そして、その店は、確実に店舗網を広げようとしている。今回は、その期待の星、ワイヤを紹介しよう。
一方、浜焼きはブームになり、素人向けにすすめられるFCパッケージとなった。このブームで生まれた店が、私に安くない価格であまりいいものでないものを売っているイメージを持たせてしまった。
かような理由で、初めて店を訪れるとき、ワイヤがなぜそこまで伸びているかわからなかった。
しかし、実際にワイヤを訪れると、衝撃と感銘が走った。これは久々に感じた手ごたえだ。なぜ、そこまで衝撃と感銘を受けたのかとか言うと、店づくりの背景には、しっかりとした理念があったからに他ならない。
ここで、ワイヤグループを展開するブルーコーポレーションの長谷川泰三社長を紹介しよう。長谷川社長は、サーフィンをするために、とある漁村にいたときに、現金を稼ぐために漁師をしていた。そして、大阪に戻り飲食店を始めようと思い、浜焼きの業態をスタートした。
若かったせいもあってか、市場の業者がまっとうに相手にしてくれなかった。やむなく、漁師をやっていた経験から、浜まで行けばなんとかなるだろうと紀伊長島に向かった。
営業が終わってから毎日3時間半くらいかけて紀伊長島まで一年くらい仕入れに行ったというから驚きだ。
「料理の技術が無かったため自然に300円という価格になった」と長谷川社長は振り返る。顧客視点でお客様を魅了する方法を見出してきたのだ。
その考えとはやり方はどっぶりこの業界に浸かった人間には考えもつかない“究極の素人経営”だ。今は急展開しているゆえ、粗削りでありますが、必ず、来そうな店がこのワイヤなのだ。
ワイヤの理念
「間違った形で高級魚になっていく国産の魚介類を身近に」という理念に基づいて国産の魚を300円というリーズナブルな価格で提供している。そのために、長谷川社長は全国の漁港を巡り、仕入れルートの開発につとめている。
POSレジの普及で、データに基づき仕入れをするのが当たり前になり、買い続けて、売り方を究めようという店は少なくなっている。また、食べる量が減るのなら、少しでも高く売ろうとするゆえ、おかしな形でのブランド化を国や漁協がしようとしている面がある。
そもそも、水産業者が厳しいのは水産資源の枯渇と魚離れだ。身近に、おいしく食べていただくことで、安定して買い続けられる。魚の食べ方を提案しおいしさを知っていただくことで、魚離れを回避し、あまり食べない魚を食べていただくことで、漁師さんの収入が安定するようにする。こんなことが求められている。
その落とし込みがしっかりワイヤにはある。
長谷川社長はプライシングするときに「自分が300円払ってお値打ち感があるかどうかで判断する」と言う。