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税務・会計

第56回 知っておきたい、インボイス制度のキホン

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 2023年10月から、消費税のインボイス制度が開始されます。

 

 税理士として、仕事で毎日のように様々な立場の人に対して、インボイス制度について説明しています。

 

 その中で、会社の役員や経理以外の管理職から、次のような質問を受けることがよくあります。

「そもそもインボイスって何ですか?」

「経理以外も関係ありますか?」

「なんで1年前から準備するのですか?」

 

 どうやら一般的には、インボイス制度はあまり理解されていないようです。

 

 そこで今回は、今更ですが、インボイス制度の基本的なことについて、説明します。

 

 インボイス制度について、ひと言で説明できますか?

 

 

⚫️インボイスとは?

 インボイス(適格請求書)とは、消費税の計算に使用する請求書のことです。

 

 正確には商取引についての消費税率や税額の明細を記載した書類のことですので、請求書だけでなく納品書や領収書、レシートなども含まれます

 

 このインボイスが、消費税を正しく計算するときの根拠を示す証拠書類となるのです。

 

 諸外国では、インボイスによる消費税の計算方式が標準であり、日本も遅ればせながら採用することになりました。

 

 インボイスを発行できるのは、税務署に登録している事業者だけです。

 

 インボイス発行事業者になるためには、原則として2023年3月末までに、税務署に申請をして登録番号を取得します。

 

 そして、2023年10月以降に会社が発行するすべての請求書や領収書に、インボイス登録番号を記載することになります

 

 買い手側は、登録番号が記載されたインボイスを受け取り保存することにより、消費税の計算ができるようになるのです。

 

 もし、インボイス登録番号を記載せずに請求書や領収書を発行した場合には、得意先に消費税の計算で迷惑をかけることになるので、注意してください。

 

 インボイス発行事業者の登録は完了していますか?

 

 

⚫️インボイス制度で影響を受けるのは誰?

 インボイス制度は、消費税を正確に徴収するための制度です。

 

 売上高が1千万円以下の事業者は、消費税の納税が免除されています。

 

 消費税を預かっても納税せずに、免税事業者の利益になっているので、いわゆる「益税」といわれています。

 

 このような消費税の徴収もれが、インボイス制度の導入によりなくなります。

 

 インボイス制度導入後は、免税事業者を消費税の計算過程から排除していきます。

 

 消費税を納税していない免税事業者は、インボイスを発行することができません。

 

 したがって、インボイス制度導入後は、消費税を納税していない事業者(免税事業者)から受け取った請求書や領収書は、消費税の計算では使えなくなるのです。

 

 消費税の計算は、売上にかかった消費税から、仕入や経費にかかった消費税を差し引いて、税務署に納税します。

 

 免税事業者からの仕入や経費は、消費税の計算上控除することができなくなりますので、結果として買い手側は消費税の納税額が増えることになります。

 

 免税事業者が消費税を納税しない分を、買い手の事業者が消費税を多く納税することになるということです。

 

 消費税の免税事業者は、個人事業者がほとんどです。

 

 インボイス制度の影響を最も受けるのが個人事業者なのに、その個人事業者の多くは、税金や経理の知識が乏しくインボイス制度の理解も不十分です。

 

 特に、会社と取引をしているフリーランスの人たちにとっては深刻な問題です。

 

 これから、多くのフリーランスが取引先の会社から、インボイスを要求されます。

 

 インボイス発行事業者(課税事業者)になることを要請されるのです。

 

 インボイスを発行しない場合には、取引が見直される可能性もあります。

 

 取引自体がなくなるケースや、取引価格が改定されるケースなどが予想されています。

 

 御社は、個人事業者との取引を見直しますか?

 

 

⚫️なぜ早めに準備が必要なのか?

 会社が発行する請求書や領収書について、インボイス制度に対応するのは簡単です。

 

 税務署にインボイス発行事業者の登録申請をして、登録番号を請求書や領収書に追加するだけです。

 

 販売システムや、請求書発行システム、レジシステムなどを改定すれば、準備完了です。

 

 一方で問題になるのは、取引業者の対応です。

 

 取引しているすべての業者に対して、インボイスの登録番号を確認します。

 

 すべての取引事業者が、インボイスの登録番号を取得するとは限りません。

 

 個人事業者の中には、インボイス発行事業者にならないことを選択する人もいるでしょう。

 

 免税事業者と取引を継続する場合、インボイス導入前と同じ金額で取引すると、会社の消費税の納税額が増えることになるので、取引価格の見直しが必要になります。

 

 何十人もの個人事業者と、それぞれ個別に対応が必要になる会社もあります。

 

 建設業、運送業、印刷業、広告業、IT産業等は、早めに準備をしておかないと、インボイス制度導入前後で混乱が生じることが予想されています。

 

 ケースバイケースで対応が異なるので、会社として取引の方針を決めて対応しなければなりません。

 

 取引担当者がインボイス制度を理解していないと、話がこじれて後々やっかいなことになりかねません。

 

 例外対応には、必要以上に時間が取られるものです。

 

 このような理由から、インボイス制度導入の準備は、1年前の今から始めるべきなのです。

 

 業者担当者はインボイス制度を理解していますか?

 

 

⚫️インボイス制度の基本を社内で確認する

 今回は、インボイス制度の基本的なことについて、説明しました。

 

 ポイントは、次の3つです。

・インボイスとは消費税の計算で必要になる請求書等のことである

・免税事業者と取引すると会社の消費税の負担が増加する

・個人事業者のインボイス対応を確認して今後の取引を検討する

 

 インボイス制度については、最近多くのメディアなどで報じられていますが、基本的なことを理解していない社会人も少なくありません。

 

 社長としては、経理に指示して、社員に対するインボイス制度の基本的な研修教育を実施するようにしましょう。

 

 商工会議所が発行している小冊子『今すぐ確認!中小企業・小規模事業者のためのインボイス制度対策【第2版】』が、研修資料としておすすめです。

 

 税金関係のことは経理に任せっきりにしてしまい、営業や仕入外注業者の担当部署のインボイス対応が遅れている会社をよく見ます。

 

 社長は、経理や顧問の会計事務所と相談して、インボイス制度の社内での対応方針を整理しておきましょう。

 

 社員の何%がインボイス制度を理解していますか?

 

 

(参考)

日本商工会議所 小冊子「今すぐ確認!中小企業・小規模事業者のためのインボイス制度対策【第2版】」

https://www.jcci.or.jp/chusho/202203invoice_booklet.pdf

 

国税庁「インボイス制度のサイトに説明YouTube動画」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm

 

コラム第54回  2022年10月4日号

第55回 2023年10月施行 インボイス制度~事前準備すべき4つのポイント~前のページ

第57回 インボイス制度導入前後に注意すべき3つのこと次のページ

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