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健康

第20号 3大疾患~予防のココロ(2)がん

おのころ心平の ──社長のための「か・ら・だマネジメント」

 閾値。いきち、と読みます。
 あまり聞きなれない単語ですが、カラダと健康を考える上ではとても大事な言葉です。

 【閾値】

 1.生体の感覚に興奮を生じさせるために必要な刺激の最小値。しきいち。

 2.ある刺激の出現・消失、または二つの同種刺激間の違いが感じられるか感じられないかの境目。また、その境目の刺激の強さ。

 これ以上食べたら、おなかこわすなー、

 これ以上冷やしたら、風邪ひいちゃうなー、

 これ以上圧力かけたら、骨折するなー、という「閾値感覚」。

 これは、誰しも持っているものですね。

 現在、CTやMRIでは、部位にもよりますが、0.8mm~1cm大のがん病巣を見つけることができるそうです。でも、1cm大のがん病巣になっている時には、すでに数億個のがん細胞の塊になっています。

 1個のがん細胞ができたくらいじゃ、がんとは診断されないんですね。というか、そのレベルでは診断で見つけられない。

 がん細胞が分裂し、ある程度の塊になって、しかもそれが「見つかった」ときに、はじめて「がん」という病名が生じるのです。

 1個のがん細胞というのは、ほんとうにちいさな存在で、肉眼では見ることができません。

 重さはというと約1ナノグラム(ng)ほどです(ナノグラムは、1グラムの十億分の一の重さを表す単位)。

 1個のがん細胞が約100日の一定のスピードで、細胞分裂を繰り返したと仮定しましょう。がん細胞が2個に分裂し、2個が4個、4個が8個、8個が 16個・・・と増えていきますが、そうすると、約30回分裂したところでがん細胞は、なんと10億個になります。

 がん細胞1つが1ナノグラムなので、1グラムのがんの塊の中には10億個のがん細胞があることになります。(実際のカラダの中のがんの重さは、血管や結合組織などの重さも加わりますから、厳密な数値ではありませんが)

 上の例では、分裂の周期を100日計算にしていますから、最初のがん細胞1つから、約3,000日かけて1グラムのがんに成長するということになります。3,000日というと、8年2ヶ月くらいです。

 また、がん細胞って1個だけ発生するとは限りませんね。ストレスや、発がん性物質、紫外線に電磁波…、がん細胞の発生は避けられない環境で私たちの生活は成り立っているわけですから、まったくがん細胞が発生しない人もいません。実際、私たちのカラダには、日に3,000~5,000個のがん細胞ができていると言います。

 つまり、理論上は、確実にがんは発生し、それから少なくとも8年以内にみんな、がん検診でひっかかるということになるんです。

 恐いですね。なーんて、ご安心ください。私たちのカラダって、そんなにやわじゃない。

 NK(ナチュラルキラー)細胞ってご存知ですか?私たちのカラダの中では、これらをはじめとする免疫細胞が、がん細胞をちゃーんと掃除してくれています。だから、あなたのカラダにがんが発生したとしても、理論どおりに増えはしません。

 さあ、ここで大切になるのが、冒頭の「閾値」です。ある刺激の出現・消失、または二つの同種刺激間の違いが感じられるか感じられないかの境目。

 がんなのか、がんでないのか?

 がん細胞というレベルで見る限り、私たちはみんな、がん患者です。日に3,000~5,000はできるわけですからね。また、たとえがん病巣を形成したとしても、それは免疫細胞との拮抗の中で、大きくなったり、小さくなったり、常に変化しています。

 がんは発生したが最後、どんどん大きくなってしまう・・・この考え方では、早期発見、早期治療に越したことはない。そして、見つけたら、即、切り取る(手術)か、化学兵器でたたく(抗がん剤)か、焼き殺す(放射線治療)かをしなくてはならない、ということになります。

 でも、待ってくださいね。もし診断技術が高度に発達して1,000個レベルのがん細胞を発見できるようになったら、私たちはみんな、「がん」と診断されることになってしまいます。別にこれといった自覚症状はないのにですよ。その時、甚大な副作用をもつ抗がん剤や放射線治療をみんなが受けるべきでしょうか?

 今、アメリカでは、がんによる死亡率というのが、年々減少傾向にあるそうです。

 それは、アメリカにおけるがん治療に変化が生まれているからです。

 (1)抗がん剤治療や、放射線治療について、有効性・安全性に対する訴訟が起き、国の研究機関や病院側も、抗がん剤・放射線治療をがん治療のone of them にし始めている。

 (2)免疫療法や各種の代替医療も取り入れ始め、NK細胞等の活力をあげていく治療が増えた。

 (3)食事療法や栄養療法を積極的に取り入れ、ライフスタイル改善指導を徹底し始めた。

 アメリカでは、カラダにもともと備わっている免疫活性の方にシフトし始めた結果、実際にがん死亡率が減少している。これは本当に大きな成果ですよね。

 一方の日本では、あいかわらず、がんが死因のダントツの第1位。昨年34万以上の死者が出ており、これからも増加の傾向が予想されています。

 この違いは、「がん」というものに対する根本の考え方にありそうですね。がん細胞が発生しないようにする。これは、理想的な暮らしかも知れませんが、現実的ではありません。

 まったく発生を防ごうと思ったら、文明とはいっさい縁をきって南の島で無人島暮らしをしなくちゃいけなくなります。また、がん細胞はひとつでも発生したら、もう後戻りできないというのは思い込みなんですね。

 がん細胞が増えないようにする。

 これは現実的です。少なくとも、無意識のうちにみんなやっていることなのです。自律神経系に交感神経(緊張)と副交感神経(緩和)があるように、がんが発生するなら、がんを

予防する力もカラダには備わっています。

 そのバランスが崩れた時、つまり、「これ以上は、もう、がんを縮小させられない」というがんに対するカラダの閾値を越えたときこそが、ほんとうの「がん」です。私は「診断上のがん」よりも、こちらの方がもっと重要だと考えます。その閾値は、診断上のがんより前の段階かもしれないし、後かも知れない。

 アメリカでのがん死亡率減少とともに、再度、脚光浴びている「ゲルソン療法」の開発者、マックス・ゲルソンの遺した言葉に、次のようなものがあります。

 「がんは、妊娠とおなじようなもので、かならず治るものだ」

 がんと妊娠をいっしょにするのはちょっとどうかと思いますが、多くの末期がんを救った療法の開発者の言葉。がんに対する思い込みを変えるには、一面をついているな、とも思います。

 がんにならないようにする、より、がんになっても大丈夫へ。

 がんが特別な病気でなくなる日がくるためには、ひとりひとりが、がんに対する閾値感覚を磨くこと、そして、よりナチュラルな治療法を選択する人が増えることがカギのようです。

 

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