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第97話 想定外の客層をつかむ!

北村森の「今月のヒット商品」

皆さんは旅に何を求めますか。まだ見たことのなかった絶景? おいしい料理? そのほかもちろん、昼夜、その空間に身を置いて満足や驚きを得られるホテルというのも大事な要素になるかもしれませんね。

今回はホテルの話です。今年4月に新規開業した一軒で、その街では過去になかった初めてのカテゴリーであるとして注目を集めています。

私、先月、そのホテルに一般客として泊まってみることだけを目的にして出張してきました。弾丸旅行のような慌ただしい旅程となりましたが…。

 

 

場所はどこかといいますと、米国ハワイのオアフ島、ワイキキです。

ここに登場したのが、ハワイでも初めてといわれるカプセルホテルです。日本ではもう定着している存在ですね、終電を逃してしまった夜、あるいはお金を節約したい出張や旅行でとても助かる宿泊場所として一定に人気があります。

わざわざハワイに旅して、どうしてカプセルホテルなど選ばなければならないのか、と思われるかもしれません。でも、ちょっと考えると、その意味はご理解いただけるはずです。

ここ数年の円安、さらには物価高で、超人気旅行先であったはずのハワイは日本人にとってずいぶんとハードルの高いものとなってしまっています。私自身、3年前に出張したとき、食事ひとつにも難儀しました。現在はさらにあらゆるものの値段が上がっている状況にあります。

ワイキキ周辺のホテルは最低でも300〜400ドルはしますから、1泊4万5000円以上は覚悟しないといけません。高級ホテルになると7万円超えは当たり前で、10万円超えというところもある。

ワイキキにカプセルホテルができたと聞いて、私は「これは私のための一軒かも」と思いました。ハワイに行けさえできればいいんです。ホテルはとりあえず寝られればいいかな、と…。

開業したカプセルホテルは「ファーストキャビン インターナショナル ハワイ」といいます。その名でピンときた人も多いでしょう。日本国内の空港などにカプセルホテルを展開するファーストキャビンHDによるハワイ進出です。

 

 

実際に泊まってみました。場所はもういうことなしでしょう。ワイキキの中心、カラカウア通りにあって、真向かいが人気商業施設のロイヤル・ハワイアン・センターです。ファーストキャビンは、1階にファストファッションのH&Mがあるビルの14階にありました。

カプセルのタイプは3つあります。まず、ベーシックなタイプで上下2段になっているタイプ。次に、1段構造で天井高がしっかりと確保されているタイプ。最後が、やはり1段構造で、さらにベッド脇にサイドテーブルが備わるという、ビジネスホテルの客室をそのまま小さくしたようなタイプです。

7月の時点では、最も安いタイプだと1万5000円台で泊まれました。現在は宿泊日によっても異なりますが2万円強です。真ん中のタイプは、いまは2万円台後半からです。最も高いタイプは料金もそれなりにして3万円台半ばからといったところです。カプセルホテルとしては値が張るという印象ですが、ハワイの諸物価を考えると、これでもやはり安い。

私が予約したのは、その真ん中のタイプ(上の画像)で、7月時点では2万円ちょっとでした。今後もシーズンによっては、このようにより手頃な料金が提示される可能性はあるかもしれません。

 

 

カプセルホテルだけに寝るときの圧迫感を覚悟していましたが、この真ん中のタイプであれば、しんどさはまずなかった。それなりに快適に眠れ、不満はありません。実測ベースでいいますと、カプセルの左右幅は120cmあり、そのほぼ全面がベッドです。奥行きは210cmで、足もしっかりと伸ばせますし、天井高は210cm確保されていて、それが居住性を救っています。

ちなみにチェックアウト後にスタッフにお願いして、最も安いタイプのカプセルを実測したら、左右幅は130cm、奥行きは210cmですが、天井高は100cm。人によっては窮屈に感じられるでしょう。

最も高いタイプは居住空間に不足ありません。左右幅は210cm、奥行きは200cm、天井高は210cmでした。しかもそれぞれのカプセルの前にはワイキキビーチを遠景に臨むリビング空間も小さいながら備わっています。

カプセルホテルだけに洗面所やシャワーブースは共用で、パブリック空間を歩いて行く必要がありますが、これはまあそういうものと踏まえるほかありません。また。それぞれ個別のカプセルに外から鍵をかけることはできません。ただし、荷物を納める鍵付きのロッカールームが別にあります。アメニティとしては歯ブラシとタオル類は用意されていました。

 

 

宿泊した印象としては、少なくとも真ん中のタイプ以上であれば十分に滞在に耐えられるというものでした。フロントデスクの奥に、かなり広いラウンジスペースがあり、深夜でも早朝でも、寝るとき以外はそこでのんびりすごすことができるのはかなり大きい。ラウンジスペースでは無料Wi-Fiを利用でき、ウォーターサーバーを使ってお茶なども飲めますし、大きな窓からはワイキキの街やビーチを見おろせます。

最後に…。とても興味深かった話があります。このカプセルホテル、バックパッカー層が大半かと思ったら、そうではありませんでした。また、日本人もごくわずかでした。

宿泊客の多くは欧米人で、しかも大人が静かにすごしているという印象でした。これはそういうことなのか。

スタッフに尋ねてみたら、30〜50代が客層の中心を占めているとのことです。ホテルにとっても想定外の話だったらしい。YouTubeやTikTokなどで日本のカプセルホテルという存在に関心を抱いた欧米人が、ハワイにもできたのかと情報を知り、それで冒険感覚で泊まりにきているというのです。

欧米人にとってカプセルホテル宿泊は、節約のためとは限らず、むしろエンタテインメントとして捉えられているのでした。実際、星付きのホテルとこのカプセルホテルを泊まり歩いている客も少なくない、とスタッフから聞きました。

想定外の客層をつかんだとき、ヒット商品はえてして生まれます。その意味でも、この「ファーストキャビン インターナショナル ハワイ」は面白い存在に育っていく可能性があります。

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