今回からは全3回で“進化”をキーワードに会社が企業風土をどのように経営理念とリンクさせれば顧客を創造できるか?を、現場士気を向上することで売り上げをアップさせている会社を事例と共に解説いたします。
~理念の文言がブランドを構築し、売り上げアップを可能にする!!~
世界一奪回を目指した侍ジャパン(日本代表の野球チーム)、そのオフィシャルスーツを提供した企業とは?
1818年にH. & D. H. Brooks & Co.としてヘンリー・サンズ・ブルックスがニューヨークで創業したブルックスブラザーズです。
同社は、アメリカ本国では、J.プレスとともに歴代アメリカ大統領に愛され、今やラルフ・ローレンなどと並び、アメリカントラディショナルスタイルの代表ブランドなのですが、この会社、200年もの伝統がありながら、今なおファッションという移り変わりの激しい業界で、保守層から若年層の顧客にまで支持されています。
その理由は、同社が経営理念の文言を軸に、変えてはいけない普遍の価値(=最高品質)を定義し、現場が会社の存在意義を共有することで、決して高級ブランド化せずに(適正な利益を含んだ価格で販売)幅広い顧客層を対象に成功しているからです。
~ブルックスブラザーズの経営理念~ミッション(会社の存在意義)
最高品質の商品だけをつくり、取り扱うこと。 適正な利益のみを含んだ価格で販売し、こうした価値を商品に求め、その価値を理解できる顧客とのみ取引すること。
~現場の士気を向上させる経営理念の実践とは?!~
ブルックスブラザーズの付加価値は、コピーができない本物だけがもつ魅力なのですが、この魅力を現場は同社しか使用できない最高品質の「サクソンウール」の存在を通して、日々の接客時に実感しています。なぜなら、同社は経営理念で唱っている<最高品質>を“ここしかない”「サクソンウール」という素材によって以下のように現場仕様へと具現化しているからです。
<ブルックスブラザーズの付加価値>
ブルックスブラザーズの最高品質は、“スーツに袖を通せばすぐに分かる”(カシミアより軽く、そしてとても柔らかい)
ブルックスブラザーズの本当の強さとは、つまり現場で働くスタッフが経営理念の日々の実践(顧客に試着してもらい、スーツに袖を通した感覚を顧客と共有する)によって、顧客と共に自社の提供する商品が最高品質(“ここのしかない”サクソンウール)であることを認識し、現場自身が会社で働くことにやりがいを感じていることです。
~イノベーションが進化にリンクするには理念(行動指針)が不可欠!!~
1979年同社はアメリカ国外への事業展開として日本へ進出(米国ブルックス・ブラザーズとダイドーリミテッドとの合弁会社)。日本というマーケットで若年層を取り込むべく、今までのクラシックラインをカジュアルに進化させた「RED FLEECE」というコレクションを発表し、これまでの保守層以外の顧客へ挑戦しました。日本支社は、これを機に、米国本社にウィメンズ(女性アパレル)への進出へ向けてショップのデザインコンセプト(店内のデザイン)を提案。米国本社はこの提案を受け、日本支社からのショップデザインコンセプトの展開を全世界において開始し、ウィメンズ市場へ本腰を入れることを決定したのでした。老舗とも言えるブルックスブラザーズが、このように現場(日本支社)の声を聞き入れ、今なお会社を進化させ続けていけるのは、どうしてでしょうか?
それは同社で働く人の日々のルールとも言える行動指針(以下)にイノベーション(革新)の実践が重要であると記載されているからです。
<ブルックスブラザーズ行動指針>
HISTORY
– 私たちはブルックス ブラザーズの歴史、業績に敬意を払います
RELATIONSHIPS
– 私たちはオープンで誠実で頻繁なコミュニケーションを通し、継続的で信頼し合える充実した関係を築きます
INNOVATION
– 私たちはリスクを恐れず革新を求めて挑戦します
SERVE
– 私たちは改善をもたらすため、まわりの人を手助けします
FAIRNESS
– 私たちは信頼関係を築くため、公平性、尊敬の念、信頼感を 持って行動します
CELEBRATE
– 私たちは日々の成功や学びを認め称賛します
顧客と現場が試着を接点に、<スーツに袖を通した感覚>を共有していることがリスクを恐れず革新を求める挑戦を可能にし、ブルックスブラザーズを進化できる会社へと導いているのです。
ブルックスブラザーズHP(日本語)<経営理念>