社員からの指摘で気がついた 2つのエピソード
あなたは「夢」と「志」は、どう違うと思いますか?経営者は、その違いを社員からの指摘で気が付くことがあります。
今回はそんなエピソードを2件お伝えします。
大型施設の屋根やトンネルなどの建設現場で吹き付け塗装工事を請け負うA社の創業社長。同社は15年前までずっとどんぶり勘定で経営をしていました。その頃、受注が多いときは、銀行はお金をたくさん貸してくれました。キャッシュが潤沢にあるから、仕事に遊びにバンバン使う。それで何も問題ないと思っていました。
が、ひとたび景気が冷え込み受注が減ると、銀行は手の平を返します。社長はいつ資金ショートするかと冷や冷やです。なんでこんなことになったのか?!考える余裕もなく日々資金の手当てに奔走します。
会社がそんな状態の時、社員たちはどうかと言うと、普通の顔をして出勤し、普通の顔をして帰っていきます。社長と違い危機感は何もありません。
そんな社員を見て、社長は苛立ちます。そして、ついこんな風に彼らに当たってしまいます。
「おい、お前たち、会社が大変なんだから、『もっと、ここをこうした方がいい』とか『ここを改めましょうよ』とか、そういう意見はないのか?」
社長にそう問われた社員たちは「………。」
この状況を社長は当初、「うちの社員はバカばっかりだ」と嘆いていました。
ところが、あるとき社長は『問題』という言葉の定義を学びます。「現状」と「あるべき姿」の差が『問題』です。「あるべき姿=目指すところ」です。そのため「あるべき姿」が不明だと、現状との差が見えず、結果的に『問題』が見えません。
問題がないということは、クイズがないということです。クイズもないのに「答えだけ出してよ」と言われても出るわけがないのです。A社長が追っていたのは、日々豪遊する夢ばかりを追い、「あるべき姿」を示さずに経営していました。そのため同社の社員たちは問題が見えていませんでした。
ゆえに、改善案を出せるはずがなかったのです。
「バカだったのは、あるべき姿を決めていなかった自分だ」社長はそう気が付きました。以来社長は毎年経営計画発表会を開催し、自ら「あるべき姿」を考えて社員に示すようになりました。するとそれ以来、社員の方から「もっとこうした方が良いのでは」「私はもっとできると思います」などと、様々な前向きな発言が出るようになりました。
以後、A社は順調な経営を続けています。
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