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マネジメント

第4回 「ドラッカーの5つの質問」に潜む罠に気を付けよう

酒井英之の社長のビジョン実現道場

「ドラッカー5つの質問」

 

 ビジョンを開発する経営者でドラッカーに学ばない人はいないでしょう。

博士は、イノベーションやマネジメントについて、実に多くの示唆を与えてくれます。

 

 その中で多くの経営者にヒントとなるのが以下の「ドラッカー5つの質問」です。

1.我々の使命は何か?

2.我々の顧客は誰か?

3.顧客にとっての価値は何か?

4.何か我々にとっての成果は何か?

5.我々の計画は何か?

 

 この質問はシンプルで、ビジョンを開発したい経営者に多くの気づきを与えてくれます。

 

 この中で特に重要な質問が「2.我々の顧客は誰か?」です。

ここを間違うと、戦略全体が狂ってしまうからです。

 

マクドナルドが陥った「顧客選択のミス」

 近年V字回復したマクドナルドを例に考えみましょう。

今売れているのは、夜マックの「倍ダブルチーズバーガー」や「倍ビッグマック」など肉盛り系の倍シリーズです。

メニューを見るだけでかぶりつきたくなりますね。

https://www.mcdonalds.co.jp/menu/dinner/

 

 マクドナルドが大変苦しかった2015年頃、同社はベジタブルチキンバーガーを出しました。

現在この商品はありません。

期待ほど売れなかったからです。

https://www.mcd-holdings.co.jp/news/2015/promotion/promo0521b.html

 

 このベジタブルチキンバーガーは、お客様の声を元に作ったものでした。

「マクドナルドで食べてみたいハンバーガーは?」と聞かれて、「ヘルシーなハンバーガー」と答えた人が多かったのです。

 

 にもかかわらず、このハンバーガーは売れませんでした。

これは私の推測ですが、聴く相手の選択ミスです。

 

 仮にネット上で20代の女性等にアンケートで「マクドナルドで食べたいものは?」と聴いたら、きっとヘルシーなハンバーガーという答えが多いでしょう。

 

 あるいは、若い女性ばかりを会議室に集め、グループインタビューをしても誰かが「ヘルシーなハンバーガーは食べたい」と言えば、他の皆さんも「私も!」と賛同したでしょう。

 

 これこそがマクドナルドが陥った罠です。皆さんは、ネット上のアンケートや会議室でのインタビューが、同社にとって本当に必要なユーザーの声だと思いますか?

 

 もし、店内で実際にビッグマックを食べている人に「どんなハンバーガーが食べたいですか?」と聞けば決してヘルシーなハンバーガーとは答えないでしょう。

 

 おそらく「もっと肉厚のハンバーガーが食べたい」と答えたのではないでしょうか。

 

 マクドナルドは長年、朝と昼はよく売れるけど夜に売れないが悩みのタネでした。

そこでマクドナルドで夜、何を食べたいか調査するわけですが、それをネットで聴いたり会議室で尋ねたところで、ユーザーの本音が出るとは思えません。

 

 夜のニーズが知りたければ、実際に夜、マクドナルドの店内で、夕食代わりにハンバーガーを食べているお客様に「あと何があったらご満足いただけますか?」などと聴くことが一番正解に近づくのではないかと思います。

 

 これからご利用いただきたいお客様に現場で、ダイレクトに話を聴くことが大切なのです。

 

 そして、この気づきは企業のビジョン開発に欠かせないものです。

 

顧客インタビューで押さえておきたい3つのポイント

 私がクライアントのビジョン開発をお手伝いするときは、クライアントの社長や社員に、必ず同社の主要顧客に出向いて直接インタビューしていただきます。

 

 インタビューしていただくことは、「当社を選んでいただいている理由」や「今後、当社に期待すること」などです。

 

 このとき、主要顧客を3つに分けます。

「昨日の顧客」「今日の顧客」「明日の顧客」の3種です。

各最低3社ずつ、計9社の情報を集めます。この3分類もドラッカーの教えです。

 

 「昨日の顧客」は古くからの顧客で、取引量は多いが、成長力が乏しく、取扱量、利幅とも減少傾向の顧客です。

 

 「今日の顧客」は、今の主力顧客です。取引量は多いが微増で、きちんと儲けさせてくれるお客様です。

 

 「明日の顧客」は、取引量は少ないのですが成長率が高く、これから取引を拡大していきたいと思う顧客です。

 

 この3者にインタビューしたクライアントは皆さん、とてもビックリします。なぜなら 顧客によって答えが全然違うからです。

 

 例えば、ある食品原材料問屋のビジョン開発のために顧客にインタビューしたときです。

「昨日の顧客」は次のように言いました。「価格を下げてほしい」「納期を短くしてほしい」

 

 ところが「明日の顧客」は同じ質問に次のように答えました。

「おたくは頼めばすぐに届けてくれる。少量でも持ってきてくれる。客としてこんなありがたいことはない。

しかし、こんな商売のやり方はいつまでも続くはずがないでしょう。貴社にはずっと良いパートナーであって欲しい。

だからこそ、敢えて体力を削るような今のビジネスモデルを見直す時期に来ているのではないかな」

 

 また別の明日の顧客は次のように答えました。

「これからは海外市場にも進出していきたい。そこで海外の展示会などに打って出たいのだが、企画を練るところから協力して欲しい」

 

 このように「明日の顧客」と「昨日の顧客」ではドラッカーの「第3の質問:顧客にとっての価値は何か」の答えが全然違うのです。

 

 当然ですが、この問屋が自社のビジョンに組み込むべきは「明日の顧客」の価値基準です。

そうすることで、ドラッカーの「第4、第5の質問」に、時流に乗った解が出せます。

 

 あなたの会社は、顧客にインタビューしていますか?「昨日の顧客」の意見ばかり聴いて、肝心な「明日の顧客」の意見を聞きそびれていることはないでしょうか?

 

 アフターコロナは、企業間競争はさらに熾烈になるでしょう。

そのカギを握るのは、成長意欲旺盛な明日の顧客にどれだけ強く必要とされるサービスを提供できるかです。

 

 かつてのベジタブルチキンバーガーのような失敗をしないよう、顧客の声をよく聴いて、ビジョンを描いてくださいね。

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