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ビジネス見聞録

「中小企業が挑んだ令和のブランドリデザイン “オワコン”商品がV字回復」/3分でつかむ!令和女子の消費とトレンド第1回

ビジネス見聞録 経営ニュース

新しい価値観をどんどん取り入れていくことができるのが若者たち。若者たちの中でも、トレンドを握り消費を動かすパワーを秘めた女性たちの《インサイト》に注目すると、新しいヒットを創るヒントが見えてくる!

●次のヒットを創るヒントは若者のインサイト

 まだ顕在化していないブームの兆し、新たに生まれる新常識。いつの時代も新しい未来を切り拓くのは、新しい時代に生まれて育ち、一番最初に新しい価値観を取り入れていくことができる若者たちです。そんな若者たちの中でも、トレンドを握り消費を動かすパワーを秘めた女性たちの〈インサイト〉に注目すると、新しいヒットを創るヒントを得られます。 マーケティング(※)における〈インサイト〉とは、消費者自身がまだ気づいていなかったり言語化できていなかったりする潜在的なニーズのこと。言語化されていないニーズは、検索して調べても出てきません。だからそれが世の中で顕在化して競争が始まる前に、いち早く発見することに価値があるのです。

 ※マーケティング:ターゲットに自分の価値を買ってもらえる仕組みをつくる活動のこと。

 ただ流行の現象だけを追うのではなく、何故それが流行っているのか、奥に潜む〈インサイト〉を理解する。そうすると、自社の商品に新しい形で応用することができ、未来の市場を開拓することができるようになります。

 この連載では、女性インサイトと消費トレンドの変遷を追い続けてきた電通ギャルラボ戦略プランナーの阿佐見が、消費とトレンドの最新動向をピックアップ。その奥に潜む、令和女子たちが考えていることやひそかに困っていることなどの「本音」を解説していきます!

 初回で注目したい令和女子の〈インサイト〉は以下の2つです。

 ①時間をかけずに、手間をかけたように見えたい。
 ②「自分らしさ」を選び取りたい。
 実際にこの2つの〈インサイト〉を理解し、商品に落とし込んで新商品をヒットさせた成功事例を見ていきたいと思います。

 今回紹介するのは、浅草にある老舗化粧品メーカー「コージー本舗」が製造する、アイメイクブランド「DOLLY WINK」の事例です。DOLLY WINKは、「つけまつげ」からスタートし、今ではアイライナー、アイシャドウ、マスカラ、アイブロウと多種のアイメイク商品をラインナップしています。 

reiwa1_01.jpg2009年誕生当時のDOLLY WINK

 

 DOLLY WINKのブランドプロデューサーはギャルブームの火付け役であった益若つばささん。DOLLY WINKが誕生した2009年は、いわゆるギャルマーケットが社会や経済を牽引していた時代でした。ギャルが社会現象になっていた当時、DOLLY WINKはダントツの売上を誇り、時代に存在感を放っていました。

そして近年、ギャルブームは衰退。ギャルメイクの象徴だった「つけまつげ」の市場規模は、ピーク時の3分の2に大幅縮小しました(出典:富士経済2018「アイラッシュ(つけまつげ)関連品」)。ナチュラルメイクが主流になり、マツエク(まつげエクステ)が普及し、世の女性たちは「つけまつげ離れ」をしていきました。「つけまつげ」は「オワコン」の烙印を押され、流通はつけまつげの配荷を拒絶。発売から10年経ったDOLLY WINKブランドの売上げも、全盛期の2分の1以下へと大幅に落ち込んでしまったのです。

 どんなヒット商品や人気ブランドでも、時代に合わなくなる時が来ます。売上を支えていた商品が、気が付いたら売れなくなる…老舗メーカーほどそんな局面に直面することは珍しくありません。しかし、そんな状況から一転して「つけまつげ」の売上がV字回復。2019年年末、全国でDOLLY WINKのつけまつげが「バカ売れ」していることが騒がれました。この勝因が、冒頭で紹介した2つの〈インサイト〉を理解した上で新商品を作ったからなのです。どのように商品に落とし込んでいったのかを、見ていきたいと思います。

●生活スタイルに合わせて、つけまの「使われ方」をリデザイン

 1つめのインサイトは「時間をかけずに、手間をかけたように見えたい」。ターゲットである令和女子は、マツエクをつけるし、マスカラも使います。つまり、「まつげメイク」への需要は変わらず存在していたのです。それにも関わらず、つけまつげを使わない原因に、「つけまつげは扱いが難しい、時間がかる」という理由がありました。そこで、新商品のコンセプトを「10秒マツエク」としました。忙しい令和女子に合わせて「10秒」で装着できるくらい簡単に使えるようにするために、カット不要の「部分用つけまつげ」に徹底的に特化したのです。

 新商品は「♯10秒マツエク」というハッシュタグで拡散し、twitterトレンドにも浮上しました。令和女子たちの間では「10秒マツエク」という言葉で覚えられるようになりました。マツエク・マスカラユーザーにも響いて拡散しやすいコンセプトが、従来のつけまつげを越えて新しい形で世の中に受け入れられ始めるきっかけを作ったのです。

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キャッチコピーは「アイメイクの新常識。“10秒マツエク”」

●ギャルの象徴というつけまの「イメージ」をリデザイン!

2つめのインサイトは「自分らしさを選び取りたい」。昔は、皆が「盛りメイクをしたい」という同じモチベーションに向かっていましたが、現代は多様な個性と自分らしさの尊重が当たり前になり、こうあるべきというブランドからの押しつけが通用しなくなりました。

 そこで、つけまつげの「イメージ」をリデザインするべく、従来のつけまつげと一線を画す、一見つけまつげに見えないパッケージデザインを採用。ネーミングも「黒目強調」「丸目カール」などのように、誰にとっても分かりやすい機能性に特化しました。 ナチュラルなもののみで全16種という異例の数をラインナップし、モデルではなくイラストを使用することで多様性を表現しました。令和女子たちは1人がいつも同一のテイストではなく、多様なファッションやメイクのバリエーションを持つ傾向が顕著になってきています。そこでつけまつげにも、新しい選び方の基準を作り、自分に合うものを複数見つけられるような仕掛けをつくりました。「気分に合わせて選べるつけまつげ」という新しい商品を実現することを目指したのです。

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イラスト使用で女性の多様性を表現したパッケージデザイン
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ナチュラルなもののみで全16種の仕上りを可視化したチャート

●終わりに

 コージー本舗が2019年11月に新発売した「新・部分用つけまつげ EASY  LASH」は、通常8万個売れたらヒットと言われる中、発売1ヶ月で30万個の売上を記録しました。店頭では発売3日で売り切れが続出しました。

  今回のインサイトを使って、売れる商品を創るためのポイントは2つです。
 
 ①忙しくなったからこそ、時間をかけなくても、諦めないで済むものを創る。
   ②多様性の時代だからこそ、「自分らしさ」を選び取りやすいものを創る。
 新しい時代のインサイトに注目し、潜在的なニーズに応えられる商品を創ると、ヒットが生み出せます。ぜひ、まだ広まっていないこの最新のインサイトを活かしてみてください。
 

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阿佐見 綾香(あさみあやか)

電通ギャルラボ研究員。若年女子研究を専門とする。 ストラテジック・プランナーとして、企業や商品・サービスのマーケティングや商品開発、リサーチ、企画プランニング、コミュニケーション戦略立案などを担当。 電通ダイバーシティ・ラボ研究員としても、マーケティングの最新トピックであるLGBTに取り組み、みんなが楽しく暮らせるダイバーシティ社会の形成を目指す。
 
※本コラムは2020年3月号「ビジネス見聞録」に掲載したものです。

 

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