国税庁の令和元年度の法人税の統計によると、全法人の65%が赤字決算でした。つまり、日本の3分の2にあたる企業が赤字です。
赤字企業の割合は、リーマンショック後の2009~2010年がピークで、全体の75%を占めていました。
それから約10年間で赤字企業の数は徐々に減り続けました。全体に占める割合は、10年間で約10%減少したことになります。
しかしこれは、コロナ禍前の数字です。
コロナ禍以降の赤字企業は、もっと増えることでしょう。
今回は「赤字決算」について考えます。
御社の直前期の決算は、黒字でしたか? 赤字でしたか?
コロナ禍で小規模企業がダメージを受けやすい理由
日本では、従業員が20人以下の小規模企業が全体の約9割を占めています。小規模企業は資本力が少ないため、経営環境が悪化するとたちまち大きなダメージを受けてしまいます。
経営が景気に大きく左右されます。コロナ禍が長引く状況では、赤字企業が増えることは避けられない見通しです。
御社は、赤字が何年間続いたことがありますか?
会社は赤字でもつぶれない
赤字経営から脱却できないまま事業をたたまざるを得ない状況に追い込まれてしまうと、いずれは倒産してしまうことになります。その一方で、赤字でも倒産せずに何年も続いている会社もあります。
会社は赤字でも倒産しません。資金が継続する限り経営は続けられます。
コロナ禍における経済政策の緊急融資制度を利用して、実質無利子無担保の借り入れをした会社も多いことでしょう。
今回の制度融資の目的は会社の存続ですから、赤字の会社でも融資が受けられました。借り入れた資金は使ってしまっているかもしれません。しかし当然ですが、融資ですから返済しなければなりません。最低でも、返済原資の分だけの黒字が必要です。
赤字が続いている会社に対しては銀行の追加融資は期待できないでしょう。
赤字でも会社は倒産しません。しかし会社を継続するためには、いつまでも赤字の状態ではいられません。
御社の赤字が続いたのは、最長で何年間ですか?
「繰越欠損金」を利用する
約3分の2の会社が、法人税を納税していません。法人税が課税される利益(所得)がないからです。
その事業年度が赤字であった場合だけではなく、黒字決算でも法人税を払わないケースがあります。会社の社長であればご承知のとおり、赤字は翌期以降10年間繰り越すことができるからです。これが法人税の「繰越欠損金」制度です。
たとえば、コロナ禍で1億円の赤字が出たとします。この1億円の赤字が翌期以降に繰り越されるので、翌期以降に利益が出たとしても、利益の累計額が赤字額の1億円に達するまでは、法人税は課税されません。
コロナ禍で赤字になってしまった会社は、しばらくの間「繰越欠損金」を使えば、利益が出ても法人税の支払いはありません。稼いだ資金をすべて、事業に使えるのです。
また、赤字決算の直前の期が黒字の場合は、赤字の分を直前期の黒字と相殺して、前期に支払った法人税の還付を受けることもできます。
コロナ災害による赤字の場合には、特例で直前の2期前までさかのぼって還付を受けることも可能です。
御社の「繰越欠損金」は、現在いくら残っていますか?
社長の決断と行動が、コロナ後の会社の将来を決める
コロナ禍が続くなかで、赤字企業の割合は再び上昇することは明らかです。そしてコロナ禍によって蓄積された日本企業の赤字が解消されるまでには、その後数年かかることでしょう。
コロナ禍の緊急融資で得た資金が残っている限りは、会社は倒産しません。問題は、ここから2~3年後の借入金の返済が始まるときです。
そのときに考えられるのは、3つのシナリオです。
●借入金を赤字補填で使い切って倒産する会社
●再度追加融資または返済猶予を申請する会社
●黒字転換が完了して予定どおり借入金を返済する会社
コロナ禍が収まるのを待っていたら、せっかく借りた資金もすぐに底をついてしまします。「無利息融資」と「繰越欠損金」を利用しながら事業を立て直し、赤字体質からの脱却が急がれます。社長の決断と行動が、2~3年後の会社の将来を決めるのです。
御社では、コロナ緊急融資の返済のめどはたっていますか?
(参考)国税庁「統計年報 法人税(令和元年分)」
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