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税務・会計

第50回 忙しい社長を支える「できる経理」を育てる方法

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 企業の経理部長には、取引銀行から転籍になってきたという人がいます。
 銀行出身の経理部長の評価を社長に聞くと、「資金管理や銀行融資を安心して任せられる」という声を聞く一方で、「経理実務が弱い」という話も聞きます。
 銀行員は融資先企業が作成した数多くの決算書を見ますが、自分で決算書を作成することは一度もないのですから、経理実務ができないのは当然です。
 では、生え抜きの経理社員はどうでしょうか。
 簿記や経理事務を長年担当して自社の決算はできても、他社の決算書と比較分析し、銀行交渉ができる経理社員はほとんどいません。
 経理の仕事において、毎日の取引を記録する「簿記」と、会社の資金を管理する「財務」は、別の仕事だからです。
 そこで今回は、経理社員に「簿記」と「財務」の両方を身につけさせて、「できる経理」を育てる方法について説明します。

御社の経理社員は、「簿記」と「財務」の両方ができていますか?

 

 

「簿記」だけできても「財務」の仕事はできない

 取引が終わった結果が最終的に経理に回ってきます。
 取引結果を「借方/貸方」に区分して起票し、総勘定元帳に転記するのが、経理社員の重要な仕事です。
 複式簿記の知識と実務経験がないとできません。
 簿記を勉強してマスターするのは時間がかかりますが、一度理解すれば基本的なルールは変わりません。
 完了した過去の取引を決まったルールで記録するのが仕事となり、毎日毎月定例的なルーティーン作業になります。
 過去やルールは変更できないので、自分で考えて判断する領域は限定的です。
 多くの経理社員は過去の仕事で忙しいので、いつまでたっても「財務」の仕事ができるようにはならないのです。

御社の経理社員は「簿記」が仕事になっていませんか?

 


「財務の仕事」ができるように、経理社員をレベルアップさせていく

 資金繰りや予算を担当していた社員が急に退職した。このような場合、簿記会計や支払いを担当していた経理社員を代わりに担当させることがあります。
 経営者や人事担当は、経理関係の仕事はだいたい同じようなものと考えています。ですから、経理事務ができれば、資金繰りや予算もできるだろうと考えます。
 しかし残念ながら、経理事務担当者が財務の仕事をすぐにできるようになることは、まずありません。
 社長は、「なぜできないの?」「経理の仕事を何年やってきたの?」と疑問に思うようです。しかし、これが現実なのです。

 資金繰りや予算の仕事は、現在の状況を適切に判断して、将来の業績や資金の動きを予測する仕事です。
 過去の仕事だけをしている経理事務担当者に、現在と将来の仕事はできません。

 過去の仕事は、正解があるので、答え(残高)合わせをすれば、それで終わりです。
 答えがある仕事は簡単です。
 それに対して、現在と将来の仕事には、答えがありません。
 答えがない仕事は、自分で考える領域が広く難易度が高いのです。
 特に将来のことは誰にも見通せないので、景気、為替、金利などの経済情勢の変化で大きく変動します。予定通りにいかないのが普通です。

 ですので、経理事務担当者に財務の仕事をやらせるときには、過去の仕事から、現在の仕事、そして将来の仕事へと少しずつ仕事の時間軸をシフトさせなければならないのです。

御社の経理社員は、仕事の時間軸[過去・現在・将来]のどこにいますか?

 


経営の知識と経験も学ばせて、社長を支える「できる経理」にシフトさせる

 財務の仕事をするときに、基礎となる簿記会計の知識はもちろん大切です。
 さらに、商売やビジネスの知識が必要になります。
 経営を考えるときに、過去の実績をベースにして、現在の状況を判断し、将来を予測するからです

 商品戦略や販売戦略を知らなければ、何をいくら仕入れて、経費をいくら使って、どのくらい売るのかがわからないので、予算が立てられません。
 在庫をどのくらい持って商売をして、売ってから何日で回収し、仕入業者への支払は何日待ってもらうのか、という商的流通や取引条件を知らなければ資金繰りがたてられません。

 また、新店舗や新規事業を始めるのに、「いくら設備投資をして何年で回収できるのか」を計算できなければ、それに必要な資金調達の検討ができません。
 業績や、資金繰り、設備投資や資金調達を考えるときに、基礎となる簿記会計の知識は必ず必要になります。

 しかし、簿記の基礎だけでは、財務への応用はできないのです。
 会社の事業戦略だけでなく、経済情勢が変化する中で、状況の変化に合わせて財務に応用できるようになるためには、研修教育と実務経験が欠かせません。

御社の経理社員は、臨機応変に財務状態を予測できていますか?

 


社長の夢を支える「できる経理」を育成する

今回は、簿記と財務の仕事の違いについて、次のことを説明しました。

●取引結果を簿記会計処理するだけでは「財務」の仕事はできない
●簿記で過去を検証し、財務で現状を判断し将来を予測する
●財務の仕事をするには「会計」+「経営」の知識経験が必要

 中小企業が、成長発展できない要因のひとつに、経理財務人材が育っていないことがあげられます。
 社長がどんなに素晴らしい経営計画をつくったとしても、それを実現するためには事業計画を裏づける財務計画が必要だからです。
 会社規模の成長に合わせて、経理財務人材の育成も必要です。

会社の成長をサポートする経理財務人材は育っていますか?

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