9月に入りました。皆さんはこの夏を振り返って、いかがでしたか。私は今夏、いくつもの場所に足を延ばして取材を続けてきました。
東北の秋田や山形では、それぞれの地域産品をめぐる取り組みを学ぶことができましたし、米国のハワイでは、ワイキキに登場してまもないカプセルホテルが人気を得つつある様子を確かめてきました。その話は前回のコラムで綴っています。
で、もうひとつ、ある交通機関の復活を見るためだけに日帰りで出張しもしました。訪れたのは大分でした。今回はその話をお伝えしましょう。

ホーバークラフトです。
今年7月26日、大分空港と大分市内を結ぶホーバークラフトが運行開始となりました。以前も存在していたのですが、船体の老朽化や搭乗率の低下によって2009年に廃止となっていました。
それが16年ぶりの復活です。大分空港からの公共交通機関はバスだけとなっていましたが、大分の市街地までは片道60分前後かかり、道路渋滞によってはそれ以上となっていたことを、大分県が懸念。道路渋滞の心配がない海路の価値を見直した結果です。
今回の復活にあたっては、県がホーバークラフトを所有して、民間企業が運航を担うという上下分離公式を採用しています。2023年度のスタートを期していましたが、訓練時のトラブルなどにより、運航開始が遅れていました。

現在、世界でホーバークラフトの定期運航便があるのは、英国と、復活なったこの大分の2カ所だけと聞きます。その希少性にも惹かれ、空港路線が再スタートとなった数日後、私は大分に向かいました。一般客としての体験です。
大分市街地側のターミナルは、西大分地区にあります。上の画像がそれです。とても美しい空間の建物で、なかなかに心躍ります。期間限定とは聞きましたが、地元のカフェが営業していました。

ホーバークラフトに搭乗する位置は陸地です。船体が陸に上がっている状態で乗り込んで、その後に着水して海を走り抜けていく。
西大分ターミナルでは、搭乗時や下船時、ホーバーを格納する大きな艇庫の真ん前を歩いて通っていく流れとなっていました。これがまた心躍ります。現在、県が所有するホーバーは3隻あり、この日は艇庫に2隻が待機。それらを見上げながら進んでいきます。

ホーバーの内部です。座席は全部で80あります。配列は2−4−2。シートの前後間隔(シートピッチ)は航空機のエコノミークラス座席と同じくらいの印象でした。
さほど広いわけではありませんが、左右の窓が大きくとられているので圧迫感はなく、空間としての快適性は一定に確保されていると言っていいかと思います。

走り出しました。
ホーバーというのは実に楽しい乗り物なんだと、改めて認識した時間でした。スマートフォンのアプリで速度を測ったら、最高速度は84km/hほど。着座位置が海面に近い低さなのもあるのでしょう、凄まじい速さと感じさせる。「前に進んでいます、一所懸命に!」とでも言わんばかりの疾走でした。
ホーバーは船体を空気の噴射で浮かせて、後方の大きなプロペラで推進させる仕組みですす。乗る人によっては、運航中の細かな突き上げ、あとは船内に響く爆音が気にはなるかもしれませんが、力感あふれる走りに私は魅力を覚えました。

大分空港側のターミナルに着きました。写真は空港ビルを出たばかりの場所から撮影したものです。ホーバーのターミナルはほぼ隣接と言って差し支えない位置にあり、船体が待機しているのが見通せるくらいの近さです。
ここで、大分空港と大分駅を結ぶバスと、復活となったホーバーの料金や所要時間を比べてみます。バスは先ほどお伝えしたように約60分で1600円。ホーバーだと35分に短縮され、事前ネット決済なら2000円。ただし市内のターミナルと大分駅の間は、いま実証運行する無料シャトルバスで11分かかります。それを含めると時間上の差は小さくなる。とはいえ、ホーバーには道路渋滞の心配がないのが利点です。あとは天候による欠航が不安要素とはなる。ホーバーは高波がある状況では運航できませんので。
7月下旬、実際に登場してみて気になったことがありました。復活直後だというのに座席は半分埋まっているかどうかという状況でした。人気沸騰かと思っていましたから、正直ちょっと肩透かしだった。
地元紙の報道によると、復活から1カ月間の平均搭乗率は40%程度だったといいます。課題はおそらく2点。まず、認知度をさらに上げること。もうひとつは、現在の1日4往復という運航体制からの増便を期すこと。現地でターミナルのスタッフに聞いたところ、夕刻以降などの増便にあたっては、夜間運行のための免許を取得する必要があるそうです。現在、そのための準備を急いでいる状況にあるらしい。
ターミナルでの対応や、ホーバーの運航を担うスタッフは皆、とても熱意にあふれ、親切でした。せっかく復活となったホーバーであり、前述のように世界的に見ても希少な存在でもある。地域に根づく観光資源としてのヒットを飛ばせるよう、私は応援し続けたいと思いっています。
























