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税務・会計

第2回 コロナで増えた借入金の経営者保証を外す

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

全国の企業が、無利子無担保のコロナ特別融資を利用して、コロナ禍における足下の資金手当をしました。

「金利負担がないなら、とりあえず融資枠上限まで借りておく」という社長も多かったようです。

全国の銀行の2020年6月の貸出金残高は、前年同月と比較して約34兆円増加しています(「全国銀行 預金・貸出金速報」2020年6月 全国銀行協会)。

前年同月比の伸び率としては過去最高の6.8%であり、中でも都市銀行は9.4%増加です。

また、今年3月に新型コロナウイルス感染症特別貸付を開始した日本政策金融公庫の普通貸付金額は、2020年5月時点で前年同月比約2兆円増加し、1年間で約34%増えています。

あなたの会社の借入金残高は、いくらになりましたか?

 

●会社の借入金と社長の連帯保証はセット

銀行側も政府(保証協会)が100%保証してくれるので、貸し倒れを心配せずに積極的に融資しました。

都道府県から補填される利子は、確実に銀行に入ります。

銀行はノーリスクで、安定収入が確保できるので、雨の中でも喜んで傘を貸してくれたのです。

今回のコロナ特別融資は、保証協会が100%保証することにより、会社は無担保で借りられました。

物的担保(不動産等)は不要ですが、原則として社長が連帯保証人になります。

会社が返済できない場合、社長個人に借金の取り立てが回ってきます。

社長は当然、覚悟のうえで事業資金を借りています。

社長は今日現在、会社のために、いくら個人保証していますか?
借金取りに追われる悪夢でうなされたことはありますか?

 

●経営者保証が事業承継の障害になる

会社の借入金の増加に伴い、社長の個人保証の金額も増えます。

これは、社長ひとりだけの問題ではなく、会社の将来の問題にもつながっています。

この借入金の経営者保証が、事業承継のときに障害になるからです。

全国の中小企業では、社長の高齢化が深刻な問題になっており、後継者不在により、廃業に追い込まれるケースが後を絶ちません。

そして、後継者候補がいる中小企業の約6割が、「個人保証を理由に承継を拒否」されているのです(平成29年度 中小機構アンケート調査結果)。


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 (出所)「事業継承時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」中小企業庁

せっかく後継者候補が見つかっても、「借金の肩代わりは勘弁してほしい」と言われてしまうのです。

あなたの会社は、後継者が決まっていますか?
後継者候補には、会社の借入金の話はしましたか?
 
 

●2020年4月から新たな経営者保証の解除対策がスタートしている

中小企業融資における経営者の個人保証については、以前から問題視されており、経営者保証の解除に向けた動きはすでにありました。

2013(平成25)年に、日本商工会議所と全国銀行協会から「経営者保証に関するガイドライン」が発表され、中小企業の融資から経営者保証を解除する方針が出されています。

しかし残念ながら、成果があまり出ていませんでした。

今年の4月に民法が改正され、第三者保証の利用が制限されました。

これを受けて、中小企業庁から新たに「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」として、次のような具体策が公表されています。

 ・前経営者と後継者の個人保証の二重徴収の原則禁止

 ・事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証制度の創設

新年度から、銀行も日本政策金融公庫も対応を始めています。

コロナ緊急融資で企業の借り入れが増えている状況において、社長の個人保証の問題は今後、より大きな問題になっていくことでしょう。

できるだけ早い時期に、社長の個人保証について、銀行と相談してみてください。

新規の融資はもちろんのこと、これまで借りている分の個人保証についても、忘れずに交渉してください。

社長は、金融機関に対して個人保証を外すように依頼したことがありますか?

 

●代表者の個人保証を外す4つの要件

銀行も金貸しが商売ですから、ただお願いしただけでは社長の連帯保証を外してくれません。

人的保証がなくても、会社がしっかり返済できる財務体質を示さなければ、銀行には信用してもらえません。

そのための要件として、上記の経営者保証解除対策には、次の4つが提示されています。

 1.資産超過であること(債務超過でない)

 2.返済緩和中ではないこと(リスケ等を受けていない)

 3.EBITDA有利子負債倍率((借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費))10倍以内

 4.法人と経営者の分離がなされていること(会社と社長との間で貸借がない)

         (注)EBITDA(金利支払い前、税金支払い前、減価償却費控除前の利益)
             :Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization

 

この記事を読んだらすぐに、経理担当者に自社の財務状態を確認させてください。

この4つの要件が、満たされているかを検証するのです。

特に、借入金の額が増えると、3番目の「EBITDA有利子負債倍率」をクリアするのが難しくなります。

実質の借入金残高を年間のキャッシュフロー(EBITDA:営業利益+減価償却費)で割った値です。

つまり、毎年稼ぎ出すキャッシュフローを原資にして、借入金を10年以内に返済できる見込みがないと、個人保証は外れないということです。

この要件をクリアするためには、借入金を減らしながら、キャッシュフローを増やさなければなりません。

社長の個人保証を外すには、まず自社の財務体質の改善が必要なのです。

あなたの会社の決算書は、銀行に信頼される数値を示していますか?
 
 

●借入金を計画的に減らして経営者保証を外す

コロナ禍が少し落ち着いてきたら、膨らんだ借入金の額を計画的に減らしていきましょう。

売上が回復してきたら、返済に必要なキャッシュフローを確保していきます。

そして、上の4つの要件をクリアしたら、明日にでも、社長の個人保証の解除を銀行に申し出てください。

社長や社長の家族のためだけではなく、会社の将来のために重要なことだからです。

借入金の個人保証が外れたら、どんな気分ですか?

個人保証が外れると、社長も後継者も枕を高くして眠れます。

 

[参考文献]
「全国銀行 預金・貸出金速報」2020年6月末 一般社団法人全国銀行協会 
 
「毎月の融資実績、業務統計年報」2020年5月 日本政策金融公庫 
 
「経営者保証に関するガイドライン」 一般社団法人全国銀行協会
 
「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」 中小企業庁
 
 

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