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社長業

第3回 「感謝のルーチン」を持つ

繁栄への着眼点 牟田太陽

 自分の身体が、自ら食したモノで100%でできているのと同じで、毎日の習慣が自分をつくる。しかし、それを日常的に意識している者は少ない。
 「明日から」「来週から」などと習慣を先延ばしにしていないだろうか。「来週から」と51回言えば一年経ってしまう。あっという間だ。 起床、出社、午前、昼、午後、夕方、夜、寝る前…当たり前のように毎日を過ごしているが、実は「会社があること」「社員がいること」「お客様がいること」「先代がいること」これ自体が感謝すべきことではないか。
 今の時代、何処の会社の事業発展計画発表会に参加しても、必ず「お客様第一主義」と謳っている。しかし、社員への感謝、先代への感謝がない者が、お客様を大事になどできるわけがない。 「販売の鬼」と言われた田中道信先生が先日亡くなられた。 私のことをとても可愛がってくださり、思い出も尽きない。感謝してもしきれない。
 リコーに入社してわずか三年でトップセールスマンになり、40歳で取締役に就任、取締役事業本部長、リコー教育機器
社長、華々しい経歴だ。そんな道信先生も、一度挫折を経験している。 「君は明日から出社しなくていい」
 飛ぶ鳥を落とす勢いできた絶頂期に、社長に自宅に呼ばれ言われた一言だ。
 「君は抜きん出て手腕があり、リーダーシップもあり、経営力がある。それは誰もが認めるところだ。しかし、君の欠点は人の道、人の心がまるでわかっていないことだ。そのことをわからないでいる君をこれ以上会社に置いておくわけにはいかない」自宅待機を命ぜられた。そこから四年間の冷や飯生活が始まった。
 今までの自信が音を立てて崩れた。
 人間というものはなんともろく、弱いものなのか。
 「何十億円、何百億円という巨額な金を自分で動かしてきた。何百人もの社員を使ってきた。しかし、それはリコーという大きなバックがあったからだった。リコーという大きな組織の中で自分は生かされていたのだ。
 「人に生かされている」と気づくと、感謝の心が生まれた。
 左遷をした館林氏を恨んでいた自分を恥じた。創業者である市村氏が館林氏を社長に選んだのも、それ相応の実力を買われたからに違いない。その館林氏という社長を自分は生かそうとしなかった。だから館林氏も自分を生かしきれなかった。
 人の協力があってはじめて、自分が成功することができるのだ。自分が変われば、人も変わる。相手は自分を映す鏡だ。
 四年後、市村夫人に呼ばれ、当時業績不振であった三愛の建て直しを頼まれた。その復職は、周囲の人々からの働きかけであった。
 「感謝の習慣」ができれば人も会社も変わる。
 「感謝」を感じる瞬間は、実は日常のいたるところに隠れている。
 それに気づけるのか、気づけないのかで人生は大きく変わる。気づける人は、それを他の人にも自然と「して差し上げられる」ようになるものだ。
 小さい頃、祖母に何度も聞かされた話だ。
 豊臣秀吉は、真冬の朝、信長の草履を見て自らの懐に入れて温めたという。私もそのようなことに気づける人間でありたいと思う。
※本コラムは2019年4月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

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