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第35号 「この新幹線は安全です」のアナウンスは流れない

会社を守り抜くための緊急対策

 安易に人を信用してお金を出し、この商品は安全だと安易に投資をする人が本当に多いので、今回と次回で、安心・安全、信用・信頼について考えてみることにします。
 実はこの「安心・安全」と「信用・信頼」がとても曲者なのです。
 もはや安心・安全などない社会になってしまったのかもしれません。そして私たちは国に対する信用・信頼がなくなったのかもしれません。
 震災・原発以降、このような言葉がメディアから流れてきます。
 新幹線で300キロのスピード出しても、「この新幹線は安全ですのでご安心下さい」というアナウンスは流れてはきませんし、乗客も不安にはなりません。
 しかし、飛行機ではどうでしょうか。
 乗りなれている人でも、やはり、一回のフライトで不安になることが一回はあると思います。
 気流が悪く揺れが発生したときは「揺れが発生していますが、この飛行機は安全であり、飛行には何の支障はございませんのでご安心下さい」とアナウンスが流れてきます。
 確かに大きく揺れたら不安になります。安心できません。だから、安心してもらう為に「安全」という言葉を使う必要があります。
 この「安全]という言葉の持つ意味。原発事故で再認識した人も多かったでしょう。
 原発は、本当は不安なので「安全」という言葉を使う必要があったのです。本当に安全ならば、東京のど真ん中に原発を作ればいいのでしょうが、決してしません。
 安全神話など、もともとあるはずがないのでしょう。
 ですから、「安全」という言葉を使用しているということは、実は安全ではないことを物語っているのです。
 「安全」とは、科学的裏づけに基づいて害のない状態をいいます。
 一方、「安心」は、人によって受け取り方が異なり、主観的な心の状態を表しています。
 例えば、ある農作物に基準値以下の放射性物質が検出された場合、科学的には「安全」な食材と言うでしょう。しかし、検出されただけで不安に思って食べない人もいれば、基準値以下だからと「安心」して食べる人もいます。
 安心は主観的な問題なのでみんな違うものです。だから、トラブルが発生してくるのです。
 「安心してください」と言われて安心するものではないということをもっと深く考えるべきです。
 あるスーパーでのお話し。
 3.11直後、スーパーでも食品が安全かどうか、顧客が不安な時、いくら顧客に「これは安全です」と訴えても無理なのです。
 そこでそのスーパーは、放射線量計を購入し、実際に顧客に計ってもらったのです。
 万が一、線量が高ければお店にはリスクになります。しかし顧客の不安を解消するためにはそれしかなかったのです。後は実施する勇気です。
 もちろん、店側で事前に線量を計っておくことも必要でした。
 もともと線量が高ければ棚に置くわけにはいきませんし、それ以上に、顧客が放射線量について疑心暗鬼になっていましたから、納品前の線量結果を鵜呑みにすることなく、再度、顧客のために、全品検査をしたのです。
 線量計がゼロでなければ購入しないか、安全圏内ならば購入するか、顧客に判断を任せるしかありません。
 不安な人に安全ですと何度言っても逆効果なだけです。
 少しでも線量があれば、子供を持つ親は購入しません。しかし自身で計るという行為により、安心感につながったことは確かです。
 子供の命を守る親は必死なのです。その人には、線量ゼロのものを探してあげることも大切なことです。
 それを見た高齢者の人から「この店は、年寄りは早く死んでもいいという考えなのか」と罵声を浴びたこともありました。
 この様な場合はひたすら謝るしかありません。下手にゼロのものを選定しますと、収拾つかなくなることは分かっています。
 人はみな違いますし、同じ人でも1分前と今では違うこともあります。
 中には、安全圏内ならば、少しでも被災地の役に立てればと思っている人もいます。先ほどの高齢者がそうでしたが、豹変してしまいました。
 被災地の役に立ちたいという思いは本当だったのでしょう。そこまで嘘だとは思いません。それ以上に、いくつになっても自分の命は一番大切だということです。
 ですから、「これをすれば全てが解決する」ことは社会生活にはないのです。だからと言って何もしないことはもっといけません。
 失敗とは「何もしないこと」です。
 だからこそ、すべての事業はサービス業という精神を持ち続けることが大事になるのです。
 専門家の中にも安心してくださいと言われる人もいますが、その前に、専門家に対して信用・信頼が必要なのです。
 何も言わなくても、安心感を与えられる人こそ、本当のプロなのでしょう。
 自分自身で安心してということ自体、胡散臭い気がします。注意した方がよさそうです。

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