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税務・会計

第55回 2023年10月施行 インボイス制度~事前準備すべき4つのポイント~

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 消費税のインボイス(適格請求書等保存方式)制度の開始まで、1年を切りました。

 

 事業者のインボイス制度への準備を促すために、国税庁から「インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート」が公表されています。

 登録編、売手編、買手編の3つに分けて、基本的な項目がまとめられています。

 

 こういったチェックシートを使って事前準備をしておくと、制度改正の対応漏れを防げますので、是非活用してみてください。

 

 そこで今回は、インボイス制度の事前準備について、説明します。

 

 御社は、インボイス制度の準備を始めていますか?

 

 

⚫️ポイント1:個人の取引業者のインボイス登録を確認する

 自社のインボイスの登録申請については、問題なく手続きが進んでいることでしょう。

 

 一方で、インボイスの登録に関して準備しなければならないのは、取引業者の対応です。

 

 取引業者がインボイス発行事業者でない場合、自社の消費税の負担が増えるからです。

 

 特に注意しなければならないのが、個人事業者と取引している会社です。

 

 建設工事業における一人親方、ソフトウェア業の個人プログラマー、デザイン印刷関係のフリーランスなど、業種によって定例または臨時に取引することがあるでしょう。

 

 個人事業者の取引先には、事前に次のことを連絡し確認しておきます。

・当社がインボイスを必要としていることを伝える

・インボイス発行事業者の登録申請期限が2023年3月末であることを案内する

・インボイス登録したら2023年3月までに登録番号を知らせてもらう

 

 個人事業者の多くは、インボイス制度について理解が不十分ですので、こちらから早めにアナウンスして、対応を促すようにします。

 

 ただし、取引業者に対して、インボイス発行事業者になることを強制することはできませんので、あくまでも事務的な確認作業になります。

 

 取引先の個人事業者とインボイス制度について話したことがありますか?

 

 

⚫️ポイント2:売り手としての準備

 売り手の立場では、インボイス発行事業者として次の3つのことを事前準備します。

 

 1つ目は、現在発行している請求書や領収書の様式変更の仕方を決めておきます。

 

 具体的には、請求書や領収書に「登録番号」「適用税率」「消費税額」をどのように記載するのかを決めます。

 顧客にとって見やすく不備がないように、社内で様式を統一します。

 

 2つ目は、様式変更にともない、請求書発行システムやレジシステムなどを改定する時期や予算を検討します。

 

 また、インボイスの控えの保存が必要になりますので、現在専用システムを利用していない場合には、この機会に請求書発行のクラウドサービス等の利用を検討します。

 

 インボイスの控えは、原本をコピーして紙で保存しなくても、電子データで保存することも認められています。

 

 3つ目は、請求書や領収書を発行していていない事業者の準備です。

 

 不動産賃貸業や保守サービス業などで、請求書を発行せずに口座振替等で支払を受けている場合は、賃貸契約書や保守契約書等に登録番号を掲載するか、事前に覚書きなどを取り交わしておきます。

 

 また、得意先側で「仕入明細書」や「支払通知書」を発行しているケースでは、相手先に自社のインボイス登録番号を通知して付記してもらうようにします。

 

 請求書・領収書を毎月何枚発行していますか?

 

 

⚫️ポイント3:買い手としての準備

 買い手としてのインボイス制度の準備は次の通りです。

 

 まず、仕入先や取引業者の登録番号を事前に確認します。

 

 先述のとおり、個人事業者への確認はできるだけ早く準備しておきましょう。

 なぜなら、インボイス登録しない事業者(免税事業者)に関しては、その後に個別に価格の見直しを相談することがあるからです。

 

 次に、会計システムをインボイス制度対応版へバージョンアップします。

 

 システム変更にともない、経費精算などの経理処理が変更になります。

 

 インボイスの登録番号の確認方法や消費税区分の設定方法などについて、事前に経理担当者に整理してまとめさせておきましょう。

 移行直前に対応すると、準備が整わずに、トラブルが発生するリスクがあります。

 

 最後は、受領したインボイスの保存です。

 

 少額の取引についても、原則としてインボイスの保存が必要になります。

 クレジットカードや電子マネーの利用明細は、インボイスに該当しませんので注意が必要です。

 

 原則として代金を受領した事業者が発行した領収書で、登録番号、取引内容、税率、税額の記載があるものだけがインボイスになるからです。

 

 社長の中には、飲食店などでクレジットカードや電子マネーで支払ったとき、レシートを受け取らない(なくしてしまう)ケースが見られます。

 毎回必ずレシートを受け取って、経費精算時に経理に提出する習慣を、今からつけておきましょう。

 

 受け取った紙の請求書や領収書の保存に関しては、原則としていままで通りで変わりませんが、電子取引やスキャナ保存を利用する場合は、運用ルールを決めておきます。

 

 特に電子取引については、2024年から電子データの原本保存が義務化されるので、証憑書類管理システムなどの導入も検討してください。

 

 インボイス制度の変更点を経理担当者は理解していますか?

 

 

⚫️ポイント4:インボイス制度の事前準備の状況を社内でチェックする

 今回は、インボイス制度の事前準備について、説明しました。

 

 事前準備のポイントは、次の3つです。

・個人の取引業者のインボイス登録状況を確認する

・売り手として請求書や領収書の様式を変更してシステム対応を準備する

・買い手としてインボイスの保存管理について電子化を含めて検討する

 

 取り急ぎ経理に指示して、顧問の会計事務所と一緒に、国税庁の「インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート」を使って、準備漏れがないことを点検させてください。

 

 社長としては、今月の経営会議の議題に「インボイス制度の事前準備」を追加するように指示しておきましょう。

 

 インボイス制度の事前準備をいつまでにやりますか?

 

 

 

(参考)

国税庁「インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0022009-057.pdf

 

国税庁「インボイス制度のサイトに説明YouTube動画」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm

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