会社の脱税の手口は売り上げを抜くことと、経費を水増しすることとよくいわれますが、外注・仕入先の請求金額を水増しして裏でキックバックしてくれと頼めば、その取引先の税負担が重くなるので容易には要求に応じてもらえず、結果として、架空の請求書、架空の領収書の発行という方法にたどりつきます。
ところがこのての外注・仕入れの書類の捏造はその書面をみれば捏造したなと思われる体裁をしているものです。
さらに外注・仕入先が知らないところでおこなわれていることゆえ反面調査がおこなわれれば即座に水増しの事実が発覚します。
それゆえに、販売原価、製造原価とは関係のないところで、領収書の捏造がおこなわれるケースが多くなります。
具体的に言えば損益計算書でいえば販売費及び一般管理費の部分の科目が該当します。
チェーン店でない居酒屋の領収書で手書きのものが経費の水増しのために使われることがあるのはこれゆえです。
売上の除外についても同じようなことが言えますが、いっけんバレないような方法を使うケースを見たことがあります。
それは、めったに取引が発生しない単発の取引先に対して通常の取引の請求書を発行して、入金口座だけその会社のオーナー社長の口座にするというものです。
この場合、反面調査をしようにも単発の取引先の為、請求書、納品書が表に出てこなければ取引先の名前がでてこず、かつ、会社の預金通帳をいくら調べてもその取引先からの入金履歴がないためバレにくいとオーナー社長は考えるようです。
ところが、そんなことは税務署は百も承知で、会社の税務調査にはいった場合に法人口座の提示だけでなく社長の預金口座の通帳も見せてくださいと税務署員が言い、社長が動揺することでなにかあると勘繰られてしまい調べられて脱税がみつかるということになります。
法人の税務調査の場合、社長の預金口座の通帳提示を求められても原則として見せる義務はないそうですが、社長と法人で金銭のやりとりなど事業に関係した取引を行っている場合は、提示義務があるそうです(注1)。
たとえば、社長から会社への貸付がある場合などはこれに該当してしまいます。
ただ、仮に社長個人の通帳の開示を拒んだところで
「pipitLINQ」という預貯金等照会業務のデジタル化サービスが稼働しているので
銀行が特定できればかんたんに調べることができてしまいます。
税務署の調査権限と調査能力は絶大です。それゆえ脱税ほどわりにあわないものはないのです。
(注1)
国税通則法第七章の二 国税の調査
(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)
第七十四条の二
国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、 消費税に関する調査(第百三十一条第一項(質問、検査又は領置等)に規定する犯則事件の調査を除く。
以下この章において同じ。)を行う場合に限る。)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について 必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(税関の当該職員が行う調査にあつては、 課税貨物(消費税法第二条第一項第十一号(定義)に規定する課税貨物をいう。第四号イにおいて同じ。) 若しくは輸出物品(同法第八条第一項(輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税)に規定する物品をいう。
第四号イにおいて同じ。)又はこれらの帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。 次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。
参照元:上記根拠条文
税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け) 国税庁ホームページ 問7