勝ち組と負け組が明確になる今、経営者の判断がブレると会社は、これから負け組に入ってしまうでしょう。しかし、経営者の判断が理念を軸に、ブレなければ、会社は、生き残り、勝ち残ることが可能です。
なぜなら、先行きの見えない日本で現場は、経営の判断が常にブレない会社なら、その会社を信頼して“ついていこう”と思い、顧客の声に耳を傾け始めるからです。
会社は、永続する必要があり、永続させるには儲からなければならず、そのためには、顧客の声を聴き、必要とされる会社になり、利益を生み出すことが不可欠です。
経営者は代わりますが、変わらぬ経営理念を軸にブレない経営を実践し、会社の風土を築けば、現場が一つとなり、顧客になくてはならない会社には何が必要か?探り当てることができるのです。
そこで今回から全三回で、“ブレない経営”を実践し、顧客リピートを生み出している会社を事例に、企業風土を売り上げに結びつける仕組みを、経営理念で解説いたします。
~今日の目の前のお客様に満足してもらう~
オーベルジュ・オ・ミラドーは、1986年に日本で初めてのオーベルジュ(主に郊外や地方にある宿泊設備を備えたレストラン)としてオーナーシェフ勝又氏がオープンし、多くのフランス料理店が苦戦する中、顧客リピートを獲得し続けています。
同氏が掲げる理念とは、「今日の目の前のお客様に満足してもらう」というものですが、日本で最初のオーベルジュをここまで引っ張ってきたのは、そこに
・ お店が全て
・ 現場が全て という現場主義が風土として根付いていたからと言えます。
同社の始まりは、1963年に勝又氏が料理の世界に入り、欧州で修行し、帰国後、東京に滞在する欧米人を相手に1973年にパリの下町にあるような小粋なビストロ(小さく気軽に入れるカフェレストラン)を西麻布地域に開業し、 今まで東京になかった“本物”の味(欧米人にとっては慣れ親しんだ味)を提供することで、本格的ビストロの成功が東京に鳴り響き、勝又氏の名前が知れ渡ったからでした。
その後もオープンする十店舗以上のビストロは全てが繁盛しました。
勝又氏が経営するお店が「なぜ繁盛したのか?」、その理由は、勝又氏が他の料理人が目をつけない所(誰もがやっていないけれどお客様は存在する)に着眼し、本格的ビストロを当時は低家賃の西麻布でオープンさせたことも繁盛(利益を生み出した)した一因ですが、理念である“今日の目の前のお客様に満足してもらう”を、自身が調理場で自ら実践し現場に見せ、昨日よりおいしい味を今日提供しようとする、その真摯な“こだわり”の姿勢が、現場(調理場)の料理人たちに伝わり、彼らがシェフとなる店舗(自身が現場に任せる)でもブレない味を提供できたからです。
勝又氏が経営するお店が、自身が調理しなくても繁盛するのは、勝又氏が調理人に、料理の味の作り方を伝えたのではなく、料理の味を追求する姿勢を伝えることで、その結果、来店客が、お店の日々変化(おいしさに挑戦する)する味に、何度来ても満足できたからです。
経営者勝又氏が掲げる、経営理念「今日の目の前のお客様に満足してもらう」は、理念実現の方法を、ブレない”経営姿勢
・ 自身の“ここにしかない”味(感覚)を伝えること がなければ実現不可能なのです。
~現場で全ての答えを出せ!~
同社は「経営戦略は調理場で生まれるもの」とし、“今日の目の前のお客様に満足してもらう”ためにできることは、調理場で生み出すべきであるとしています。
戦略とは、“やらないこと”を決めることで、同社は、オーナーシェフ自身が経営者として以下の5つをやらないことを決めているのです。
・ こだわらないことは、やらない
・ 現場から生まれないものは、やらない
・ 削ぎとらないものは、やらない
・ 利益に還元できなければ、やらない
・ ここにしかないものでなければ、やらない
味にこだわり、それが現場から生まれた結果、ここにしかないものであったとしても、削ぎとる(シンプル、つまりムダ・ムリ・ムラをなくす)にできなければ、利益(効率を上げ、生産性を向上させる)に還元できず、社員の幸せはありません。
経営者勝又氏のこれら5つのブレない軸は、経営戦略として組み立てることで利益を現場に還元する流れを確かなものにしているのです。
※ コンサルティング事例検証
拙著「3ヶ月で20%売り上げをアップさせる3つの仕組み」でも紹介しました千葉で五穀米の登録商標を持つ会社では、“食文化の明るい未来を創造する” を理念に掲げ、“日本食文化の伝承を通じて、豊かな健康文化人の育成、ひいては田園を中心とする環境の保全に貢献する”ことで理念を実現しようとしています。
同社の強さは、日本にまだ存在しない商品を、日本の食文化の伝承を軸に開発する“こだわり”です。
現場が共に社長のアイデアから発する、“ここにしかない”商品は、日本の食文化の伝承というブレない軸により商品化の意義を判断され、この“こだわり”が他社の追随を許さないオンリーワンブランド構築へのエンジンとなっています。