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製造業

第260号 改善を飛躍的に高める3つの質問とは

柿内幸夫─社長のための現場改善

 皆さん、こんにちは。今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実践編として実例を挙げます。

【急所23】コミュニケーションは、現場で現物を前に、声を出して行え。(62頁)
 
 私の現場改善指導会では、社長はもちろん会社の皆さんと現場に行って、実行された改善を一緒に見て回ります。そして、その時に必ず行うことは、現場で改善を実行された方に直接に声をかけて、いくつかの質問をすることです。
 
 どんな質問かというと、それは以下の3つです。
 
 まず一問目、「なぜこの改善を実行されたのですか?」
 
 二問目は、「これをやるにはご苦労があったことでしょう。苦労話を聞かせて下さい」
 
 そして最後の三問目は、「次にやりたいことは何ですか?」
 
 じつは、この3つの質問は、全社的改善を成功させるのに、非常に重要な役割をはたす魔法の質問なのです。その理由を、ひとつずつ詳述したいと思います。
 
 まず、「なぜこの改善を実行したのですか?」 という質問の効用から説明しましょう。
 
 この質問の意図は、改善を行った本人に、自分の行った改善の素晴らしさを自覚していただくとともに、現場全体でその改善の意義を理解していただくためです。
 
 なぜなら、往々にして、改善を実行した本人が、その改善のすごさを理解していないということが多いからです。これはとてももったいないことです。ですから私はこの質問をして、元に戻らないように歯止めをすると同時に、その場にいる人たちにこの改善のどこがすごいかを説明するのです。
 
 そもそも、「なぜこの改善を実行されたのですか?」聞くと、例えば「忙しくて改善をしないと仕事が間に合わなかったからです」といった答が返ってくることがよくあるのです。そこで、「ではもし忙しくなくなったらどうします?」と聞くと、「元に戻します。以前のやり方の方が慣れていますから…。」というお返事があったりします。
 
 しかし、忙しいからやったという改善は、ムダが取れたので仕事が間に合うようになったということですから、本質的な改善であることが多いのです。ですから、元に戻すなんてとんでもない!
 
 これからもっと研究して、どんな場合でもできるくらいまで、次のステップに進んでいただくために、「なぜこの改善を実行されたのですか?」という質問をあえて投げかけるのです。
 
 続いて、二つ目の質問「これをやるにはご苦労があったことでしょう。苦労話を聞かせて下さい」の意図は、経営者や役員、そして管理職の人たちに、改善の背景にある努力や助け合いについての話を直接に聞いてもらいたいということです。つまり、製造現場の方たちが上司に話を聞いてもらう、貴重なチャンスをつくるための質問です。
 
 というのも、営業部門や設計部門の人たちは、注文が取れたり設計が終了した時に、上司に報告するチャンスがあります。しかし、製造現場の方は安全と品質は守れて当たり前で、かつ決められた要求数ピッタリの量を作ることが求められます。多くても少なくてもダメです。
 
 すなわち、できて当たり前で、できないと叱られるという状況ですから、なかなか会話ができません。先日声をかけたパートタイマーの方で、もう何年もこの会社で働いていますが、管理職の方と話をしたことが一回も無いとおっしゃりました。これでは会社に対する気持ちは強まりません。
 
 そこで、この質問をすると、自分がやった改善の苦労話をすることで、製造現場の方が自分の隠れた努力をアピールできることになります。さらに、聞いている上司の方から感謝の言葉が返ってきたりすると、改善の意味が理解でき、以降の改善意欲が高まります。
 
 そして最後の質問「次にやりたいことは何ですか?」ですが、これは文字通り、さらに改善のレベルを上げるための思考を促すためです。
 
 そもそも、現場改善はできるところからやってみることの連続ですから、今回は一人でやったけれど、もし技術部門が応援してくれればもっとできるとか、あり合わせの材料でやったけど、もっとしっかりした材料があれば…といった状態であることが多いのです。
 
 そこでこういう質問をすると、嬉しくなるような次の改善のアイデアを発表して下さることがしばしばあります。これは、改善のスピードとレベルを上げるのにとても役立ちます。
 
 以上、3つの質問はすべて、いわば私たちの潜在能力を引き出すための仕掛けなのです。私たちは、全員が例外なく高いレベルの改善能力を持っています。しかし、実際に改善をしている人自身もそのことを理解していないことが多い。そこで、現場で現物を前にして、いいタイミングでいい質問をすると、その潜在能力がいい答えを生み出してくれるというわけです。
 
 コミュニケーションとは双方向の情報交換です。しかし「何か問題があったら必ず言ってください」といくらお願いしても、そう簡単に情報は入って来ません。やはり、お互いが安心して情報を出し合える環境が必要です。
 
 そして、そのためのいいやり方の一つが、「現場で現物を前にして声を出して話し合う」ことなのです。

 

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copyright ゆきち先生 http://yukichisensei.com/

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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