも価格だけではなく、種類別のベースになる需要があり、ブーム期にそれ以上を取り込んでしまったというものである。
 
そのような環境把握の間違いから、同社ではその後、新規出店数を加速させている。しかし、結果的にその間営業利益は大きく落ち込むことになった。そして、その反省からこの2期間は出店数を抑制したことで、収益は大きく回復し始めている。ちなみに、2008年8月期から2014年8月期までの6年間の店舗増加率は年率4.7%に達したが、この2期間は年率0.5%に急減速している。
 
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有賀の眼
 
さて、このような経緯を見ただけでは、実はそれほど評価すべきことなのかと疑問を感じる人もいよう。しかし、このところ上場企業にはこのような戦略を決して守りのスタンスで取るだけではなく、確信犯的に行っている企業が目につく。この背景には上場企業の収益性に対して、投資家の目が厳しくなってきたということがある。しかし、それは決して悪いことではなく、むしろいい面が多いのではないかと考えられる。
 
売上高を増やすことが、利益を増やすことの最善策であるということは、かつての日本であれば、それほど間違った考え方ではなかった。しかし、現在の日本を考えれば、利益の伴わない売上を増やしても、それが利益に結び付く可能性はかなり低下していると言えよう。もちろん、全く新規市場で、最初に利益を犠牲にしても市場を押さえたものが勝つという市場は依然存在する。しかし、多くの成熟した市場にはもはやそのような市場はほとんどないと思われる。
 
むしろ、人手不足が深刻な日本において、多くの人手を使用しながら、収益性の低いビジネスを行っている企業には存在価値がないとも言える時代になってきたのである。
同社はすでに1,000店舗を超える店舗網を築き上げたわけであるが、それはイコール10万人に1店舗のビジネスモデルは完成したと位置付けられよう。しかし、5万人に1店舗のビジネスモデルに昇華しきれていなかったため、1,000店を窺う段階で失速したと考えられる。
 
もちろん、ここでは触れていないが、次の戦略が見えているので、国内においては店舗数を増やすより、既存店の売上を増やすという戦略にシフトできたという背景はある。同社にとっての次の戦略は海外市場である。すでに同社の場合2015年8月期で海外の営業利益構成比は40%近くなっているため、安心して国内で規模より収益を追求するスタンスをとれるというものである。ただし、海外の収益ウエイトが40%ではあるが、この数年で言えば、海外が急成長したことは確かであるが、国内の利益が落ち込み過ぎたという面の方が大きかった。結果として海外ウエイトが急上昇したが、今後は国内の利益回復のピッチが上がり、海外の利益ウエイトはむしろ下がり気味となるかもしれない。
 
現在の日本においては、正社員、パートの別なく、社員を集めることは至難の業である。特に人が付加価値の源泉となる業態であれば、儲からない売上を極力減らすことは、極めて重要な企業戦略と位置付けられる。現在はまさに、売上を増やせば利益がついてくるという幻想を捨てて、改めて儲けの中身を考え直す時期と言えよう。
 

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