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マネジメント

第9回 社員に指摘されて気づいたビジョンレス経営の罪

酒井英之の社長のビジョン実現道場

志≠夢

よく似た話を、冷凍鮮魚加工を営むB社の社長からも聴きました。B社には単年度計画はありましたが、長期ビジョンがありませんでした。

 

ある日、社長は若手のホープの営業部長に「君は、わが社の将来をどう思うか?」と尋ねました。

すると部長はこう返してきました。「目指しているところがわからないのに、意見なんてありません」

この部長も、自社の将来の「あるべき姿」が見えないために現状とのギャップが見えず、社長の問いに答えられなかったのです。


若き営業部長のひと言でビジョンレスの罪に気が付いた社長は、自分の理想を描き始めます。それが、生産量の拡大はもちろん、HACCP対策を万全にして、地域の人にも見学してもらえ、隣地には同社製品の直売所とレストランも併設した、従業員がやりがいを持って働ける新工場の立ち上げでした。

 

ビジョンは一般的に社長の頭の中にぼんやりした状態でありますが、それを文書にしたり、絵に描いたりして外に発信する人は稀です。

 

が、この社長はそれを描きました。

 

そして、構想から3年、幹部社員と議論を重ねながら、理想の土地を取得し、新工場の竣工という形で具現化しました。竣工式の日、社長は「仮に自分が今死んで、誰かが経営者になってたとしても、この工場が稼働し続ける限り、自分のビジョンを実現できる」と社員に語りました。なぜなら、この工場から生まれた商品がお客様に喜ばれ、社員と地域を幸せにすることができるからです。


志は、夢とは違います。夢は個人の欲を満たすだけですから、その人が死んだら消えてしまいます。が、志はその人の死後、誰かに受け継がれていきます。その人個人のものではなく、社会から強く必要とされるという社会性があり、多くの人に共有されるものだからです。


B社の社長は自分の志を、地域の人に愛される「ビジョナリー工場」という形にすることで、次世代に受け継がれてるものへと高めたのです。目指すところが明確になると、問題が見え、社員からの前向きな、建設的な意見は各段に増えます。


現在、同社の工場横のレストランには毎日観光バスが来ています。これは、同社社員からの提案、活躍によるものです。志を示し、少しずつ具現化し、社員と共有することで、社長一人が経営しているのではない、「全社員経営」へと舵を切ることができます。


あなたの会社の「目指すところ」は何ですか?是非それを描いて社員に示しましょう。そして衆知を集め、現実にしていきましょう!

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