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税務・会計

第26回 人材開発投資で「労働生産性」と「収益性」を上げる

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 どの社長も、本当に勉強熱心です。毎月、多くの本を読んで新しい知識を吸収し、研修会で能力を磨いて仕事に活かしています。
 その一方、社員教育は会社によって差があります。一般的に、大企業では定期的に従業員の能力開発を実施しています。しかし中小企業においては、教育訓練が疎かになっているケースが少なくありません。
 そこで今回は、「人材開発投資の重要性」を4つの観点から検討します。

御社では、人材をどのように育てていますか?

 

①「人的投資」は労働生産性と収益性にプラス効果がある

 企業の決算書を見ていると、設備投資やIT投資を増やしている会社をよく見ます。機械やコンピュータによって、生産性を向上させる意図が感じられます。それに対して、研修、教育など人材開発投資を積極的に行っている会社はそれほど多くはありません。
 社員研修についての調査研究結果によると、従業員に対して能力開発の時間と費用をかけることにより、労働生産性(社員一人あたりの付加価値)と収益性に対してプラス効果があることが示されています。
 特に労働生産性が低い企業ほど、人材教育を行うことにより、労働生産性が高まる傾向があるようです。
 労働生産性が高まるということは、社員一人あたりの仕事の効率がよくなり、同じ時間で稼ぐ利益が増えることを意味しています。つまり社員の能力を高めることにより、労働生産性が向上し、収益性が高まり、結果的に会社が儲かるわけです。
 会社の利益を生み出すのは、モノ(機械やコンピュータ)を使って働くヒト(社員)です。
社員の能力開発に、もう少し時間と資金を投入してもいいかもしれません。
 ちなみに、企業の社員一人あたりの平均的な人的資本投資額(研修教育費や人件費等)は年間約28万円(上場企業約36万円、非上場企業約25万円)だそうです。

御社ではここ数年、労働生産性や収益性に限界を感じていませんか?

 

②社員教育を怠る会社は離職率が高い傾向がある

 「働き方・教育訓練等に関する企業の意識調査」(内閣府、2018)によると、離職率が高い企業ほど社員教育の時間が少ない傾向が見られます。社員教育を怠っている会社では、社員は長く働いてくれていないようです。
 すぐに辞めるかもしれない社員に、積極的な人材教育をしようとは思わないかもしれません。しかし社員からすれば、働いても能力向上の見込みがない会社に長く勤めようとは思わないでしょう。
 会社が社員を育てるつもりがないのか、社員は育ててもらえないから辞めるのか、どちらが原因か分かりません。しかし、社員教育と離職率に相関関係があるのは確かなようです。


御社の社員の平均勤続年数は何年ですか?

 

③OJTとOFF-JTは目的により使い分ける

 社員教育の方法には大きく分けて2つあります。OJT(On The Job Training:職場内の業務を通しての訓練)と、OFF-JT(Off The Job Training:社外で実施される教育訓練)です。
 OJTは実務を行いながら職場の先輩が後輩に対して、現場の日常的な仕事について指導するものです。実践的なことを学べますが、先輩の仕事を見ながら時間をかけて体で覚えるので、スキルの習得に時間がかかります。教える側の個人差が大きく、先輩の実務経験の範囲でしか学べません。
 OFF-JTは、短時間で知識を体系的に学ぶことができるので、社内にない技能や、新しい知識を身につけるのに有効です。研修内容は汎用的なものですから、会社の状況によっては、すぐに使えるものばかりとは限りません。
 どちらの研修も一長一短があるので、仕事内容や社員レベルに応じて使い分ける必要があります。OFF-JTは研修のための時間と費用がかかります。ですから人員と資金に余裕のない中小企業ではOJTが中心になり、新しい知識の習得が不足する傾向が見られます。

御社では、OJTとOFF-JTの割合はどのくらいですか?

 

④直接部門と間接部門の人材教育格差に注意する

 社員教育と言っても、役職や職種、実務年数に応じて必要な知識とスキルは異なります。昇格に合わせた管理職研修や、仕事に直結する技能研修を実施する会社が一般的です。
 会社は、すぐに仕事に役立つ知識や技能、資格の習得を優先しがちです。その結果、直接部門である営業系や技術系の社員は研修を受講する機会が多くなるのに対して、間接部門の総務や経理の社員の中には、何年間も研修を受けていない人も珍しくありません。
 社員教育は本来、将来的な会社の成長を考えて、社員全員のバランスがとれたスキルアップが欠かせません。仕事の成果が上がっても、それを管理する間接部門の社員のスキルが追いついていないと、経営全体をうまく管理できなくなるからです。
 管理部門の社員のスキルが上がらないままでいるということは、社内の経営管理レベルが低いままで成長が止まってしまうことになりかねないので注意が必要です。

御社の直接部門と間接部門はともに成長していますか?

 

会社の成長に人材開発投資は不可欠

 今回は、人材開発投資の重要性を説明しました。自社の社員教育の取り組み状況について、次の4つの観点から点検してみてください。
(1)労働生産性と収益性が上がっているか?
(2)社員の定着率が落ちていないか?
(3)OFF-JTを適度に取り入れているか?
(4)会社の経営管理レベルは低くないか?
 人材開発投資は先行投資です。その成果が出るまで少し時間がかかります。1年後または2年後には、労働生産性と収益性が徐々に向上していくことを実感できるはずです。先行投資には資金も必要です。そのために、人材開発支援の助成金や節税制度などもうまく利用してください。
 現在のようにデジタル化など社会の変化が激しいときには、新しいマネジメント手法の習得や、専門知識の向上、スキルの再構築などが必要となります。社長が一人だけでがんばるのではなく、社員にOFF-JTで刺激を与えることも有効です。社長としては、会社の中長期的な成長を考えるうえで、人材開発投資もしっかりと計画に盛り込んでおきましょう。

御社の人材開発投資の年間予算はいくらですか?

 

【参考】
内閣府「平成30年度 年次経済財政報告」
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/18.html
内閣府「働き方・教育訓練等に関する企業の意識調査」(2018)
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