2020年の前半(1―6月)の日本経済は、新型コロナウイルス感染拡大により、自粛ムード一色でした。経済活動が停止し、すべての日本企業が、直接または間接的に影響を受けました。あなたの会社は、どうでしたか?
社長として、社員や取引先、銀行、株主に、現在の経営状態や今後の見通しについて、どのように説明しましたか?
●社長はいかなる状況でも経営数値を認識しておく
いかなる状況でも、社長は常に経営数値の責任とその説明を求められます。この時期に一度、コロナ禍における自社の業績の変動を振り返って、結果と要因を整理しておかなければなりません。
・売上や利益は、前年と比較してどのように変動しましたか?
・計画予算と比較して、達成状況はどうですか?
・差異の要因は、なんだったでしょうか?
社長が数字をしっかり認識していないと、説明される相手も納得できません。
●他社の決算報告をネットで学ぶ
社長が経営数値の説明をするのが決算報告です。
わかりやすい説明をするために、ほかの会社の説明の仕方を見ると勉強になります。
決算書の数字を見ただけではわからない部分は、社内で分析した結果を踏まえてわかりやすく図表で説明してくれています。
説明会のプレゼン資料や、説明会の動画までアップしてくれている会社もあります。
気になる会社の決算説明会の資料をインターネットでダウンロードして、見るようにしてください。
●セブン&アイ・ホールディングスの決算報告
コロナ禍の財務数字のとらえ方で、非常に参考になるのが、セブン&アイ・ホールディングス社の決算説明会(2020年2月期)の資料です。
今年の1月以降に、日本の消費活動がどのように変わったのかを明瞭に示しています。
一緒に見てみましょう。
ご存じのとおり、セブン&アイグループ内には、コンビニエンスストア(セブン-イレブン・ジャパンなど)、スーパーストア(イトーヨーカドー、ヨークベニマルなど)、百貨店(そごう・西武など)、外食(デニーズなど)があります。
最も痛手を受けたのが、インバウンド客を失うとともに不要不急品(衣料品・化粧品)が落ち込んだそごう・西武(3月度売上前年比66.6%)、次に“三密”で敬遠された外食(デニーズ)(同74.1%)です。
この2業態は、4月以降の緊急事態宣言で営業を自粛し、さらに売上は激減していきます。
それに対してコンビニは、地域差(オフィス街は減少、住宅地は増加)はあるものの全体の売上は維持。
スーパーは生活雑貨や食品のまとめ買いによる巣ごもり需要で、増収となっているのはご存じのとおりです。
一方で、3月の外出自粛以降、ネット販売や通信販売は好調で、買い物習慣の変化が見られます。
御社の各事業は、この半年の間で前年と比べて売上がどのくらい増減しましたか?
増減の主な要因は、なんですか?
●業界動向から「次の一手」のヒントを得る
6月までに決算報告したほぼすべての会社は、「コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大」を理由に、経営計画および新年度の業績予想を「未定」としています。
影響が大きすぎて、「今後のことは誰にも予想できない」ということです。
これから状況が落ち着いてきた後、今後の業績予想が各社から発表される予定です。
特に、今後発表される同業他社の経営計画の数字を見るようにしてください。
注意してみるべきポイントは、次の3つです。
〈1〉アフターコロナ対策でどんな手を打つか(販売形態、顧客対応、働き方)
〈2〉どの分野領域にシフトするか(何を減らして、何を増やすか)
〈3〉いくら資金調達して、何に投資するか
今年後半に、御社はどのような次の手を打ちますか?
そのために今、どのような準備をしていますか?
●同業他社の動きを追い「対応の幅」を広げる
四半期ごとに決算資料が発表されますので、今後も継続して同業他社の動きを追っておくといいでしょう。
社長が興味のある会社の決算報告や事業計画が発表されたら、経理担当者に指示して印刷しておいてもらいます。
忙しい社長は、移動時間などに見るようにしてみてください。
他社の業績の変化や計画の立て方を見ることで、自分に欠けていた数字の見方や、経営視点に気づかされることがよくあります。
社長は、他社のデータ事例を参考にして消費行動の変化を読み取ります。
自社のデータで検証しながら、次の対応を決めていきます。
社長が考えている計画や予算に、抜けている視点はないですか?
●今後の方向性は「数字と言葉の両方」で伝える
変化があったときに、経営への影響度を数字で把握して、結果を検証する。
状況を分析して、今後の動向を予測し、次に備える。
そして、この一連の対応を、グラフ化して言葉にまとめ、利害関係者に適切に伝えていく。
社内外が不安に包まれている緊急時に、社長がやるべき大切なことです。