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税務・会計

第43回 値上げの春は要注意!
業績直結「コスト構造の点検」3つのポイント

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 春になり、「値上げ」に関するニュースが連日のように報道されています。
 社長としては、新年度の予算を見積もる段階において、世界的なパンデミックの影響がもうしばらく続くことは予想していたことでしょう。
 しかし、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー関連や穀物などの値上がりまで予測できていた経営者は少ないのではないでしょうか。
 想定外の物価の高騰を受けて、多くの経営者が頭を悩ませています。
 実際に企業取引の見積書や請求書を見ていても、仕入単価や経費項目の値上がりが散見されます。
 このような仕入れや経費の金額の増加は、業種によって差はありますが、様々な企業の業績に影響を及ぼしています。
 そして、こうしたコスト構造の変化への対応が遅れると、会社はすぐに赤字に転落してしまいます。
 そこで今回は、「値上げの春」を迎えて、業績に直結する「会社のコスト構造の点検の仕方・3つのポイント」を説明します。 

御社は今年、何社から値上げの要請を受けましたか?

 


①仕入単価の値上げが、粗利益にどれくらい影響するのかを点検する

 製造業や、卸売業、小売業にとって、原材料や仕入商品の値上げは業績に直結します。仕入値の上昇は、粗利益にダイレクトに影響するからです。
 海外から原材料や製品を調達している場合には、円安の影響もあり、上昇の幅はさらに大きくなっています。

 特に、売り上げに対する仕入れの割合が高い(原価率が高い)卸売業や小売業にとっては、仕入れ単価の値上げは死活問題です。
 例えば、80円で仕入れて100円で売る商売の場合、粗利益は20円です。
 原価率80%(仕入80円÷売上100円)で、粗利益率が20%(1―原価率80%)です。
 今月から、仕入値が5%上昇したとします。
 84円(80円×105%)で仕入れて100円で売ると、粗利益は16円に減ります。このときの原価率は84%で、粗利益率は16%になってしまいます。
 粗利益が2割も減少してしまうのです(値上げ前粗利益20→値上げ後粗利益16)。

 仕入れ値の5%の上昇は、一個一個の単価で見ると4円の差なので、一時的にはそれほど問題にはなりません。
 しかし、商売の粗利益が2割減ってしまったら(粗利益率が4%ダウン)、利益を残せる会社はまずないでしょう。
 最初は一部の原材料や仕入商品だけの値上げですが、それがいつのまにか多品種に広がり、値上げ幅も大きくなるかもしれないのです。

 仕入れ値が上昇した分だけ販売価格を上乗せできればいいですが、中小企業の場合には顧客側がなかなか販売価格の値上げを受け入れてくれないのがつらいところです。

御社では、今期は原価率の悪化をどの程度見込んでいますか?

 


②経費科目の‶小さな変化″を見落としていないかを点検する

 コロナ禍で、どこの会社でも出張費や旅費交通費、接待交際費などの経費の支出額は減りました。
 一方で、包装資材関連費用やガソリン代を含めた物流費は明らかに増加傾向にあります。また、電気代やガス代などの光熱費関係は今後もさらに値上げされることが予想されています。
 このように経常的に支出する経費の値上げは、ボディブローのようにジワジワと会社の業績を痛めつけていきます。

 怖いのは、経費の勘定科目の‶小さな変化”が見落とされがちな点です。
 社員は、経費が多少増えてもほとんど気にしていません。例えば電気代やガス代、ガソリン代などいろいろな経費が月に10,000円ずつ増加したとしても、経費の増加を問題視する社員はいないでしょう。
 増加した分をほかの経費の削減で補うことなく、予算を超過した経費が毎月消費されていきます。
 各科目の経費の増加額を合計すると1カ月で10万円になる場合、年間12カ月で120万円利益が減ります。
 これが支店、営業所ごとに経費が膨れ上がっていくと、積もり積もって大きな金額になり、利益をどんどん圧迫していくのです。

 当初予算で見積もっていた経費の額を上回って支払いが増加すれば、当然目標の利益は達成されません。
 このような‶小さな経費”の増加を見過ごしてしまう会社ほど、決算の時に赤字が出て後悔することになります。

御社では、今年になって支出額が増加している経費科目はいくつありますか?

 


③月次決算でコスト構造の変化をチェックする

 会社が支払うコストには、直接原価(商品仕入や原材料費など)と間接経費(経常的に支出する固定費)があります。
 業種や業態によって、コスト構造は異なります。
 製造業や卸売業、小売業は直接原価の割合が高く、サービス業などでは間接経費の割合が高くなります。
 ですので、重点的に管理するコストの優先順位は、売上高に対する割合が大きい順になります。

 コスト管理をするときの数字の見方は、金額と比率の2つです。

 月次決算がまとまったら、損益計算書の勘定科目の金額を点検します。
 経理に指示して、月次損益推移表を出力してもらい、毎月の経費科目の金額の変動を確認し、増額している科目について内訳を点検します。

 次に、損益計算書の勘定科目の金額の右側に表示されている構成比の数字を見るようにします。
 売上に対する各経費の割合が「%」で表示されています。
 真っ先に見るのは、直接原価と間接経費の構成割合です。
「売上原価合計」の構成比(売上原価率)と「販売管理費合計」の構成比(売上高販管費率)です。
 この2つ比率によって、会社のコスト構造を点検するようにします。
 売上に対する直接原価と間接経費のそれぞれの比率が高くなってきたら、注意信号です。

会社のコスト構造が頭に入っていますか?

 


コスト構造は、月次決算で定期的に検証して対策を打つ

 今回は「値上げの春」に合わせて、「会社のコスト構造の点検の仕方」を3つのポイントで説明しました。

①仕入値の上昇額と上昇率を点検して、粗利益への影響を検証する
②月次の経費科目ごとの増加額から、年間の経費増加額を見積もる
③直接原価と間接経費の売上構成比で、コスト構造の変化を検知する

 物価の上昇傾向は、今後もしばらく続くことが予想されます。月次決算で継続的にチェックして、対策を検討するようにしてください。
 想定外のコスト構造の変化が発見されたら、コスト削減の対策を打つとともに、速やかに仕入れや経費の予算を修正してください。

御社は、コスト構造のバランスが崩れてきたらすぐに対策を打っていますか?

 

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