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- 第192回 『明日の100点より、今日の80点』
数字の世界で80と100とを比べれば、100の方が大きいのは確かだ。
したがって誰でも、100の方が優れていると考えるし、
80で満足するよりも100を得ようと頑張ることを目指すであろう。
一般論として、これは正しい。
しかし、ビジネスの世界では、
数学的に正しいことが、必ずしも正解とはならないことがある。
いわば、今80を手にする方が、将来100を得るよりも
実質的に利益が大きいというケースだが、
こういうケースはビジネスの世界ではよくあることだ。
例えば、先行者利得というものがそれである。
ヤマト運輸は、物流業界に個人向けの宅配という
「宅急便サービス」をいち早く導入し、
またIT化を他の物流業者の先んじて進めた。
ヤマト運輸が宅配の市場に切り込んだときには、
まだ宅配市場は未成熟の段階であり、
IT化の導入に巨額の資金を投入したときも、
ITの技術は今日ほどのレベルではなかった。
いずれも時期を待てば、より良い条件で進めることもできたはずだが、
ビジネスにも人生にもタイミングというものがある。
100点を目指し、市場の成熟や技術のキャッチアップを待っているよりも、
今の段階では80点しか望めないが、
それでも今ここで踏み切ることに意味があるという判断によって、
ビジネスの勝者は生まれるのである。
ベンジャミン・フランクリンは「タイムイズマネー」と言ったが、
ビジネスや人生は「タイムイズマネー」なことが実に多い。
タイミングとは、逃してはいけないチャンス。
100%のチャンスを待てば、80%のチャンスを逃してしまう。
「拙速(せっそく)は巧遅(こうち)に勝る」ともいう。
ビジネスパーソンの自分磨きは、今日の80点をモノにすることが要諦である。
明日の100点では遅いのである。
ビジネスチャンスという名のバスは出て行ってしまう。
巧遅の100から20を捨てて、拙速の80で決断することが
実質的な勝利につながることは案外多いものである。