私が日本経営合理化協会でやっている後継社長塾の修了生OBから「トヨタショック」についてメールが来ました。
「今までの経験では不況になった時でも、今回ほどあっという間に仕事の量が減った事がない。現在の製造業を取り巻くシステムは、やっぱりすご いという事を現場で聞くことがありました。トヨタ生産方式・TPS又はジャストインタイムシステムで知られていますが、必要な時に必要なものを生産す る。
今回トヨタ自動車さんが、販売不振になると各部品メーカーも注文がない。下請各工場で仕事がなく工場を稼動できなくなっています。自動車工場 関係でなく、電子部品・家電製品等いろいろな商品の生産のリードダイムがあらためて短くなっていたことに気がつきます。
いろいろな取引先を見ていて10月は、至上最高売上又は生産量の会社が少なからず多かった。しかし11月末しめてみたら工場の稼動含め売上・ 生産量30%ダウン12月の生産予定40%ダウンという会社が、非常に多い。生産のリードタイムは、早くて15日から30日ということだそう だ。
今までならば 少しは良い業種の製造業もあったが、今回は全くひどいものです。やっぱり売上は、数量及び単価で決まる。大手が風邪を引けば、 中小はウィルスに感染し肺炎になって死にも至ります。」
中京地区で自動車メーカー各社と取引しているU君からのメールです。
私は、8月には、アメリカ・欧州の自動車販売がビッグ3、ドイツ車、日本車すべてが急激に落ち込んでいる情報を得ていた。日本人の自動車の購 入の仕方と異なり、リース・レンタル方式で車を使用していたり、カードで長期のリボ払いもあるとか、焦げ付き、キャンセルが多発していると聞いてい た。
2兆円もの利益を出したトヨタでも
・宮城県仙台の新工場進出は全くの大失敗、新工場は要らない
・アメリカ重視の戦略が失敗、来年にかけて30~50%販売が落ち込む
・レクサスが売れていない
三つの大問題をかかえて取締役会が大変なことになっている情報を得た。
我が社のコンサルタントに忠告した。
車の伝導部品のパーツを製造しているR社やK社は「大丈夫か・・」の質問に対して
「10月もフル操業です」と暢気な返事があった。
ところが、12月のはじめは下記のような報告が来た
〈R社〉
『・11月は、売上高(出荷数)前年比25%ダウンで、経常で50万円のギリギリの黒字。
・12月は、さらに厳しく売上高(出荷数)前年比約30%ダウンで、
経常で収支トントン程度となりそうです。
・契約社員の削減、残業規制、年末休みの1日増加などで経費の削減を図ります。
<K社>
・11月は、売上高(出荷数)前年比25%ダウンで、経常で880万円の赤字。
・12月は、さらに厳しく売上高(出荷数)前年比約40%ダウンで、経常で500万円程度の赤字となりそうです。
・契約社員の削減、残業規制、年末休みの1日増加などで経費の削減を図ります。』
というのである。
自動車関連はこの5年間考えてみれば天下泰平の年であったのでしょうね・
皆、こんな状況が続くと信じていたのでしょうか・・・?
12月中旬、バネ製造会社のA社若社長の後継社長塾OB君に会食で出会う。
「自動車関連部品を貴方もやっておられるが、大丈夫ですか・・・どういう状況・・」と質問する。彼はこのように言っていた。
「確かに自動車の不況はもう少し続くでしょう。ただ半導体の不況がそろそろ終わる気配を感じます。また農業機具関係は減産の話は出ていませ ん。また自動車の流れとして、小型車への移行は継続しています。北米向けのカローラ、プリウスの部品はほとんど落ちていません。
大切なのは、どんな潮流の部品を受けて行くかを予想しながら、確実に進めて行くことだと思ってます、この数年間、見積に全て目を通してきたの が、今のところわが社の被害額が少ない理由だと思っています。
相変わらず航空機は堅調ですし、というより、動き出しましたので、それも押さえます。また、軍需に関しては2年先までの受注があります。自衛 隊の人員削減?というより人員を増やさない代わりに、防衛機器の高性能化が進んでいます。それに伴い、弊社の受注も増加傾向にあります。
先生の教え通り、最悪の事態を想定しながら、楽観的に自分を保つ様にしています。
確かに自動車は痛いですけど、だからこそやりがいがあるチャンスだと思っています。」
「市況」という言葉がある。常に市場の情況を測りながら、「台風」は避け、「大嵐」を想定して自社の強みを強化しておく。
危機予知能力の低い会社にはしたくありませんね。
R社もK社もA社も自己資本比率の安定性の高い会社。この不況でライバルが倒れて、かえって強くなってゆくのでしょう。
「負けるから弱くなり、勝つから強くなる」のです。