先週はまるまる一週間、経団連洋上研修に講師として参加しておりました。今回はその体験をベースに【急所45】のテーマを解説いたします。
今回の洋上研修は、11月23日に横浜港を出港して、三日かけて台湾に到着し、現地で二日間、企業視察や観光をし、また三日間かけて横浜港に戻ってくる八日間の研修でした。
参加者は日本の民間企業・団体の管理・監督者151名で、「志高く、強い組織・熱い職場をつくる」というテーマに沿った総合研修を通じて、これからの日本を支える改革と創造のチェンジ・リーダーに育ってもらうというものでした。
団員は、名誉団長(川村隆 日立製作所取締役会長、経団連副会長)やチーフアドバイザー(野田稔 明治大学大学院教授)、アドバイザー(浜田正幸 多摩大学大学院教授)、講師(佐藤寿 JR東日本総合研修センター部長)や私の講義などを聞き、そして6人単位で構成されたグループで、真剣な討議をしました。
初日はグループごとに異なる業種からの参加者が、自分たちの仕事などを説明する自己紹介から始まりました。しかし、みんな自分の仕事の問題だけでなく、会社や上司・部下に対する不満も様々にあり、「チェンジ・リーダー」という目指すレベルとは程遠く、全く解決の糸口をつかめない状態からの始まりでした。
スタートがこの状態の参加者全員に、8日間で「チェンジ・リーダー」へと変身してもらうのですから、これはとても大きなプロジェクトです。
そこで登場するのが、今回のテーマの模造紙です。研修ではパソコンを敢えて使わず、議論の進行にはすべて模造紙を使用しました。
というのも、模造紙だと議論の過程がすべて残るし、みんなが常に同じ情報を指さしながら一覧で見ることができるので、長時間にわたる議論でも話の筋がずれることがありませんでした。
下の写真は模造紙を使った研修の様子です。写真をご覧いただくとお分かりになると思いますが、講義を通じて新しい知識や考え方を学び、ワイワイガヤガヤの話し合いを続けるうちに、これまで全く思いもよらなかった新しい解決の糸口や考え方が、自らの気付きを通じて生まれたのです。
すると、これまで多くの方が会社や上司・部下の悪さが問題であって、自分では何も変えられないどうしようもない状況にいたと思っていたけれど、実は自分がするべきことがたくさんあったということに気づき、「会社に戻ったらこういうことをやってみたい」とたくましいチェンジ・リーダーへと変身して下さいました。
講師という立場ではありますが、これだけ多くの人がここまで変わったというのは、驚くべき結果であると思います。
この気付きを生み出した理由の一つは、超アナログの模造紙を使った徹底した議論です。メールなどのデジタル全盛の時代ですが、大きなプロジェクトになればなるほど、多くの人が関わり、準備も手配も複雑になり、協同作業や社外スタッフとの連携も発生してきます。
リーダーが全体を完璧に理解することは難しく、それぞれのスタッフが全体を分からなければ、上手な連携や節々の変化に対して気の利いた対応をすることはできません。
そういった状況の下でプロジェクトをスムーズに進めていくために大切なことは、「一覧性」だと思います。
すなわち、自分たちはいつまでに何を完成させ、それをどこの誰に渡すのか。横で何が行われ、いつ連携が必要か。そして、これまでの話の流れを時々振り返りながら、次のステップに進むといったことが一目で見られることです。
そういうことは小さなパソコンの画面で把握するのは難しく、大きな模造紙が向いているといえるでしょう。パソコンが得意なことは正確性や同時性が必要なデータや情報の共有化であり、新たなことを作り出すようなときには模造紙が力を発揮するのです。ぜひお試しください。
ちなみに、私、経団連洋上研修に以前より講師として参加しており、その効果の大きさを確認しています。ご興味のある方は下記の情報をご覧ください。